第59話 種まき

ソルリ「あっ(とてとてとて)クッキーマンさん、パニねえ、おはよおございますぅ(ぺこりん)」
クッキーマン「やあ、おはよう」
ティパニ「なんや、ジンリやないか。テレビ局に来るなんて珍しいな」
ソルリ「それが、名子役特集ゆう特番の収録があって、チャン・グンソクさんやキム・ムンジュねえさんなんかと出演して来たところなんよ」
クッキーマン「キム・ムンジュ?」
ソルリ「あ…な、なんでもない。とにかく久しぶりのテレビで緊張したわ」
ティパニ「あー、自分、緊張しいやからな」
ソルリ「そやねん。そやから収録でもおとなしゅうしてた。でも、訊かれたことには、出来るだけハキハキ答えたつもりやで」
ティパニ「例えばどんな?」
ソルリ「えーと、司会の人が”ソルリちゃんはまたドラマに出たりしないの?”て訊くから、”出来ればグンソクさんと恋人の役をやってみたいです”ってひと笑いさせてから、”でも今は歌手デビューに向けて一所懸命お稽古しているところなので、正直そんな余裕はありません。一時も早くデビューして、少女時代ねえさんたちのようにファンに夢を与えたいです”て答えたの」
クッキーマン「ほー、上出来やないか」
ティパニ「つまらん!」
ソルリ/クッキーマン「え?」
ティパニ「お前の話はつまらん!」
ソルリ「なんで大滝秀治?」
クッキーマン「いやいや、模範的な答えやないか」
ティパニ「そんな長いものには巻かれろ的な釜山気質丸出しで人気が得られたのは80年代までや。
  今は新世紀、ウチらとワンゴルとジュエリーねえさんらが、高山善廣vsドン・フライのような壮絶な殴り合いを展開している群雄割拠の時代。
  個性のない奴らは埋もれていくんやでえ」
ソルリ「マジで?」
ティパニ「ワンゴルのソヒを見ろ!(ビシ)」
ソルリ「ソヒねえさん?」
ティパニ「あんなチンチクリンな顔で歌がド下手でも人気があるのは、それが個性として認められてるからや」
クッキーマン「パク社長に怒られるって」
ソルリ「チンチクリンかなぁ。可愛いと思うけど」
ティパニ「テヨンかて同様。普通ならあんな朝鮮顔で短足な奴が世界に認められる訳がない。なのにむしろそれが民族意識を刺激して人気が出るんや」
ソルリ「本人がいないところではむちゃくちゃ言うなぁ」
ティパニ「そして、ウチや。このたどたどしい韓国語にグッと来るファンは数多し」
ソルリ「ボビー・オロゴンみたいな戦略やな」
ティパニ「やかまし!(どがっ)ボビーにウチのショルダースマイルが出来るか!」
ソルリ「あいてー」
ティパニ「思わず守ってあげたくなる美国から来た女の子、それやのにパーンと張った骨盤に黄金比の美脚とギャップも十分」
ソルリ「クビレがないのに骨盤でかいのもギャップかも(ボクッ)きゃんきゃん」
ティパニ「そやからジンリも自分なりの個性を身につけるんや」
ソルリ「ウチなりの個性?」
ティパニ「たとえば、自分は緊張しぃの口べたやから、それを武器にする。MCの言うことに一切リアクションをとってはあかん。常にボーっとしてろ」
ソルリ「えー?」
クッキーマン「こらこら」
ティパニ「しんどくなったらすぐダンスをさぼるってキャラもええかもな。ウチもたまに実践してるけど、人気&注目度は抜群や」
ソルリ「へー、そうなんかぁ」
クッキーマン「信用すんなよ」
ソルリ「でもでも、スジョンちゃんも思ったことずけずけ口にしますし、すぐムッとするけど、人気ありますよ」
クッキーマン「そ、それは…」
ティパニ「シカもそうやで。それがチョン家の伝統や。自分も臆せず自分の色を押して行くがよい」
ソルリ「そお?」
ティパニ「そもそも美国では人気さえあれば何やってもええと言う気風がある。スーパースターなら女房を殺しても無罪になるくらいや」
クッキーマン「わー! 発言に注意や」
ティパニ「日本だってアイドルの辻希美がこないだ結婚したやろ。
  韓国が先進国の仲間入りするためには、芸能人にもそれ位自由な言動が認められるべきなんや」
ソルリ「なるほどー。ほんなら彼氏とか作ってもええ?」
ティパニ「ええとも」
クッキーマン「いや、あかんやろ。デビュー前やで」
ソルリ「ウチはお父さんみたいな包容力のあるタイプが好きなんや」
ティパニ「ああ、長いこと実家から離れて暮らしとるからなぁ。わかるで」
ソルリ「そやけど、そんな年上の人がウチのこと相手にしてくれるやろうか?」
ティパニ「するする。男はいくつになっても若い娘大好きやから。なぁ?」
クッキーマン「な、なんでワシに訊くねん(焦)」
ソルリ「そおかぁ。ほんならこれから身の回りにいるお父さんみたいな人に積極的に声かけていこうっと」
クッキーマン「ちょっとちょっとぉ」
ティパニ「うんうん。そしたら自分も磨かれて、ええ女に育つで。一石二鳥や」
ソルリ「はーい。パニねえ、どうもおおきに!」
ティパニ「なんのなんの。自分の教育係として当然のことや」
クッキーマン「うーん…どうしよう(汗)。
  でもまぁええか。ソルリはワシの担当やないし。デビューしてから誰かが苦労するだけの話や。放っておいたろうっと」
ナレーション:こうしてこの日、f(x)デビュー後に巻き起こる騒動の種は巻かれたのであった。





※正篇第450〜451話参照のこと


※キム・ムンジュ…女優ソウのこと。
 この年2007年にデビューした彼女は、当初1988年生まれで本名もソ・ウとされていたが、
 2009年になって実際は1985年生まれであり本名もキム・ムンジュであることが暴露された。
 しかしこの件に関し、事務所が素直に事実を認め、責任はソウではなく事務所にあると素早く対応したために大きな問題にはならなかった。


※民族や文化によって美の基準が微妙に違うのは当然のこと。
 ワンダーガールズ絶頂期のソヒは非常に人気があった。同じ童顔でもテヨンより可愛いという人も多かったでのである。
 またスーパージュニアのヒチョルが熱狂的ソヒファンとして知られている。
 しかし例えばピ(RAIN)とか金日成などが朝鮮を代表する二枚目と言われると、ポリネシアの血も濃い島国人としては「?」となったりもする。