第16話 氷姫と海の王子様 第1章

♪鳴り響いた携帯電話 嫌な予感が胸をよぎる
 冷静になれよ ミ・アミーゴ
ジェシカ「(ぷち)よぼせよ〜。…なんやド○へか」
声:なんやて…彼氏に向かって冷たいなぁ。今なにしてるん?
ジェシカ「今? バイト終わったとこ」
声:そやろそやろ。時間見計らって電話したからな(笑)。なぁ、仏光洞に静かで洒落たカフェがあるねん。これから飲みにいかへんか?
ジェシカ「もおクタクタや。よいしょっと(ドスン)、それに1日ハイヒール履いとったせいで、脚が痛ぁて」
声:そやからカフェで癒やしたらええやん。ワシ、マッサージしたるで。
ジェシカ「下心丸見えやな。1〜2度デートしたくらいでウチの美脚を自由に出来る思うたら大間違いやで。
  (脱ぎ)わぁ、指腫れとるなぁ。スマンのアホ、外反母趾になったらどないしてくれるねん。
  …いや、なんでもないわ。とにかく今夜はアカン、帰って妹の宿題見てやらなあかんからな」
おっちゃん「(ぬっ)なぁ、まだその電話続くんか?」
ジェシカ「わぁっ!」
声:ど、どないした?
ジェシカ「ハゲが急に…、いやなんでもない。ほな、また明日、稽古場でな(ぷち)…おっちゃん、急に出て来てなに?」
おっちゃん「”なに”てワシの台詞や。いきなり人のクルマのボンネットに腰掛けて電話するなんて非常識やろ。おかげでクルマ出されへんやないか」
ジェシカ「あ、これおっちゃんのクルマやったんか。ウチのような美少女に腰掛けられてラッキーやな」
おっちゃん「美少女…?(うっ、いろいろ鋭角的やが、確かに可愛い)ア、アホか。まず降りて謝らんかい。どうゆう教育受けとるんや」
ジェシカ「そやかて、足が痛うて、もお動けへんもん」
おっちゃん「子供のくせにそんな靴履いとるからや。背伸びせんと学生靴履けや」
ジェシカ「学生靴履いて生活出来たらな。世の中にはヒール履くことを強制される学生かておるんやで」
おっちゃん「嘘つけ。それよりええ加減どいてくれや」
ジェシカ「そやなぁ…おっちゃんが家まで送ってくれるんならどいてもええで」
おっちゃん「はぁ? 自分、ヤカラか? あかんあかん、写真週刊誌に狙われたらどおするんや」
ジェシカ「うーん、まだウチを狙うパパラッチはおらんと思うけどな」
おっちゃん「誰が自分みたいな小娘をパパラッチするか。狙われるのはワシやがな」
ジェシカ「はぁ? それこそありえへんわ。おっちゃんみたいな若ハゲの写真撮ってなにがおもろいねん」
おっちゃん「わ、若ハゲ?(こいつ、ワシが芸能人やゆうこと知らんのかいな)」
ジェシカ「なぁ、おっちゃん、家まで送ってぇな…ハードな1日で、もおクッタクタやねん(チラ)」
おっちゃん「おおっ!(なんかピンクのモンが見えた、ラッキー)」
パシャ!
おっちゃん「わっ」
ジェシカ「へへへ。今のにやついた顔、写メ撮ったからな」
おっちゃん「ア、アホ。消せや、そんな写真」
ジェシカ「消したら送ってくれる?」
おっちゃん「ワシは暴力に屈したりせんのじゃ。そ、そやけど、マジで困ってるみたいやから、今夜だけは特別に送ってやるわい」
ジェシカ「ホンマ?(喜)」
おっちゃん「ほら、さっさと乗り。周りに気付かれんように。速やかに、速やかに」
ジェシカ「(ばたん)おおきにおっちゃん」
おっちゃん「おっちゃんゆうな」


ファンタスティポ
 切ない眩さで 見たこともない花が咲く
ジェシカ「(ぷち)よぼせよ〜。…なんやヒ○ョルか」
声:せめてオッパゆえや。…彼氏に向かってなっとらん。
ジェシカ「2〜3回クラブ付き合うたからって、彼氏ヅラはやめてや」
声:ええ? そやけどあの晩はえらい盛り上がっとったやないか
ジェシカ「あの時はあの時、今は自分と話す気にならん。長い付き合いやのに、まだウチの性格わからんか? 話にならんわ」
声:ちょ、ちょっと…(ぷち)
ジェシカ「(はぁ)これだからガキはめんどいねん」
おっちゃん「(ぬっ)また自分か? ボンネットに座るなっちゅうのに」
ジェシカ「あ、おっちゃん。昨日はおおきにな」
おっちゃん「おおきにやないで。家、ソウル市内やゆうから送ったのに、えらい遠かったやないか」
ジェシカ「あそこかてソウル市内やもん」
おっちゃん「あんなトトロが出そうなとこがか? …(ぎくっ)まさか自分、今日も送らそ思て座っとるんやないやろな」
ジェシカ「ぴんぽーん(笑)」
おっちゃん「ふざけんな。ワシ、自分のアッシーくん違うで」
ジェシカ「圧死くん?」
おっちゃん「アッシーくんや。送迎担当の彼氏ゆうことや」
ジェシカ「ああ…(古っ)。おっちゃんはウチの彼氏ちゃうで」
おっちゃん「(うがーっ!)わかっとるわ。そやから送る理由もない」
ジェシカ「(ふん)昨日ウチのパンツ見てニヤニヤしてたくせに偉そうに。そや、なんやったら今日も見せたげようか?」
おっちゃん「き、貴様のような小娘のパンツ見たくなんかないわ!」
通行人「(ひそひそ)まぁ、大きな声で”パンツ”やて」
通行人「(ひそひそ)あれ、あれは確か芸人の…」
おっちゃん「まずい。(ぐっ)早よ乗れや!」
ジェシカ「あっ」
おっちゃん「今日までやぞ」
ばたん、ぶぅ…
ジェシカ「ふふふ、やっぱりパンツ見たかったんやな」
おっちゃん「バ、バ、バ、バカゆうな」
ジェシカ「でも今日はおっちゃんの方から誘うたんやから見せたげんで」
おっちゃん「はぁ…(明日から駐車場所変えよう)」
ぶぅー
♪また浜辺に戻って来たで なんでか彼女も来とるけど
 あちこち見渡しても 砕ける波音だけ
おっちゃん「♪無愛想な奴 アイスクリームおじさん…(ふんふん)」
ジェシカ「(ぶーっ)なに、その歌?」
おっちゃん「知らんのか? マジで? 『海の王子』ゆうて6〜7年前に大ヒットした名曲やぞ」
ジェシカ「ペットショップボーイズの『Go West』にしか聞こえへん」
おっちゃん「逆に訊こう。なにそれ?」
ジェシカ「(呆)おっちゃん、こんなアホみたいな曲聴いとらんと、もうちょっと欧米の音楽勉強した方がええで」
おっちゃん「ドアホ、韓国の音楽は偉大や。いずれK−Popが世界を制するんや。そうに決まっとる」
ジェシカ「それはそうや。間違いない」
おっちゃん「おっ?」
ジェシカ「そやけど、こんなふざけた曲やないと思うな」
おっちゃん「(がくっ)」


カンイン「あんにょんはせよ、あんにょんはせよ(ペコペコ)」
イトゥク「あんにょんはせよ、あんにょんはせよ(ペコペコ)」
シウォン「あんにょんはせよ、あんにょんはせよ(ペコペコ)」
ジェシカ「なんかペコペコしすぎて格好悪い」
シウォン「(ひそひそ)しゃあないやんか。ワシらまだ新人やねんから。彼氏のそんな努力を陰から支えるのも恋人の務めやぞ」
ジェシカ「ちょっと。3〜4回映画に付き合うたからゆうて彼氏面はやめてや」
シウォン「え…、そやけど自分”彼氏ならこのくらい買うてくれて当然や”ゆうてバッグやら化粧品やらさんざんタカッたやないか」
ジェシカ「そやったっけ?(ぴーぴー)」
シウォン「貴様、詐欺師か…あっ、こ、こんにちは、ミョンスさん。今日はよろしくお願いします」
パク・ミョンス「やぁ、こんにちは…。スーパージュニアのシウォンくんやったね」
シウォン「(ぴゃー!)覚えていただいて感激です!」
ミョンス「ん、その女の子は?」
シウォン「ウチの事務所の練習生です。今日は何人か収録現場の見学に連れて来とります。ご迷惑は掛けまへんから」
ジェシカ「あんにょんはせよ〜(にやにや)」
ミョンス「うわぁあ…(こ、こいつ、SMの練習生やったんか)」
ジェシカ「今日は勉強させていただきまーす、いろいろとね(おっちゃん、芸能人やったんか…ハゲのくせに生意気な)」
ミョンス「さ、最悪や」


これがふたりの愛の始まりであった…(つづく)







※パク・ミョンスの大ヒット曲『海の王子』(1999年)
    


    おまけ
    TBS系列『くらべるくらべらー』でお馴染みのLPGが今年カバーした。
     『海のお姫様』