ミニそしビギンズ06

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最近の国内SFのトピックとしては、やはり劉慈欣の『三体』を筆頭ととする中華ブームであろう。
私もアンソロジー『折りたたみ北京』や『郝景芳短篇集』も含め、一通り読んだ。
厳選されて編まれている訳だから当然だが、いずれも水準が高い。なによりSFを通して浮かび上がってくる現代中国の姿はまさにセンス・オブ・ワンダーであった。
我々日本人は、韓国や東南アジアも含めた隣人たちを20年くらい昔のイメージで捉えがちだが、世界はずっと速く進んでいる。昭和40年代から50年代にかけて、日本がどれほどの事を成し遂げたか、そのことを思えば決して彼らを後進国と侮るべきではなかろう。改めて刮目してみる必要があることを、今回の中華ブームは教えてくれたと思う。

また、よく言われてることだが、劉慈欣は小松左京が好きとのことで、『三体』にも確かにその影響が感じられる。それだけでなく鈴木光司の『リング』を思わせるホラー感、山田正紀的なB級アクションの匂い、平井和正のなんだか判らないけど絶対的存在が宇宙から攻めて来るぞ感など、意外なほど日本人に馴染みやすかったのがヒットの要因のひとつであろう。
さらに『折りたたみ北京』に収録されている馬伯庸の『沈黙都市』と言う短編には、名前だけだが私の同級生であるアニメーション監督が登場したり、『1984』的ディストピア世界で検閲によって言葉がどんどん消えていく様が筒井康隆の『残像に口紅を』を感じさせたり、文化的共通認識の存在を強く意識させる。
明治維新以後、日本は欧米に範の多くを求めてきたが、やはり数千年の歴史が示す通り、親和性としてははるかに東洋の方が高いのではあるまいか。

そのような共通項のひとつに家族意識がある。

今回の中華SFブーム以前から日本で知られていた(そして人気が高い)中国系SF作家にはケン・リュウテッド・チャンがいるが(いずれもアメリカ人)、ふたりの存在なくしてはこれほど中国系SFが知られることもなかったろう。『三体』を含めて積極的に中国SFを英訳し世界に広めたケン・リュウの功績は大きいし、テッド・チャンは現代最高のSF作家のひとりとしてSFの文学的水準を大きく引き上げている。

ケン・リュウは中国で生まれ、8歳で渡米するまで中国文化に触れて育ったせいか、明らかにアジアを意識した作風である。とりわけ、先に書いた家族意識。家族をテーマにした作品が非常に多い。
『三体』もそうなのだが、『折りたたみ北京』に収録されている作品の多くも、やはり家族を意識させられる。モチーフとしてだけでなく、着想そのものが家族に端を発していると思われる作品もあるし、何気ない手触りとして家族を感じさせるものもある。いずれにしろ精神の深い場所に家族という存在があるのが中国人作家の特徴と言えるかも知れない。

と言いながら、一方で、アメリカ生まれアメリカ育ちのテッド・チャンにはそのような肌合いは全くない。感情より遙かに論理が勝った作風なのである。
映画『メッセージ』の原作であり、代表作のひとつでもある『あなたの人生の物語』は、主人公の女性言語学者が、まだ生まれてもいない娘の人生を誕生から死まで回想する、と言う内容なのだが、そこでも感傷より理屈が優先された書き方になっている。家族がテーマではなく、むしろ遙かに重要な運命、あるいは物理法則が世界を支配していることを、人ひとりの人生をダシに使って語っているのである。徹底的にクールだし、SFの王道と言っても良い。

こんなテッド・チャンだから、自身が中国系作家という意識はないだろうし、昨今のブームに乗って十把一絡げに中国SFとして紹介されることに抵抗があるに違いない。
この辺ははっきり、テッド・チャンアメリカの作家、と言うカテゴリー分けを出版の方でもやっていただきたい。
例えて言うなら、日本人の血が流れていると言うだけでカズオ・イシグロを日本人作家として…



テヨン「おいっ!(げしっ)」
わし「わぁ! い、痛いやないか」
テヨン「何を書いとるんじゃ、ボケ。ここは少女時代の黎明期を描く神聖なる『関西ソニョシデ-Begins』やぞ」
わし「それはわかっとるけども」
テヨン「ほな、若き日のウチらの活躍を書けや。“第83話につづく”とかゆうて1年半も放ったらかしにした挙げ句、なに中華SF論なんか語っとるんじゃ、ドアホ!(激おこ)」
わし「83話かぁ。2008年なんてもおだいぶ昔のことやし、記憶も曖昧になってもうて、よお書けへんねん」
テヨン「ネット漁って、資料集めたらええがな」
わし「それが、自分らネットの黎明期にデビューしとるから、資料が極端に少ないんよね~。今の子らなら10年以上たっても仰山資料残ってるはずやろけど」
テヨン「年寄り扱いするんじゃねぇ(げしげしっ)」
わし「そ、そやけど、第二世代少女グループ唯一の生き残りで化石みたいなもんやし、事務所も態勢がしっかりしてへん頃やから、デビュー日かて8月2日か8月5日か揉めとったほどやんか。今時そんなグループおらんで」
テヨン「その代わり、長期間プレデビュー活動やって、いざ公式デビューって時には新鮮さの欠片もなくなっとるグループいくつもあるやないか」
わし「資料がちゃんと残ってればそんなの関係ない。少女時代の場合は黎明期の資料があるにはあるが、数少ない情報をベースに個人が上書きに上書きを加えて流布しとる。もうロズウェル事件のデータくらい整理されてへんのや」
テヨン「誰がちっちゃい宇宙人じゃ(怒)」
わし「とかゆうて、せっかくここも本ブログと同時期に“はてなダイアリー”から“はてなブログ”に移行させた訳やし、あんまり長いこと放って置いたら意味がない。そこでK-Popに関係ないことを時々こっちに書いて活性化しつつ、自分らのかつての栄光の資料を見つけ出したら書き継いでいこうかなぁ、なんて思うたんよ」
テヨン「うーむ…。まさか、適当にでっち上げて書いてると思うてたホラ話に、そこまで資料が重要やったとは」
わし「嘘をつくには事実を知る必要があるんじゃ。しょんな訳で、ここはしばらくワシの雑書帳として有効利用させて貰うで」
テヨン「む…。まぁある程度は仕方ないか。ほな、ビギンズの続きはいつ頃になりそおや? ウチが今月の歌賞を受賞する華々しい回の予定なんやぞ」
わし「そやなぁ。頑張って2年以内にはなんとか」
テヨン「(かくん)その頃おっさん生きてないやろ」