第58話 時代が来た!?

がやがや
テヨン「おっちゃん、チャミスルおかわり」
ひげ八親父「はいよ。(どん)今日はひとりなんか? お友達は?」
テヨン「奴らは友達やない。同僚や。仕事が終わった後くらい、ひとりでのんびり過ごしたい」
ひげ八親父「(笑)なるほど。家帰っても仕事仲間と一緒なんじゃ、たまにはひとりで飲みたくなるわな」
テヨン「ああ、早よ独立して、ソロで歌いたいわぁ」
ひげ八親父「そやけど、練習生時代のギスギスした感じに比べれば、ずいぶん仲良おなってきた気がするけどな、自分ら」
テヨン「うへえ、勘弁してえな」
ひげ八親父「なんでかなぁ。やっぱデビューして、ちゃんと売れてきたからやないの」
テヨン「お、ウチらが売れてるの、おっちゃん知ってるん?」
ひげ八親父「そらぁ、来る客来る客、自分らの噂しとるからなぁ。ほれ」
テヨン「…ん?」


酔客A「なぁなぁ、昨日のMカ観たか?」
酔客B「Mカ? ド変態の蚊ぁか?」
酔客A「つまらんぞ。MnetのMカウントダウンや」
酔客C「あー観た観た。イ・スンチョルの『少女時代』歌うてる子らがおってびっくりした」
酔客D「知ってる知ってる。めっちゃ可愛いグループやな」
酔客B「少女時代て、あの少女時代? ♪おりだごのりじまらよ〜ゆう?」
酔客A「それそれ。イ・スンチョルのあの曲を、今風にアレンジして歌うてる少女グループがおるねん。名前は確か…えーと」
酔客D「ワンダーガールズ?」


テヨン「…(ずる)」
ひげ八親父「まぁまぁ。お、あっちのテーブルでも」


酔客E「まさか、あんな手で来るとはなぁ」
酔客F「日本でゆうたらかぐや姫の『神田川』をリメイクするようなもんやろう」
酔客G「それは雰囲気暗すぎやろ。吉田拓郎の『結婚しようよ』やないか?」
酔客F「男目線やないか。女目線の曲が最低条件や」
酔客G「あかんか? モー娘。ミキティもカヴァーしとる名曲やのに」
酔客E「ほんならさだまさしの『線香花火』は? 女子目線やで」
酔客G「暗いって!」
酔客H「自分ら在日帰国組のゆうことはさっぱりわからんな(呆)」


テヨン「ロックやっちゅうとんねん。なんでフォークソングに置き換える(ぶつぶつ)」


酔客I「あの背番号がええよね。覚えやすい」
酔客J「胸番号な」
酔客K「前の歌の時は全員同じに見えたからね」
酔客I「ワシ、93番の子が好き。めっちゃ可愛いやん」
酔客J「ユナやろ。あの子ドラマ出てたよな」
酔客L「詳しいなぁ」
酔客J「だって好きなんやもん。結婚したいわぁ」
酔客L「40過ぎて、気持ち悪」
酔客J「あの子らは特別なの!」
酔客K「ワシかて、嫁はんおらんなら64番の子と結婚する!」
酔客J「64番は…(うーんと)ソヒョンやね、マンネの」
酔客K「ソヒョンゆうんか(感動)」
酔客L「ほんなら、あの子は? 26番」
酔客J「あの子はさにぃ」
酔客L「へー、帰国子女なのかな」
酔客J「さぁ、そこまでは」


テヨン「べたべたの韓国人やって」


酔客M「なんちゅうてもダンスが可愛ええ。ワシ踊れるで(ぴょんぴょん)」
酔客N「お、人形ダンス」
酔客O「おっちゃんが踊っても可愛くもなんともない」
酔客N「この曲はやっぱりサビの反抗ダンスがキモやろ」
酔客M「それも完全にコピーしました。それ、♪おりだごのりじまー(ぴょんぴょん)」
酔客N「おお、完全!」
酔客M「♪すじゅぼそ まるど もったごぉ」
酔客N「ええどー」
酔客M「♪おりだごのりじまーらーよ」
酔客N「それ、それ」
酔客M「(ぱったり)はぁはぁ、今はここまで」
酔客O「芋洗い坂係長か!」
ぴょーんぴょーん
酔客P「♪すちょがぬん いぇぎっぷにんごる〜」
酔客N「おお、隣のテーブルから、踊りながら乱入」
酔客P「自由なダンスが魅力のユリでーす!」
酔客M「これは話がわかる御仁や。一緒に呑みましょう!」
酔客P「そうしましょう。少女時代、こんべー!」
酔客たち「こんべー!」


テヨン「盛り上がって来たなぁ」
ひげ八親父「自分らの話題で中年親父どもがこうも熱くなれるとは。これは時代が来たんちゃうか?」
テヨン「へ、へへへ…。年齢性別関係なく熱中させてこそのアイドル。ホンマモンならこれくらい当然や」
ひげ八親父「ふ、相変わらず素直やないなぁ…へえ、いらっしゃい!」
ばささささ(めくり)
ヒョヨン「おっちゃん、久しぶり! …わ、テヨン」
テヨン「(げぇ)自分も来たんかい」
ひげ八親父「今はカウンターしか空いてないよって、並んで呑めや」
テヨン「ちぇー、仕方ない。ほんならそこ座り」
ヒョヨン「ええっ? 珍しいな。いつもなら一緒に呑むくらいなら帰るゆうくせに」
テヨン「今夜はまだ呑み足りんのじゃ」
ばささささ
スヨン「じゃーん、ドラマの帰りに寄ってみました!」
ユリ「いい男をカクテルにしてじゃんじゃん持って来て(にゃははは)」
ヒョヨン「わぁ、奴らまで来よったで」
ユリ「なんか匂いがしたモンで」
ひげ八親父「他のメンボも全員来るて、今電話あったで」
テヨン「(暗黒)厄日や」
ひげ八親父「ふ、なんだかんだ仲良えくせに」
テヨン「やめろよぉ。そんな言い方するなよ」
ばさささ
少女時代「こんばんはー!」
ひげ八親父「いらっしゃーい。ほんならあっちに9人分席作ってやるから、みんなで呑んだらええ」
少女時代「うげーっ」


酔客A「お? なぁなぁ、あの子たち…」
酔客B「えー、マジで? 本物かな?」
酔客C[ぴゃー、可愛いなぁ。まさか実物にお目にかかるとは」
酔客D「誰? ワンダーガールズ?」
酔客A「それはもおええって」
♪ちゃんちゃん







※『少女時代』は2007年11月25日の人気歌謡で1位になっているので、それまでの間の出来事だと思っていただきたい。
 ワンダーガールズが同年代の少女たちをターゲットにして大ヒットしたのと比べると、さすがに少女時代はもっと広範囲を狙って来た。
 どちらのグループも少女らしさがセールスポイントだが、ワンダーガールズがリアルタイムな少女像を描いたのに対し、少女時代はもっと普遍的な少女像…
 とことん清純で愛らしく、コケティッシュな、言わばフィクションにしか登場しないような少女の姿を見せてくれた。
 これは正解だった。
 若者だけでなく、おじさんたちもたちまちメロメロとなり、活動曲があの『少女時代』だったこともあり、カムバック後すぐに注目を浴びたのである。
 また『タマンセ』のような難易度の高いダンスではなく、覚えやすくキャッチーな反抗ダンスは、多くの人が真似するほど広く知られるようになった。
 誤解があるといけないのだが、ファンの主流はあくまで高校大学生などの若者である。が、その中に中年層が混じって、恥ずかしがらずに応援するようになったのである。
 これは当時としては珍しい現象で、年が若いだけ熱狂的なワンダーガールズのファン活動に押されがちだったが、その分腰の据わった根強いファン層が出来たように思える。
 幅広い層を狙う戦略は一貫していて、『少女時代』の活動と同時に放映が始まったMBCのドラマ『止められない結婚』にはユリ・スヨンコンビが140話に渡って出演し、
 翌年にはユナが日々ドラマの『君は僕の運命』でお茶の間の顔となった。
 その他『スターゴールデンベル』や『スターキング』など毎週のようにバラエティに出演し、顔を売った時期でもあった。
 ファンとしても日々の活動を追うのがもっとも楽しい時期だったと思う。
 

※私の好きなMVのメイキング動画…
    
 パート2と併せて観るとわかるが、MVを一日で撮ってる。
 個人個人のパートは9人もいるので、メイクや着替えなどで待ち時間が長そうだし、非常に大変そうだ。
 しかし、最後までみんな明るくてすばらしいです。
 このMVで踊ったダンスは暫定だったらしく、カムバック後のステージでは何ヶ所か振り付けが違っている。