第17話 氷姫と海の王子様 第2章

FD「それでは本番参りまーす。5,4,3…(キュー)」
ユ・ジェソク「よろぶん、あんにょんはせよ〜。今日は珍しくスタジオからお送りしてます」
ミョンス「この番組の収録は基本ロケやで。なに手ぇ抜いとんねん。ワシがPDにきつくゆうたろか?」
ジェソク「是非頼みますわ。そやけどワシはスタジオ収録の方が楽ですけどな」
ミョンス「そおゆうたらワシかてそうや」
ジェソク「ほなPDになんとゆうつもりですねん?」
ミョンス「きつく”よおやった”と…」
観客「わははは!」
ジェシカ「うふふ」
イトゥク「(つんつん)なぁ、観客席見てみ。シカが笑うてるで」
ドンへ「ワシを見て笑うてるんやな」
カンイン「(ふっ)幸せな奴」
シウォン「氷姫の笑顔…キレイやなぁ」
ジェソク「さっそくゲストを紹介しましょう。去年デビューしたばっかりなのに、歌もダンスも完璧なスーパージュニアのみなさん!」
SJ「あんにょんはせよ〜!」
ジェソク「今日はみんなで料理に挑戦という回やけど、みなさん男だから料理はあまりしないでしょう?」
イトゥク「ソンミンが得意ですわ」
ドンヘ「シンドンとカンインは食べるのが得意です」
観客「わはは」
ジェシカ「…(正色)」
ドンヘ「がく(そこは笑わへんのかい)」
ジェソク「ワシは食べられるのが得意ですね」
ミョンス「わかっとる。あっちの席のあのご婦人にやろ?」
ジェソク「どれどれ…て、あの人男やないかい」
ミョンス「え、そお? 栄養全部頭皮に回しとるから、眼が衰えて来たんかなぁ?」
ジェシカ「ぷっ」
シウォン「え?(何故このタイミング?)」

ミョンス「昆布は食うもんちゃう。(おでこに)貼るもんや!」
ジェシカ「うふふふ」
ヒチョル「(おもろいか? シカの笑いのツボはわからんなぁ)」
ジェシカ「うへへへ」
ジェシカ「けらけらけら」
ジェシカ「がははははは!」
ドンヘ「…???」
………
……

ジェソク「さ、それではこの料理、星いくついただけますでしょうか?」
ミョンス「(がく)そんな番組やったんかい!」
イトゥク「えーと、星は…なしで」
ジェソク「マジ?」
イトゥク「自分らで作っといてなんですけど、食えたもんやなかったっす」
ミョンス「そやなぁ。これがせめて可愛い娘の手作りやったら、どんだけ不味くても星三つやねんけどな」
カンイン「そらもう☆★☆ですわ」
ジェソク「わかりました(しくしく)。いただきましたっ、星ゼロでっすぅ!」
観客「パチパチパチ」
ジェシカ「…(そーかぁ。女の子からやったら不味くても食うのか、男って奴は)」


ジャージャー
ジェシカ「あちちち」
クリスタル「ちょっとおねえ、おひつの中の米、残らずフライパンに入れたん? どないすんの、それで今週分のご飯全部やで」
ジェシカ「そやかてドバッて入ってもうたんやもん。おわっちちち」
クリスタル「(へなへな)明日から何食うて生きて行けばええねん」
ジェシカ「心配すんなや。ウチが稽古場からなんか掠めてくるわ(うーん、あと一品欲しいところやな)」


カンタ「毎度ー」
PD「カンタァ、よお来てくれたな。売れっ子の自分に出て貰えるなんて光栄やで」
カンタ「またまたぁ。幾らおだてたってギャラ分しか働きまへんで」
ジェソク「(笑)業界の悪いとこばっか覚えやがる。どうせミョンスさんの教育やろ」
カンタ「ピンポーン」
ミョンス「すぐワシを悪モンにするのはやめれ。(ひそ)それよかSMは今日練習生連れて来てへんの?」
カンタ「来てまっせ。せっかくやから紹介しまひょ。テヨン、テヨン、ちょっと来ぃ」
テヨン「へーい(てててて)」
ミョンス「テヨン?(そんな名前だったっけ?)」


ずるーずずずー
ジェシカ「お、重い。バスには乗り遅れるし、最悪や。やっぱフライパンいっぱいキムチチャーハンなんか作るんやなかったな」
ソルリ「あ、シカねえが来た」
スヨン「ちょっと、なにしとったん? もおリハ始まるで」
ジェシカ「さ、さよか。(キョロキョロ)や、奴はどこや…あっ、おったおった。おっちゃ…」
ミョンス「わはは、お国言葉なんか久しぶりに聞くけーねー。やっぱええもんじゃね(笑)」
テヨン「ウチも久しぶりに使いましたけえ(笑)」
ミョンス/テヨン「やっぱ百済最高!」
スヨン「なんやなんや。テヨンの奴、ミョンスさんとえらい楽し気に話し合うとるで」
ジェシカ「おっちゃん…(ガーン!)」
カンタ「えーっ、ミョンスにいさんとワシのテンたんが?」
ジェシカ「(むっきーっ!)誰が”ワシのテンたん”や、ボケ(がしがしがし)」
カンタ「いてててて」
ジェシカ「何が”百済最高”や。くだらん、くだらん、くだらん!(ぼこすかぼこすか)」
ソルリ「おお、『彼女を信じないでください』でカン・ドンウォンをボコボコにするキム・ハヌルばりの攻撃や」
スヨン「わかりにくい!」
ジェシカ「おっちゃんのドアホー!(ガッシャーン)」


カンタ「お疲れ様でしたー」
PD「お疲れちゃーん。カンタ、良かったでぇ。また出てね」
カンタ「へっへっへ、兵役から戻ったらね」
テヨン/スヨン/ソルリ「お疲れ様でした、ありがとうございましたー。お疲れ様でした、ありがとうございましたー(ペコペコ)」
ミョンス「ああ、お疲れさん。なぁ、今日の見学は自分ら3人だけなん?」
スヨン「いえ、もうひとりジェシカがおったはずですけど」
ミョンス「ちゅうと、あのいっつもツンとした性悪そうな?」
スヨン「そうですそうです。あごの張った歯並びの悪い…」
ソルリ「いっつもツギ当てた貧乏くさい服を着てる…」
テヨン「プライドだけは根拠なく高そうな女子高生です」
ミョンス「へえ(ジェシカゆうんか…)」
テヨン「何処行ったんかなぁ。また楽屋でも荒らしてるんかなぁ?」
カンタ「コラコラ」
スタッフ「あー、誰や、こんなところに鍋ごとメシ捨てとるのは」
スヨン「なになに、食べ物?(ふらふら)」
ソルリ「やめてや、おねえ。恥ずかしいわ」
ミョンス「自分とこの事務所、なかなか個性的な女子練習生が多いね」
カンタ「申し訳ないっす(恥)。あれでも日本じゃスターやったんですけどね」
ミョンス「うそ(びっくり)」
スヨン「ああ、これはあかん。ものすごい異臭がする」
テヨン「食神が見放すほどの猛毒が何故にスタジオの片隅に?」
ソルリ「あ、これ、シカねえが持って来た鍋や」
スヨン「マジで? 奴め、誰の暗殺を企んどった?」
テヨン「手紙がついとるで。…”おっちゃんへ”」
ミョンス「(…!)あー、キミたち、もおスタジオ撤収せなあかんから今日は帰りなさい。鍋はスタッフに処分させるさかい」
テヨン「そやけど、シカの家にとっては鍋一つも貴重な財産なんです。持って帰ります」
ミョンス「い、いや、こんな鍋もってバス乗ったら乗客に迷惑や。後で洗って事務所に届けさすさかい」
テヨン「そやけど…」
ミョンス「ええから。早う早う」
テヨン「はぁ。ほな失礼しまーす」
スヨン/ソルリ「ありがとうございました−」
ミョンス「バイバイキーン!」


てくてく
テヨン「なんか若ハゲのおっさん、変な態度やったなぁ」
スヨン「若ハゲゆうなや、売れっ子芸人やで。それに自分、同郷ゆうて気に入られとったやん」
テヨン「ゆうてもあっちは群山やし。全州に比べたらド田舎や」
ソルリ「(へっ)釜山から見たら目くそ鼻くそ…ひててて。あ、あんひゃところひ、ヒカねえが!」
スヨン「ホンマや。なんで公園のブランコでやさぐれとるんやろ?」
テヨン「(ぽい、つかつか)ちょっと、チョン・スヨン。自分なにスタジオ見学サボってるねん? それにあの鍋はなんやの?」
ジェシカ「テヨンか? ああ、ウチも湖南弁が喋れたらなぁ」
テヨン「はぁ? 普段バカにしとるくせに、なにゆうとるん?」
ジェシカ「ウチ、おっちゃんが芸能人ゆうこと知らなくて、いつもみたいにマヌケな大人や思うて利用してたんや。
  だって普通芸能人はあそこまで甘チャンやないもんなぁ。思えばおっちゃんの優しさやったんかなぁ」
スヨン「ちょっと、何ゆうとるの? 熱射病?」
ソルリ「今冬やで」
テヨン「それより、シカ、泣いてるんちゃうか?」
ジェシカ「迷惑かけたなぁ思うて、お詫びに弁当作ろうとしたら変な匂いはするわ、鍋いっぱい出来るわで、なんだかむなしくなってなぁ。
  そんでさっきお国言葉で自分と笑いながら話してるおっちゃん見たら、今度は無性に腹立ってきて…。ああ、ウチはアカンなぁ(ぽろぽろ)」
スヨン「(ひえー)シカが壊れた」
ソルリ「そうやない。これは恋やな」
テヨン/スヨン「は?」
ソルリ「女の子が年頃になると必ずかかる病気や。おねえたち、そんなこともご存じない?」
スヨン「しょ、小学生にパボにされた(ガーン)」
テヨン「はぁ、ウチも泣きたくなってきたわ」
ジェシカ「おっちゃん…(くすんくすん)」


ジェシカ『おっちゃんへ…おっちゃんのこと圧死くんみたいにあつかってごめんなさい。おっちゃんが有名人やて知らなかったんです。
  それなのに親切に送ってくれておおきに。お礼とお詫びにご飯作ったから食べて下さい。ちょっと量が多すぎたけど、変な匂いもするけど毒やないと思います。
  フライみたいになったけど、戸棚にハムがあったのでそれも焼いて添えておきました。鍋はそのうちスジュの誰かに取りに行かせます。
  〜ジェシカ(初公開!)より』
ミョンス「…て書いてあるけど(うーむ)、あからさまに身体に悪そうな。そやけど、捨てるのは可哀想やし。
  ここはひとつポジティブに考えてみよう。
  あれほど魅力的な脚を持つ娘がクソ不味い料理を作るやろうか? …否!
  あの娘はその身に芸術を宿しておる。よってあの娘が作るメシも芸術的な味がするはずや。
  (ごきゅん)腹をくくれ、パク・ミョンス。軍隊時代の野戦食を思うたらこんなメシどってことないで。
  いざ!(ぱくん)………っぴゃ〜!!!」


ピーポーピーポー


ネットニュース記事:『お笑い芸人服毒自殺か?』
 昨日深夜、MBC”無限挑戦”などで人気のコメディアン、パク・ミョンスさん(37)が自宅で倒れているところを、所属事務所の職員に発見された。
 パクさんは救急車でソウル医大病院に搬送され治療を受けた。病院側によると意識不明の重体だが、生命に別状はないとのことである。
 発見当時、パクさんの部屋には異臭を放つ食料を入れた鍋があり、これを食したことによる中毒症状ではないかと見られている。
 しかし、毒物と知って食べたのか、過失によるものかは不明。部屋からは遺書らしきものは見つかっていない。


どたどたどた
ジェシカ「(ばーん!)おっちゃん! 大丈夫!?」
ミョンス「なんや、自分か? 病院の廊下を走るな」
ジェシカ「ごめんなさい」
ミョンス「お、えらい素直やな。わかったら常に女の子らしくしずしずと歩くように」
ジェシカ「ごめんなさい。ごめんなさい」
ミョンス「いや、もおええから」
ジェシカ「(ひっく)だってウチの料理、食べたんやろ?」
ミョンス「…まぁせっかくやからちょっと味見してみた。別に不味くはなかったで。油でべとべとやったけど」
ジェシカ「その油、何年もずーっと使い回しとるから、ウチの家族みたいに耐性がないと、すぐお腹やられてまうんや。ウチが考え足らずやったわ。ごめんなさい」
ミョンス「そ、そやったんか(ひえ〜、普段なに食うとるんや、ここん家?)」
ジェシカ「変なモノ食べさせてごめんなさい。…(ぐす)ウチはなにやってもアカンなぁ。
  長いこと練習生やって歌だけは自信があったけど、あとから入ったテヨンにトップの座を奪われるし、年下のユナも先にデビューするし、たまに善意で料理作ったらこんなことになるし…。
  もお事務所やめようか思うてるねん。もともと家計を助けるためにバイト忙しいし、芸能界なんか夢見てる場合やなかったわ。
  そやからもおおっちゃんに送ってもらうこともないと思う」
ミョンス「ジェシカ…」
ジェシカ「今まで迷惑かけてすみませんでした。それだけ言いたくて来ました。ほなさようなら」
ミョンス「待たんかい」
ジェシカ「(ぴた)」
ミョンス「飲み屋でバイトするのが自分の夢か? 足痛うて泣きそうになってもヒール履いて頑張ってきたのは、ただ生活のためだけか? 違うやろ」
ジェシカ「ぐ…」
ミョンス「ワシかて今のようになるまではさんざん人に迷惑かけて来とる。人は所詮ひとりでは生きられへんのやから、生きてる限り誰かに迷惑かけるのは当然や。
  それには芸能人も練習生も関係ないわい。どうせ迷惑かけるなら、自分に素直に生きて夢を叶えた方がええと思わんか?」
ジェシカ「おっちゃん…」
ミョンス「迷惑かけられても、平気とか、嬉しいとか、そう思ってくれるのが友達やないか。そんでそんな友達をどれだけ多く持てるかがその人間の価値やで。
  ちょっと迷惑をかけたからって逃げ出してたら一生友達なんかでけへんぞ」
ジェシカ「おっちゃんは友達ゆうにはちょっと…」
ミョンス「ほな仲間でも圧死くんでもなんでもええ。ともかくワシは自分のこと迷惑とは思うてへんからな」
ジェシカ「(ぽろぽろ)ごめんなさい。おおきに。ごめんなさい」
ミョンス「気にすんな。時々チラッとええもん見せてくれればそれでええんや。足が痛いときは送って行ってやるわ」
ジェシカ「調子に乗んな、バーカ(ずびずび)。そのかわり時々ええ歌聴かせてあげるわ」
ミョンス「歌かよ。まぁええけど」
ジェシカ「うふふ、圧死くんのくせに贅沢やな」
ミョンス「(ふん)天下のパク・ミョンスを圧死くん扱いとは、よっぽど大物になって貰わんと割が合わんな」
ジェシカ「うん、大物になるで。そしたら、いつかデュエットしてあげるわ(笑)」


ジェソク「お疲れ様でしたー」
ミョンス「お疲れ様ー。Oh!サマー、Hot Summer、Go Go Summerなんちゅうてね」
女性スタッフ「ミョンスさん、ミョンスさん」
ミョンス「ん? 東方神起大好きな女性スタッフやないか。どないした?」
女性スタッフ「いや、そんな説明的な台詞は特にいりまへんけど、ちょっと気になることがあるもんで」
ミョンス「なんや? ワシの髪が気になるゆうんやったら、自分の百倍本人が気にしとるからゆわんでええで」
女性スタッフ「ちゃいます。最近ミョンスさんがよくクルマに乗せてる女の子、あれ、SMの練習生ちゃいますか?」
ミョンス「よくって訳やないけど、帰る方向が同じやから、たまに乗せてるだけや」
女性スタッフ「別に付き合うてるとか、そんなんじゃないですよね?」
ミョンス「あ、当たり前や。20も歳が離れてるんやで。下司の勘ぐりはやめてや」
女性スタッフ「すんまへん。すんまへん。そやけど、あの娘カシ…トンペンの間じゃ有名な娘やから」
ミョンス「デビューもしてへんのに有名なん?(美脚やからかな、いやまさか)」
女性スタッフ「へえ。とにかく男関係がだらしないゆうて。いろんな練習生と付き合うてるらしいんですわ」
ミョンス「ふ、ふーん。まぁよく見たら可愛い娘やからね。若い男はのぼせるかもしれへんね」
女性スタッフ「可愛いですか(むか)。とにかくそんな娘と親しくして、ミョンスさんの経歴に傷がつかないか心配でご報告申し上げてる次第です」
ミョンス「そ、それはおおきに。そやけど妙な関係やないから。おじさんと親戚の子みたいなモンやから」


ミョンス「…て、ゆわれたところで、ジェシカがもてるのは当たり前やし、圧死くんも多いやろうしなぁ」
女性スタッフの声(エコー):気になるならネットで検索してみたらええですよ。証拠写真がいっぱい上がってますよって。
ミョンス「気にはなりませんよ。気にはなりませんけど、何も知らずに盲目的にジェシカを支持するのも大人らしくないし。
  ネガティブな情報も仕入れた上で『これはジェシカやない。捏造や』とゆう方が正しい態度な気もする。
  いや別に捏造でなくてもいいんやけど。ジェシカが誰と付き合おうとワシには関係ないし。
  ん? やったらちょっと写真見てもかまへんやろ。うん、今度ジェシカをからかう材料にもなるしな。…見ちゃおうかな」
ぽち…ぴ
ミョンス「ほープリクラか、女子高生らしいな…確かにジェシカやな。なんでこいつと肩組んでるねん。彼氏かっちゅうねん。
  (くりくり)…こ、これは…キキキキ、キス…しかも結構本気のような…本気でないならそれはそれで問題のような。
  なんやおっちゃんむかついて来たで。なんで?」