第75話 少女時代の一番長い日(後編)

07


ざっぱーーーーん!
ソニ「こ、ここ? 医者の館って?」
ユリ「そおみたい」
スヨン「岬ゆうても、周りは断崖絶壁やん」
ソヒョン「こんな所に住むのは犯罪者かマッドサイエンティストだけやで」
クッキーマン「もぐりの医者なんやから犯罪者なのは間違いないな」
テヨン「それに多少マッドサイエンティストの方がヒョヨンを組み立て直してくれそうでええかもな」
ヒョヨン「組み立てるとかゆうんやねえ、治すゆえや(怒)」
ギギギーッ
クッキーマン「お、扉が開いた」
幼女「よやくしてたしょうじょじらいたんわのよ〜?」
クッキーマン「そおですそおです」
幼女「れはかんじゃさんを中に入れゆです。こっちれす」
ジェシカ「うひー、お化け屋敷みたい。こんな所に住んでんのは、医者より吸血鬼なのでは?」
幼女「しつれいでちゅね。ちぇんちぇーはオープニングで”神のようなメス捌きで、奇跡を生み出す生命(いのち)の芸術家。 時代が望んだ天才外科医”と呼ばえていゆのですよ」
ソニ「オープニング?」
テヨン「そもそも神がメスを扱っている状況が想像出来んのやが」
幼女「うるちゃーい! へりくつこえゆな!」
がちゃ
無免許医「こら、ピ●コ、患者の前で騒々しいで」
幼女「アッチョンブリケー」
クッキーマン「あ、先生ですか?」
無免許医「BJと呼んで貰いましょう」
ユナ「なんで髪や顔が白黒のブチになってるんでっか?」
クッキーマン「こら、いきなり失礼な」
無免許医「構わんで。ワシはおとんが黒人でおかんが日本人やねん。ほんでブチで生まれて来たゆう訳や」
ユナ「ネコかよ(呆)」
無免許医「それより患者を見せてぇな…ははぁ、これはまた見事にパッキリいってるなぁ」
ヒョヨン「どうか、元通りに踊れるようにしてくだせぇ。踊りはウチの命ですねん」
無免許医「わかった。全力を尽くすと約束しよう」
クッキーマン「出来れば10分くらいで治りまへんか? 夕方から生番組がありますねん」
無免許医「はぁ? 折れた脊椎を繋ぐだけでも大手術やど。そのあと神経がちゃんとつながるかどうか。つながるにしても数年に渡るリハビリが必要やし」
ヒョヨン「そんなに?(がーん)」
クッキーマン「あかーん、今日の『ミューバン』はもお絶望や」
ユリ「まだ出る気でおったんかい(呆)」
無免許医「とにかくいろいろ診てみよう。判断はそれからや」


クッキーマン「………(いらいらいら)」
ジェシカ「診療てまだかかるんかなぁ」
ソニ「まだ10分もたってへんやないか。まだまだやろ」
ジェシカ「ほんならちょっと寝ようかなぁ」
ソヒョン「今なら誰も文句ゆわんと思うで」
スヨン「よお飯も食わんと眠れるなぁ」
がちゃ
クッキーマン「あ、先生。ヒョヨンは?」
無免許医「治ったで〜(ニコニコ)」
クッキーマン「は?」
無免許医「もうすっかり全快や」
ソニ「マジで?」
無免許医「あの娘は生命の奇跡やな。遺伝子の99%がクマムシと共通しとった」
ユナ「げぇー、ゆうてみれば人の形をしたクマムシてこと?」
無免許医「うむ。真空中やろうと放射能に晒されようと、めったなことで死にはせん」
テヨン「それはなんか納得出来るわ」
クッキーマン「ほんで、腰の方は?」
無免許医「調べて見たら身体の作りがLEGO®並に単純でなぁ。折れてた骨も凸凹がかっちりはまって元通り」
ユナ「ほな何か? ウチらLEGO®で出来たクマムシとチーム組んでたんか(呆)」
ティパニ「LEGO®はともかく、虫はきっしょいなぁ」
クッキーマン「この際、それを喜べや(きっと自分らも似たような作りやぞ)」
ソニ「神経もつながったんでっか?」
無免許医「神経やら、そんな高級なモンがあったかどうか。とにかく骨がはまったらちゃんと動くようになったで」
ユリ「そんな解決法でええのか?」
幼女「まぁあたちもちぇんちぇーにつくってもやった体え動いていゆかや、ふかく考えゆことはありまちぇんよ」
テヨン「そやな、そゆことにしておこう」
ソニ「納得すんのかよ(雑やなぁ)」
♪Tell me Tell me…(ぶーぶー)
ティパニ「む?」
ソニ「誰や、『Tell me』なんかを着信音にしてるアホは!」
クッキーマン「よぼせよ〜…」
少女時代「(がたた)マネージャーのくせに…」
電話の声「こらーっ、自分らどこでなにやってるんや!
  もうすぐリハーサルやのにスタジオ入りしてへん、何の連絡もないゆうて『ミューバン』のキム女史(PD)が怒りまくってるで!」
クッキーマン「あ、し、室長! すいまへん、移動車が事故を起こしましてヒョヨンが脊椎損傷の大怪我で…」


パク・ジュンヨン(SMエンターテインメント・プロデューシング・デパートメント室長)「なんやとー? 大ごとやないか」
クッキーマン(声)「そやから気が動転して連絡するのすっかり忘れてましてん」
パク・ジュンヨン「ううーむ。そおゆう事情なら仕方ない。そんでヒョヨンは? 生きてるんか?」
クッキーマン(声)「あ、もう治りました」
パク・ジュンヨン「(かくん)はぁ?」
クッキーマン(声)「ええ医者を紹介して貰いまして。ブロック玩具をつなぐようにあっさりと修理出来たんですわ」
ヒョヨン(声)「修理とかゆうな(ぷんすか)」
パク・ジュンヨン「お、聞こえた。元気そうやな。そんで、今どこや?」
クッキーマン(声)「それが、まだ江原道の海岸に」
パク・ジュンヨン「なぬー? そんじゃどんなに急いでもソウルまで2時間半…番組始まってまうど」
クッキーマン(声)「すんまへーん。今すぐ向かいますよって」
パク・ジュンヨン「…わかった。キム女史には事情を説明しておく。リハーサルは無理でも、番組開始までには何とか戻って来いや」
クッキーマン(声)「へーい。急ぎますわ」
ぷち
パク・ジュンヨン「とほほ。またキム女史に怒られるやないか。ヒョヨンのアホー」


クッキーマン「…てな訳で、全快の喜びもそこそこに出立しなければなりまへん。
  先生には大変お世話になりました」
無免許医「なんの。おもしろかったで。こんなヘンな患者は獅子面病以来や」
クッキーマン「それで、お礼の方は…(おずおず)」
無免許医「それじゃあ…特別賞をいただきましょう」
クッキーマン「は?」
無免許医「い、いや、なんでもない。忘れて貰おう」
幼女「また他人にわかやないぎゃぐでひとをけむにまいて…ちぇんちぇーのわゆいくせれすよ」
無免許医「す、すまん」
クッキーマン「なんや知りまへんが、お世話になりました」
無免許医「うむ、達者でな。1位になれるとええな」
少女時代「はーい、頑張りまーす!」
幼女「ちゃよららー」


ぶーっ
無免許医「行ってしまった…なんと気持ちのいい連中だろう」
幼女「そうかや〜?」


08


キンコンチンコン
クッキーマン「ああー、もうリハーサルが始まってる時間や。急げ急げ! ハイヨー、シルバー!」
ワゴンタクシーの運転手「もう限界ですって。速度警告音がキンコンゆうてるでしょうが」
テヨン「昔のトヨタ車かよ(呆)」
ユリ「♪時速120キロ ビルの谷間を抜けて 貸し切りだよハイウェー
  Go Go Go yayayaya…
ティパニ「なんや、その歌は(呆)」
テヨン「ビルなんかどこにも見えんぞ。クソ田舎の風景ばかりやんけ」
ユリ「気分や、気分。もうジタバタしたってなるようにしかならんのやから、陽気に行こうで」
ソニ「めでたい奴やな」
ジェシカ「とりあえずウチは寝る」
スヨン「腹減った」


ぶろろろ…トロトロトロ
クッキーマン「こら、スピード落とすな」
運転手「そおゆわれても、この先通行止めって標識が」
クッキーマン「なにーーーーっ?」
運転手「大雨で危険やそうですわ。仕方ない、次のインターで下りて山道を通りますか」
クッキーマン「ひー、ただでさえ間に合うかどうかわからんのに…」
テヨン「大雨やったら山道かて土砂崩れになってるかもしれんで」
運転手「その可能性はありますけど。ここで立ち往生してても仕方ないし」
テヨン「そやな。一発大勝負や」
クッキーマン「うひー、胃に穴が開きそうや(泣)」


ナレーション:一方そのころ汝矣島のKBSでは…
キムPD「なにー? 更に遅れるやと?」
AD「へえ。大雨で高速道路が不通やそうで。
  マネージャーが胃に穴開きそう、と泣いてました」
キムPD「パボいってんじゃねー。こっちゃ番組に穴開きそうなんだよ!」
AD「お、上手い(パチポチパチ)」
キムPD「仕方ない。少女時代の出番を後半に回しなさい。ある程度は待つよって」
AD「わっかりやした」
キムPD「くそー、少女時代め。迷惑ばっかりかけやがって、あいつら大っ嫌いや!(むかむか)」


キキキーッ
クッキーマン「今度はなにー?」
運転手「予想どおり土砂崩れですわ。ほら」
クッキーマン「わー、泥で道が塞がってる!」
運転手「見事に賭けに負けましたな、はっはっは」
クッキーマン「笑いごとか!(スパーン)
  ううう、やっぱり無理なんか? 地上波1位は夢のまた夢なんか?
  ワシが担当したアイドルが、初めて掴んだチャンスやったのに…(さめざめ)」
テヨン「アホか。泣いてる暇あったら身体動かせや」
クッキーマン「身体動かすて、なにする気ぃや?」
テヨン「道を塞いでる土砂の上を、みんなでクルマ担いで通り抜けるんや。
  こんだけの人数おったら、絶対行けるて」
クッキーマン「歩いて渡ろうっちゅうんか?」
ヒョヨン「無理や。ウチ、さっきまで腰折れてたんやで」
ジェシカ「ウチは眠いんやで」
スヨン「ウチは腹減ってるんやで」
テヨン「やかましい!(タコ殴り)」
ジェシカ/スヨンひでぶぶぶぶっ!」
テヨン「食うなら番組に間に合うてから食え! 寝るなら1位を取ってから寝れ!
  努力もせん奴に夢は訪れんのじゃ」
ユナ「ううっ、凄い迫力」
ティパニ「確かに努力は惜しまん奴やし、説得力あるなぁ」
ソニ「仕方ない、やってみるか」
テヨン「ほんじゃ高身長組と運転手はんは前を抱えて、短身組とクッキーマンは後ろや。
  行くでー、シージャック!」
全員「それー!」
ギ、ギギィ
クッキーマン「う、浮いたぁ」
テヨン「そーれ見ろ、やれば出来るんじゃい。よっしゃ、この勢いで土砂の向こう側までクルマを運ぶで」
全員「へーい」
ユナ「なんやらキャメルトロフィーみたいになってきたなぁ(とほほ)」


長身組「仁王!」
短身組「どっこい!」
長身組「仁王!」
短身組「どっこい!」
ナレーション:と、一向が力を合わせて汝矣島を目指している頃…
♪ジャーン
タブロ(司会)「儲かりまっかー!」
観客「ぼちぼちでんなー!」
タブロ「もっと大きく! 儲かりまっかー!」
観客「ぼちぼちでんなー!!」
タブロ「ええでっせー。
  さぁ、始まりました『ミュージックバンク』。今週も多彩なゲストをお迎えしております」
キム・ソンウン(司会)「その内少女時代のみなさんは現在営業先からKBSに向かっている途中と言うことで、到着次第歌っていただくことになっています」
タブロ「間に合うとええですね−。それでは最初の曲はこの方から…ジュエリーで『One More Time』!」
観客「キャーッ!」
キムPD「つ、ついに本番始まってしもうた。もお後戻りは出来へんぞ」
AD「今更欠席とは言えまへんもんね」
キムPD「少女時代の出番はきっちり開けてあるよって、間に合わなかったらマジで穴開くわよ…(きりきり)番組にも胃にもね」


東方神起(車内テレビ)「♪せさんぐる まんじるすが おったみょん
  なえげん ぼいじど あんぬんだみょん…」 ←『Purple Line (Dopamine)』
ソニ「ひえー、トンバンにいさんたちまで出番が回ったでぇ」
ユナ「やがて番組後半か」
クッキーマン「(きりきりきり)いててて」
運転手「あ、灯りが…ソウルの街が見えて来たで!」
クッキーマン「マ、マジか!(がばっ)」
ティパニ「残り30分で行ける?」
運転手「いや無理やろ。この先山ばかりだし、渋滞してるし」
テヨン「北村は? 韓屋村の中ならクルマ通ってへんやろ?」
運転手「あんなとこ車の通れる幅ちゃいまんがな。第一文化財でっせ」
テヨン「パボ野郎! ウチらの方がよっぽど文化的価値あるっちゅうねん」
ソニ「どうゆう理屈や」
テヨン「それに韓屋村なら全州にちゃんとした奴がある。こっちのはちょっとくらい壊しても大丈夫やって」
運転手「無茶ゆうなあ」
ブラウンアイドガールズ(車内テレビ)「♪やるっやるたん のる ひゃんはん なえまん
  とぅりに  I need you I love you
ユナ「わぁ、BEGねえさんたちが歌い出した」
クッキーマン「これああかん。迷うてる場合やないど。韓屋村やろうと宗廟やろうと突っ切れ!」
運転手「マジでぇ?」


キムPD「少女時代は?」
AD「もうすぐ着くとのことです」
キムPD「放送時間は?」
AD「あと10分です」
キムPD「(きりきりきり)うう…もうすぐって、どの程度のもうすぐや?」
AD「それは聞いてまへん」
キムPD「そこが一番大事なんやないの(ウキーッ)。とにかく少女時代の出番は一番最後に回せ。
  それで間に合わんかったらイ・スマンに『Kissing You』を歌わせて尺を埋める」
AD「じゃ、スマン先生を呼びますか?」
キムPD「真に受けるな、ボケ!」


がたたたたた
ごんっがんっごんっ…
ユリ「うひゃー」
スヨン「し、し、舌噛む〜」
運転手「しっかり掴まっといてや」
ソヒョン「ま、ま、ま、まさか路地裏の階段をクルマで駆け下りるとははははは」
テヨン「こここの方がはややややいんやややや」
どすーん!(着地)
全員「ひゃーっ(ぴょーん)」
運転手「よーし、見えた、麻浦大橋や。あれを渡ったらKBSやでぇ」
ヒョヨン「や、やったぁ」
クッキーマン「ええか、着いたらもお打ち合わせもテストもやってる暇がないそうや」
ソニ「まさにぶっつけ本番て訳やな」
クッキーマン「そこで移動中やが、今ここで衣装を着がえるしかない。アメも忘れんように持ってな」
ユリ「へーい…て、自分外に出てろや」
ヒョヨン「運ちゃんもな」
クッキーマン「走行中やぞ、無茶ゆうな。目をつぶっとるからその間に着替えろ」
ユリ「えー?」
運転手「…」
ヒョヨン「知らん振りすんな。貴様も目ぇ閉じらんかい(がばっ)」
運転手「わー、目を塞ぐな。危ない危ない!」
どかーん!
全員「どっしゃーっ!」


………


ざっぱー
びちゃびちゃ…
ソニ「ま、まさか欄干突き破って漢江に落ちるとは」
ヒョヨン「本日二度目の入水や」
ユリ「自分が無茶するからや」
ヒョヨン「そやかて運ちゃんの奴、自分は関係ないみたいな顔してるよって、むかついたんやもん」
運転手「だからって、走行中に目を塞いだら事故るに決まってるやないか。どないしてくれるねん、タクシー川の底やど」
ヒョヨン「それは後日事務所相手に裁判して頂戴。勝ったらいくらか貰えるかも」
運転手「(うきーっ)貴様相手に裁判してやるわ!」
クッキーマン「とにかくなんとか汝矣島に上陸した。あとは走れ!」
少女時代「げぇ」
テヨン「それしかないな。判った。みんなKBSまでダッシュや!」
ジェシカ「いややなぁ。こっちゃ眠いのに」
スヨン「腹減ったのに」
クッキーマン「ブツブツゆうな。さっさと行け。後のことはワシに任せろ」
全員「よーし、頼んだでッ!」
だだだだ…
クッキーマン「行ってもうたか…(がくっ)絶対間に合わせろや、みんな…
  ♪高く立て 赤旗を その影に 死を誓う
   卑怯者 去らば去れ 我らは赤旗守る…
運転手「シルミドかっ!」


でででで…
ユナ「(はぁはぁ)おお、走ってる内に衣装が乾いて来た」
ソニ「(ぜいぜい)うむ、これなら本番に支障なさそうやな。淡水で幸いした」
ユリ「(ふぅふぅ)それにしても、最後のクッキーマン、ちょっとカッコよかったと思わへん?」
ティパニ「(ひぃひぃ)アホ抜かせ、こんな目に遭うてるのも、全部あいつのせいやないか」
ヒョヨン「全くや」
テヨン「(はぁはぁ)あ、KBSや! KBSが見えて来たで!」
少女時代「(ぜいぜい)…や、やたっ!」


09


パク・チホン「♪のるる ぽごしぷん なれん
  もっちげ くでるる のあっちょ
AD「監督、少女時代が玄関に着いたそうです」
キムPD「来たか! 残り何分や?」
TK「7分です」
キムPD「走らせろ! まっすぐステージへ!」
TK「パク・チホンさんの曲が終わります!」
キムPD「すぐ少女時代の曲をかけて!」

ででででで
♪ジャーン
スヨン「(はぁはぁ)わぁ、もう『Kissing You』のイントロが!」
ティパニ「(ひぃひぃ)ステージはすぐそこや! 走って! 走って!」
ジェシカ「走ってるっちゅうの!」
テヨン「見えた、ステージの入り口や!」
FD「みなさーん、マイクを持って! マイクを取っていってくださーい」
ソニ「(むんず)インカムをつける暇はなしか?」
FD「返しはステージ上のスピーカーから出まーす」
ソヒョン「(ぐわしっ)ひゃー、もお歌が始まる〜!」 ←歌い出し担当


AD「少女時代がステージに到着しました!」
キムPD「す、滑り込みセーフ…(ぐったり)」


ででででで…
少女時代「♪トゥトゥル トゥトゥトゥ Kissing Baby〜(はぁはぁ)」
観客「キャーッ!」
ソヒョン「♪ちゃんなんすろん のえ きすえ きぶに ちょあ〜(ひいひい)」
少女時代「(も、もおこんな思い、二度といやや〜)」


AD「みんな笑顔で、ええ表情してます」
TK「まだ10代なのに、プロですねぇ(感心)」
キムPD「ふん。これで悲惨な顔されたら、こっちがたまらんがな」
AD「…(とかゆうて、まんざらでもなさそうやん)」


♪チャララララ〜ン
少女時代「お、終わったぁ(へなへなー)」
タブロ「少女時代のみなさん、ご苦労様でした。
  出演者のみなさん、どうぞステージにお集まり下さい。
  さぁ今週は2月の総合1位を決める週です。
  候補はキム・ドンリュルさん、少女時代さん、パク・チホンさんです」
キム・ソンウン「それでは集計結果でーす!」
かしゃかしゃかしゃ…ピコーン!
観客席「キャー!」
タブロ「2月の総合一位に輝いたのは少女時代です!」
キム・ソンウン「おめでとうございまーす!」
少女時代「…へ?」
タブロ「初の地上波1位やで。なんか、感想を」
ユリ「あ、ええと、その…(ポロポロ)あ、あれ?」
ジェシカ「ちょ、なんかわからんけど、涙が…」
ソニ「くすんくすん…緊張の糸が切れたもんで、か、感情がコントロール出来ん」
ユナ「結構追い込まれてたんやなぁ、ウチら」
ヒョヨン「こ、こうゆう時こそリーダーが所信を…」
テヨン「うわーん! こわかったよ〜! でもよかったよ〜!」
スヨン「あかん、陰に隠れて一番泣いてる」
ソヒョン「汚いわ、こっちかて泣きたいのに」
ティパニ「てか、自分ももお泣いてるで」
ソヒョン「ふぇ?」
ジェシカ「てか、みんな涙が止まらへんみたいや」
テヨン「うわーん(ずずずー)」
少女時代「えーん、えーん」
キム・ソンウン「なんじゃこいつら?」
タブロ「…(ワシには判るで。思いっきり泣け、みんな)」
観客「キャーキャー!」


クッキーマン「…ん? KBSの方から歓声が聞こえる?」
運転手「うそ?」
クッキーマン「間に合うたんやな、ワシには判るで(歓喜)」
運転手「絶対空耳やって」
クッキーマン「この歓声の大きさ…そうか1位もとったかぁ。さすがワシの育てた娘たちや。よおやった(ぐすん)。
  ♪力なく 道暗けれど 赤旗頭上になびく…うわーん」
運転手「笑うたり泣いたり、忙しい奴(呆)」
ナレーション:こうして少女時代の一番長い日は終わった。
  辛かったのか、嬉しかったのか、とにかくこの大変だった一日は、長くメンバーの心に刻まれていくであろう…






※2008年2月29日…
 この日少女時代は『ミュージックバンク』で地上波初の1位(2月度合算)を獲得した。
 が、受賞と同時にメンバー全員が大泣きしてしまい、ステージは異様な光景となった。


 KBS『ミュージックバンク』@2008_0229     


 こういう場では絶対泣かないと公言していたテヨンでさえ、メンバーの陰に隠れて涙を流していた。
 他の番組での1位受賞では、もっと笑顔が多いので、やはり普通ではないと思われた。


 初期の1位獲得の瞬間を集めた動画


 実はこの日、複数の営業を詰め込まれていた少女時代は、ギリギリの状況でKBSに向かう途中交通事故に遭遇、ヒョヨンが腰を打撲して病院に担ぎ込まれるという事件があったのだ。
 幸いヒョヨンは軽傷だったため、一向はKBSに急行。リハーサルもなにもなしで『ミュージックバンク』のステージに立った。
 パフォーマンス中は精一杯のプロ根性で笑顔を見せていたが、1位のコールと同時に緊張の糸が切れ、全員大泣きとなったのである。
 彼女らが受けていたプレッシャーの大きさがよく判る。



 ちなみに少女時代の『ミュージックバンク』での1位はこの年はこの日限り。翌週からジュエリーが『One More Time』で7種連続1位の快進撃。さらに6〜7月はワンダーガールズが『So Hot』で6週連続1位を獲得している。
 少女時代はこの後ユナのドラマなど個人活動に追われ、緩やかに暗黒時代へと入って行くのである。


※キャメルトロフィー…世界一過酷なアドベンチャーレース