第82話 ある日のサイン会

ざわざわ、がやがや…
クッキーマン「えー、参加券は各自しっかり手に持っていただき、列にお並びの際に係員にお渡しください。参加券をお持ちでないお客様はサイン会に参加出来ません。また参加券の使用は一度に一枚ずつです。複数の参加券をお持ちの方は、その都度列の最後尾に並び直してくださ〜い」
ペンA「おおーっ、少女時代や。ホンマモンの少女時代が目の前に並んで座っとるで」
ペンB「テレビで見る以上に可愛いやんけ。まるで妖精みたいや」
ペンC「夢や。これは夢に違いない」
ペンA「ほんで自分、誰のサインもらうんや?」
ペンB「そらティパニちゃんや。参加券1枚しかないんやからティパニちゃん以外考えられん」
ペンA「ワシはユナちゃんやな。あの可愛さはもはや神の領域。自分は?」
ペンC「当然ヒョヨン姐さんや」
ペンA/B「…!(ドン引き)」
ペンC「しかも(さっ)参加券5枚もあるねん。全部姐さんに使うたろ」
ペンA/B「ド、ド変人じゃーっ」

で…

ティパニ「アナタ、ドコから来まシタかー? クヮンジュー? 遠くカーラありがとござます(ニパッ)」
パニペン「おおっ、伝説のアイスマイルを目の前で!(感動)」
ティパニ「(キュキュキュッ)はい、サインねー。コレ持ってサッサとイナカに帰りやがれ。次のヒトー(ニパッ)」
パニペン「ううーん、片言の韓国語がまた可愛ええなぁ」

ユナ「あんにょん、今日は来てくれてありがとうございます。お名前は?」
ユナペン「チェ・ジンゆいますぅ。名前書いてくれるんですかぁ?」
ユナ「もちろんですよぉ(キュキュキュ)…そやけど(ニタ)名前だけやなくもっとええものカイてもかまへんですよ」
ユナペン「ええっ、そ、それってどおゆう…?」
ユナ「うふふ…それは想像にお・ま・か・せ(にぎにぎ)」
ユナペン「な、なんだか、ユナちゃんのサインペンを持つ指が微妙な動きを(汗)」
ユナ「サインペンの気持ちを味わいたいなら、このあと有り金全部持って会場の裏で待っててね」
ユナペン「は、はひー。クレジットカードあるだけ持って行きますぅ」
ユナ「約束よん。はい、次のカモーっ」

テヨン「なぁなぁ、ちょっと聞いてんか。ウチ今新しいサインを開発中やねん」
テヨンペン「はぁ」
テヨン「今までのサインが(キュキュ)これやろ。“テヨン”て書いてるねんけど、最近は“テング”を変形させて(キュキュ)こうゆう奴か(キュキュ)こうゆう奴、あるいは(キュキュキュイ)こうゆうパターンもどやろかと思うてるねんけど、自分どれがええ?」
テヨンペン「なんでこんな場所でサインの開発をしてるんです?」
テヨン「だってプロのサイン屋に発注したら結構なギャラぼられるもん。ここなら色紙もインクも会社持ちで練習出来るし、サインに対するペンの反応も直接知ることが出来るやんか」
テヨンペン「なるほど。兵器開発するなら戦場でってことですね」
テヨン「そおそお、上手いことゆうやんか。で、自分、どのサインが気に入った?」
テヨンペン「やっぱ蝶々の奴っすかね。テヨンさんらしくて可愛ええし」
テヨン「なるほど。ナビバージョンに一票と(メモメモ)」
テヨンペン「お役に立てて何よりです。そんで、ワシにもサインしてくださいよ」
テヨン「そんなん、そこらへんに試し書きした奴仰山散らばっとるやろ。好きなん持ってけや」
テヨンペン「えー? 名前書いてくれへんのですか?」
テヨン「自分で書けや、面倒くさいなぁ。大丈夫やって、将来鑑定団に出たら“間違いなくウチの筆跡です”て証言したるから」
テヨンペン「投げやりやなぁ」
クッキーマン「(ピピーッ、ピーッ)そこ、立ち止まらない。サイン貰ったらさっさと次の人に場所を譲って」
テヨンペン「貰ってへんちゅうねん(呆)」

マンネペン「日本から来ました。ヒトシと言います。好きな食べ物はナマズの蒲焼き、好きな女優は村川絵梨です」
ソヒョン「まぁ素敵。じゃあ死ねって書いときますね」

スヨン「食べ物持って来てまへんか?」
スヨンペンA「いえ、特に」
スヨン「そですか。(にゅるん)はい、サイン。次の人〜」
スヨンペンA「わ、雑っ」
スヨンペンB「私、日本から来ました。ルートヨンの頃からのペンなんです」
スヨン「まぁ、嬉しいです!」
スヨンペンB「あの幼かったチェ・スヨンがこんなに立派になって…(うるうる) あ、これ、日本土産です」
スヨン「わぁ、ありがとう! トテモ可愛いぬいぐるみデスネ。ところで食べるモノはないんでっか?」
スヨンペンB「食べ物? いえ、持って来てませんけど」
スヨン「そですか。(にゅるん、ぽい)次の方〜」
スヨンペンB「容赦なしやな、おい(呆)」

ソニ「次の方〜て、もお誰もおらんのかい」
ユリ「自分、人気ないのぉ(いひひひ)」
ソニ「やかましーわ。ウチの魅力はそう簡単には伝わらへんのじゃ」
ユリ「そんなアイドルおるか。まぁええわ。ヒマならシカ手伝うてやれや。あそこ今大渋滞しとるさかい」
ソニ「大渋滞? そんなにペンが殺到しとるんか?」
ユリ「うんにゃ。行列はウチとこより少ないくらいやけど、シカがサインペン握ったまま居眠りこいとるねん」
ソニ「はぁ?」
ユリ「いったん寝たら絶対起きひんし、寝ながらサイン出来るほど器用でもないよって、自分奴の代わりにサインしたってな。はい、次の方〜」
ソニ「ウチがサインしたってシカペンは喜ばへんのちゃう?」
ユリ「アホやな、自分が顔出してどおする。二人羽織の要領でこっそりサインしたらんかい。次の方〜」
ソニ「ぴゃー。そんな欺瞞許されんの?」
ユリ「大丈夫、シカペンなんてみんな筆跡の違いも判らんアホばっかりや。絶対バレへんて」
ソニ「そ、そおかなぁ。ほなちょっと行ってくるか…」

ソニ「ただいま〜」
ユリ「おお、どやった? はい、次の人どーぞー」
ソニ「ウチがやる前にもおクッキーマンが二人羽織してた」
ユリ「な、なるほど(汗)。案外優秀な奴かもしれんな」
ソニ「優秀なのか? なにか根本的に間違ってるよおな気が(うーむ)」

ヒョヨン「お、この線は数奇な運命を示唆してますで」
ヒョヨンペン「そおなんですか?」
ヒョヨン「へえへえ。結婚線と恋愛線がこう交わるのは不倫の相」
ヒョヨンペン「不倫? ウチ、不倫するんでっか?」
ヒョヨン「(こっくり)十中八九」
ヒョヨンペン「がーん、まだ結婚もしてへんのに」
ヒョヨン「あなたは多分2番目に好きな人と結婚した後で一番好きだった人と再会するでしょう」
ヒョヨンペン「え、誰やろ? サンヒョク? 一番好きってキム室長?」
ヒョヨン「そこまではわかりまへんけど、その体験をブログに書いたら大評判になって、キム・シヨン主演でドラマになるって出てますわ」
ヒョヨンペン「まぁ。じゃああながち不幸って運命でもないのね(カンドーッ)」

スヨン「すげーな、ヒョヨンの奴。ほんの数人しかおらんペンを占いでずっと相手しとるで」
ソニ「まぁ客が喜ぶんならええんちゃうの?」
スヨン「ウチもぼちぼち列が途切れるなぁ。パニやユナはまだ1時間くらいかかりそうやし、ペン相手にホームショッピングの練習でもするか」
ソニ「おお、それがええで。日々これ精進や。ウチらに無駄にしとる時間なんてない」
ユリ「ほな、ウチはヨガやろうかな。おっと、その前に」
がーっ
クッキーマン「こらーっ! サイン会の会場で山芋ジュース作って飲むな! ヨガするな!」
スヨン「今ならこの東芝電器がたったの9億円!」
クッキーマン「ええ加減にしなさーい!」
わぁわぁ…





※2008年春頃の少女時代はテレビラジオに出突っ張りだった他、営業やCM、サイン会など極めて精力的に活動していた。少しでもお茶の間に浸透し、名前や存在を憶えて貰おうとしている時期だった。
 この年の4月か5月にソウルで『永遠にソニョシデ(少女時代)』の管理人さんに会ったのだが、その時サイン会に行ってきたとユナのサイン入りCDを見せてくれたのを憶えている。その方の話では大人数のグループ故全員揃ってのサイン会は少なく、4,5人に分かれて別会場で行うコトが多かったようだ。
 グループ内の人気だが、この時期は『スターゴールデンベル』でメンバーが言っているとおりティファニーが一番だったようである。とにかく片言の韓国語とアイスマイルと呼ばれる小首をかしげる笑い方がおじさんのハートを鷲づかみ状態だった。


 
 SGB 少女時代特集(2008年2月2日放送)



 4月からユナが週末ドラマ『君は僕の運命』に出演し始めると、徐々にお茶の間人気を獲得、最も有名なメンバーとなっていく。同時にティファニーの髪が伸びてきて、韓国語も上手くなってきたせいもあり、彼女の人気はだいぶ落ち着いて行くのであった。