第73話 少女時代の一番長い日(前編)

※この作品は今日では一部不適切な表現がありますが、時代背景や作品の芸術性を尊重しそのまま掲載します




ナレーション:これは2008年2月29日に実際にあった出来事です…


01


ぶぅ〜、キキキー
クッキーマン「(がちゃ)着いたで」
ヒョヨン「んん〜、(よたよた)ここ、どこ?」
クッキーマン「莞島(ワンド)や」
ヒョヨン「莞島…て、ゆわれてもさっぱり」
テヨン「(やな予感)まさか、全羅南道の莞島違うやろな」
クッキーマン「ピンポーン! ソウルから徹夜で移動すること6時間。私たちはいま全羅南道莞島郡は莞島旅客ターミナルにいまーす」
少女時代「どっしゃー(ずっこけ)」
テヨン「全羅道の住人であるウチすら、生涯に何度も行かんところやど」
ティパニ「そんな本土最南端の地になんの用が…?」
クッキーマン「目的地はここじゃありませーん。
  今日はこれからフェリーで青山島(チョンサンド)に渡り、”菜の花ゆっくり歩こう祭り”に参加して営業を行いまーす。
  日本からQちゃんもやって来るよ」
ユナ「パボ野郎、爽やかな顔でふざけたことゆうんじゃねぇ」
ユリ「なにが”菜の花ゆっくり歩こう祭り”じゃ、Qちゃんじゃ」
ジェシカ「こちとら毎日営業営業の強行軍で、ボロボロやっちゅうねん」
ティパニ「ウチなんか『Kissing You』で活動始めてから2ヶ月、ずっと生理不順に悩まされてるんやど」
ソヒョン「それは別な原因では?」
ティパニ「あ、自分、アイドルに向かってゆうたらあかんことを」
ソヒョン「そやけど、たまに夜の営業がない時も遊び歩いて宿所に帰って来ぉへんし」
クッキーマン「同室同士の喧嘩ならフェリーの中でお願いしまーす。片道50分あるので、決着をつけるには充分でしょう」
ジェシカ「そんな時間あるならもっぺん寝るわ、ボケ」
ユリ「青山島とやらはそない遠いんかぁ」
スヨン「質問ー! フェリーの中に食堂はありますか?」
クッキーマン「さぁ。よお知らんけど、軽食くらい売ってるんやない?」
スヨン「なんや不安やな。ターミナルの売店で朝飯買い込んでおこう」
クッキーマン「買うなら早よしてや。8時発のフェリーに乗らなあかんからな」
スヨン「ゲゲッ、あと10分や(焦)」
ソニ「そんな早う青山島とやらに渡って、ウチらで1日イベント持たせろとか無茶ゆうんやないやろな?」
ユリ「こっちゃ手持ち5〜6曲しかないんやで」
クッキーマン「大丈夫。チャチャッと1曲だけアメ振って踊ったらOKや。
  すぐ9時50分のフェリーで帰って来るから」
テヨン「滞在時間1時間か? 超特急の営業やな、おい」
クッキーマン「今日は忙しいで。イッコでも押したら、その後のスケジュールがメチャクチャなってえらい怒られるから、気合い入れろや」
ソニ「そんな綱渡りなスケジュール組むなや、まったく(ぷんぷん)」
クッキーマン「文句ゆうな。売り出し中の新人なら当然じゃ。むしろこんだけスケジュールを埋めてくれたマネージャーにいさん方に感謝せい」
ジェシカ「つーんだ」
クッキーマン「あ、反抗的。憶えとけよ、いつか自分だけにスケジュール入れてやらんようしたるからな」


02


ポー…(汽笛)
ヒョヨン「おい(ゆさゆさ)、起きれ、着いたで」
ジェシカ「むにゃむにゃ…着いたて、どこ?」
クッキーマン「青山島やがな。ここで”菜の花ゆっくり歩こう祭り”に参加するんや」
ジェシカ「あー、そうやったなぁ」
ソニ「とりあえず涎拭きや」
ユナ「おおっ、桟橋を見ろや。島民が手を振って歓迎してるで」
ソヒョン「ははは、人がゴミのようや」
ティパニ「それやめれって」
クッキーマン「まぁ、とりあえず上陸するで。荷物忘れるな」
全員「へーい」


里長「(よぼよぼ)よおこそ青山島へおいで下さった。歓迎しますで」
クッキーマン「こちらこそ、歓迎感謝いたします」
里長「して、みなさんは5キロコースに出場で? それとも10キロコース?」
クッキーマン「いや、ワシらは祭りを盛り上げるために呼ばれたアイドルグループでして」
里長「なぬ、業者かい? ちぇー、挨拶して損したわ」
ジェシカ「わ、手の平返しやがった」
里長「おーい、誰か若いの。この業者をさっさとステージに案内しろ。観光客の前をウロウロさせるな」
若者「へーい。みなさん、こちらの方へどうぞ」
テヨン「むかつくわー。南道のくせに人を差別するとは」
クッキーマン「自分がゆうなよ」
若者「すいませんねえ。ここはちょっと前まで観光客が押し寄せて、甘い汁が吸えたもんやから、里長がすっかり勘違いしちゃんて」
ジェシカ「観光客?」
若者「へい。この丘から、後ろを振り返ってご覧なせえ」
ユリ「どれどれ…わっ」
少女時代「これは凄い」


    


ユナ「一面の菜の花…どこかで見たような…」
若者「そおです、ここは『冬のソナタ』で有名なユン・ソクホ監督の四季シリーズ最終章『春のワルツ』の舞台となった島ですねん」
ユナ「そうやったんか」
若者「で、当島では毎年”菜の花ゆっくり歩こう祭り”ちゅうのを開催しておりまして、たくさんの観光客のみなさんに景色の素晴らしさを味わいながら、運動して貰おうとやっとるんですわ」
スヨン「ははぁ。それをウチらが歌と応援で盛り上げたらええんやな」
若者「そうですとも。里長は存じませんでしたが、みなさんのことは若い連中はみんな知っております。そのお姿を見るだけで大いに盛り上がることでしょう」
ティパニ「そおゆうことならまかせなさーい!」
若者「お子さんたちが一緒に『Tell Me』踊りたがるかも知れませんが、害はないので、そうゆうときはステージに上げてあげてくださいね」
少女時代「は? 『Tell Me』?」
若者「おんや、どうしました?」
少女時代「…(そんなこったろうと思うた)」


パパーン、パパパーン
ソニ「お、遠くで爆竹が」
ヒョヨン「いよいよスタートやな」
ユリ「と、思う間もなく、えらい数の観光客が歩いて来たで」


     青山島菜の花スローウォークフェスタ


ユナ「わぁ、これは凄い。こんなクソ田舎のイベントとは思えん」
ソニ「こんな綺麗な景色の中、菜の花畑の中にステージ作ってもらって、こんなにたくさんの人にパフォーマンスを見ていただくなんて、幸せやなぁ(ぐすん)」
クッキーマン「なにを西川きよしみたいなことゆうてるねん。さっさと歌って踊って。次のフェリーには絶対乗り遅れられへんのやど」
スヨン「へいへい。ほなミュージックスタート!」
じゃーん
少女時代「♪トゥルットゥ、トゥトゥ、Kissing Baby〜 みなさーん、がんばってくださーい!」
参加者「はぁ?(ポカーン)」
参加者「こいつら、なにしてんだべ?」
スヨン「あかん。年寄りはともかく、若者や子どもまで状況を理解してない」
ジェシカ「こんな孤島の菜の花畑にいきなりアイドルが現れるなんて、やっぱり現実感がなさ過ぎなんやろうな」
テヨン「いんや、違う」
ジェシカ「違う? なにが?」
テヨン「この道、どっかで見たことあると思うてたら映画『西便制』の舞台になったところや」
ユナ「マジで?」


     映画『風の丘を越えて西便制)』


ソニ「あー、ホンマや」
ソヒョン「よお見たら確かに」
若者「申し忘れました。確かにここは『西便制』で最も有名なショット、旅のパンソリ芸人親子が歌いながら歩いた道であります。
  『春のワルツ』以前は、『西便制』のファンも多く訪れておりました」
テヨン「なるほど。それでポップス歌うてもピンと来んはずや」
ソニ「とゆうと?」
テヨン「この地ではパンソリを歌って盛り上げろ、ゆうことや」
ソニ「げげー」
クッキーマン「アホか。ただでさえ時間ないのに、悠長にパンソリなんかやってられるか」
テヨン「そやけど目の前の客を喜ばせられへんのは、ウチのプロ精神に反する。
  ここは一発歌わせて貰うで(すっく)。
  ♪太鼓はドゥルルルル〜!
クッキーマン「わぁ、始めやがった」
ソニ「どないする?」
ヒョヨン「どないこもないも、パンソリなんか歌えるのはテヨンしかおらんし。静観あるのみや」
ジェシカ「そやな(どっこいしょ)。そんじゃ、その間ちょっと寝よ」
ソニ「ステージで寝るなよ(呆)」
テヨン「♪シムチョンは よろめきつつも 舳先に向かいて 自らを省み
  ”勇気なきは孝行が足りぬゆえ” チマをまくりあげ
  両目を固く閉じれば ひと思いにいざ飛び込まん、ウルルルルル…
参加者「お、『沈清伝(シムチョンジョン)』だわい。懐かしいのぉ」
参加者「しかも南道式の西便制じゃないか。やはりパンソリはこうでなくては」
ティパニ「なんや、急に人が集まりだしたで」
ソニ「やっぱ、そうゆう土地柄なんやなぁ」

テヨン「♪両手を羽ばたかせ 雁の如く宙に浮くや 大海原へザブ〜ン…
参加者「いいぞー、名場面じゃー」
ジェシカ「(えへへ)お気持ちはこの缶かんの中へ入れてくださいね〜」
ソニ「おいおい、投げ銭集め始めたで」
ティパニ「寝てたん違うんか?」
ヒョヨン「さすが儲け時には賢い奴。ウチも集めようっと」
クッキーマン「おーい、もお出ないとフェリーに間に合わへんどー」

03


ドダダダダーッ!
ポー…(汽笛)
クッキーマン「わぁー、あかーん!」
ソニ「(はぁはぁ)フェリーがもお港の外へ」
スヨン「間に合わへんかったかぁ」
ユナ「こらー、戻って来ーい!」
ジェシカ「調子に乗っていつまでもパンソリ歌うてるからや」
テヨン「(むか)なんやと! 自分こそ”投げ銭集めるからもっと伸ばせ”ゆうサイン送って来たやないか」
ジェシカ「程度ってモンがあるやろ」
テヨン「シャーッ」
ジェシカ「がるるる」
クッキーマン「やめい、気が滅入る。
  とにかくフェリーは行ってもうた。しゃーけど、ワシらはなにがなんでも午前中に蔚州郡に行かねばならん。
  なんとか善後策を考えよう」
ユリ「午前中に蔚州やて?」
ヒョヨン「無茶や。直線距離でも250キロはあるで」
スヨン「昼飯抜いても絶対無理や。それに昼飯抜く気はさらさらないしな」
クッキーマン「どおしよう。蔚州のあとは九龍海水浴場で海開きポスター撮影しなきゃならないのに」
テヨン「てことは陽のある内に慶尚北道まで移動かい」
ソニ「無理じゃね?」
クッキーマン「そうやないんや。今日は夕方から『ミュージックバンク』に生出演あるから、16時までには汝矣島に帰っておきたい。九龍海水浴場はその帰り道にちょっと寄るだけのつもりやってん」
ユナ「パボじゃね?(呆)」
ヒョヨン「貴様欧米人か? 韓国の広さを嘗めたスケジュール組みやがって」
テヨン「こうなったら蔚州も九龍海水浴場も無理や。何とか次のフェリーで本土に戻って、『ミューバン』に出るしかない」
クッキーマン「そやけど営業は確実に金になるよって外せないよお」
テヨン「ほんならKBSに電話して出演をキャンセルせえや」
クッキーマン「それもあかん。自分ら今日は2月合算1位になる可能性があるんや」
ジェシカ「ええっ?」
クッキーマン「地上波で初の1位やぞ。そんな日に欠席しとうないやろ」
ソニ「てか、欠席したら1位候補から外されるに決まってるやん」
クッキーマン「そやから、どうしても『ミューバン』には出なあかんねん」
ユナ「(うがーっ)なんでそんな大事な日に、アホみたいなスケジュール組んでくれたんや」
クッキーマン「す、すまん。欲張った」
ティパニ「こんなガチャガチャした日、そう何年に一回もないやろな」
ソヒョン「そもそも今日2月29日が4年に一回しかないからな」
ヒョヨン「上手いことゆうてる場合か。こうなったら泳いで本土まで戻るで」
少女時代「はぁー?」
ヒョヨン「次のフェリーは13時発。とても待ってはおられん。泳いだ方が早い」
スヨン「そら自分は仁川育ちやから泳ぎは得意やろうけど…」
ソヒョン「フェリーでさえ50分かかる距離を泳いだら何分かかることやら」
ヒョヨン「海兵隊なら毎日泳いでる距離や。四の五のゆうんじゃねぇ。さっさと荷物を頭の上に固定せえ!」
ソニ「うひゃー、マジでやる気か」
ユリ「仕方ない。アイドルと書いて移動と読む。これも仕事や」
ジェシカ「そんな単純に割り切れんがな」
スヨン「腹減ったなぁ」


04


ザッパーン!
ぶちゃ、びちゃ、びちゃ…
ヒョヨン「つ、着いたぁ。陸や」
ソニ「うーむ。頭からワカメ被ってもおた。アイドルたる者が情けない」
ジェシカ「それよりここ、どこやねん?」
クッキーマン「だいぶ東に流されたよって、莞島ちゅうことはなさそうやな」
スヨン「お、あそこに釣り人がおるど。ちょいと訊いてみよう」
ユナ「言葉通じるんかいな」
スヨン「スミマセーン!」 ←念のため日本語
釣り人「…わぁ、半漁人!」
スヨン「誰が半漁人や! …て、おっちゃん、韓国の人?」
釣り人「(ギロリ)ワシが韓国人かやと? 失敬やな。違うわ!」
スヨン「ち、違うん? ほなここは?」
釣り人「ここは麗水(ヨス)や」
ジェシカ「麗水! 韓国やないか。ビックリしたわぁ」
スヨン「ほんならおっちゃんは一体なに人なん?」
釣り人「ワシは去年脱北して来た朝鮮人じゃい(えっへん)」
テヨン「紛らわしいわ、ボケ!(どげしっ)」
釣り人「(きゃいーん)韓国人て野蛮やから嫌い」
ヒョヨン「それにしても麗水とは大ラッキーやな」
クッキーマン「うむ。普通にフェリーに乗るより速かったかも」
ヒョヨン「ウチのおかげや、感謝せい」
ティパニ「結果オーライだっただけやん」
クッキーマン「とにかく麗水ならそこそこ大きい街や。すぐクルマを借りて出発したら、なんとか営業に間に合うように蔚州に着くかも」
スヨン「昼飯は?」
テヨン「さっき捕まえたイルカでも車内で囓っとけ」
スヨン「いやー、それは可哀想やわ−。イルカちゃん、可愛ええのに」
テヨン「なら我慢しとき」
スヨン「ちぇー。仕方ない、イルカちゃんと目ぇ合わせんですむように、尻尾の方から囓ったろ」
ユナ「結局食うんかい(呆)」


05


♪パンパカパーン
司会者「城、それは古代からのメッセージにして、永遠の浪漫です。
  戦争のために作られた建築物でありながら、何故これほど私たちを魅了するのでしょう。
  城にとりつかれた者たちが、城を通じて親交を深め、平和の尊さを考える”韓日倭城シンポジウム”が今年も無事開催される運びとなりました。
  今年は韓国側が主催とゆうことで、日本から50人の参加者をお迎えして、ここ西生浦倭城を舞台に行われまーす」」
参加者「パチパチパチ」


     西生浦倭城


ソヒョン「なんとか開会式に間に合うたのはええけど、なんとも場違いなイベントやな」
ティパニ「ホンマやで。なんやねん、倭城シンポジウムて? 大昔の石垣見てなにが楽しいねん」
クッキーマン「しー。クライアントの悪口ゆうな。黙って整列しとけや」
司会者「今年の舞台となります、西生浦倭城は悪鬼加藤清正文禄・慶長の役の折りに築いたもので、未だ倭式の石垣が残っております。
  オープニングイベントとしまして、韓国が誇るNo.2ガールズアイドルグループ少女時代によりますパフォーマンスと…」
ユナ「(ずる)No.2グループとは、また馬鹿正直な司会者やな」
司会者「悪鬼加藤清正ゆかりの地、熊本市蔚山(うるさん)町からお越しいただいた”ぼした祭り”保存会のみなさまによります、倭式祭礼のパフォーマンスをご覧いただきまーす」
ヒョヨン「へー、日本にも”蔚山”て地名があるんやね」
日本人「(ぬぅ)あっとたい」
ヒョヨン「おっ?」
日本人「せいしょこ(清正公)さんの作らした熊本城の裏手にあっと。せいしょこさんの蔚山での活躍ば記念してから名前ばつけたったい。
  せいしょこさんはおったちんとって神さまんごたもんだけんね」
ヒョヨン「は、はぁ…(さっぱりわからん)」
スヨン「これは日本語のスキルを上げるチャンスかも。
  あのー、”ぼした祭り”というのも、加藤清正公にちなんだお祭りなんですか?」
日本人「そぎゃんたい。せいしょこさんの朝鮮さん行って来らしたでしょうが? 当然大勝ちたい。武将たちも口々に”おるはチョンば五人殺した”、”んにゃ、おるは十人殺した”ちゅうて自慢ばすっじゃなかね? そっが藤崎宮の秋の大祭と結びついて、”ぼしたー”、”ぼしたー”ておめきながら練り歩くごてなったったい」
スヨン「な、なるほど(なんや判らんけど、この会話はものすごく危険な香りがする)」


     藤崎宮秋の例大祭


ソヒョン「”ぼした”ってどおゆう意味ですか?」
日本人「”ぼした”ね? そらあれたい、もともとは”せいしょこさんがチョンば滅ぼしたばーい”ちゅう意味で…」※諸説あります
クッキーマン「あかーん!」
ソニ「ここでそんなパフォーマンスやられたら、韓日戦争が勃発するで(汗)」
ヒョヨン「多分主催側はそんな史実知らんと呼んでるんやろうけど、危なすぎや」
クッキーマン「これはさっさとパフォーマンスを済ませて、さっさといなくなるにこしたことはないな」
少女時代「賛成や」


少女時代「♪トゥルットゥ、トゥトゥ、Kissing Baby〜 お城、ステキですねー!」
参加者「パチパチパチ」
♪じゃーん
少女時代「それじゃ、ウチらはこれで〜(バイバイキーン)」
日本人「あ、なんね、”ぼした”ば見ていかんとね?」
スヨン「見たい気持ちは山々ですが、次の営業に急がないといけませーん」
クッキーマン「めっちゃ押してますんで、すんまへん」
日本人「かぁー、韓国人ちゃ忙しかねぇ」
少女時代「また、日本でお会いしましょう!」
ブゥー
クッキーマン「あ、あぶなかった(汗)」
ソニ「あんな連中と同じイベントに参加したとばれたら、速攻で好日のレッテルが貼られるわ」
ジェシカ「営業詰め込むのもええけど、もう少し中身を吟味せえよ」
クッキーマン「も、申し訳ない」
テヨン「とにかく次の営業や。急げ」
スヨン「腹減った」


06


クッキーマン「まぁ救いは太白山脈越えをせんでええことやな」
ティパニ「東海岸を延々北上するってなかなかないもんなぁ」
ソニ「海がキレイやなぁ…」
ジェシカ「…スピー」
ソニ「景色見ろや! どんだけ寝るねん!」
ユリ「まぁ起きてるとうるさいから寝かせておこう」
スヨン「腹減った」
ユナ「他にゆうことないんかい(怒)」
ヒョヨン「九龍海水浴場ってどおゆうとこ?」
テヨン「よお知らんけど、季節外れの海水浴場なんてみんな同じやろ。人がおらんとゴミだらけで」
クッキーマン「あと近くに日本人街があるな」
ヒョヨン「ホンマ?」
クッキーマン「帝政時代に日本人が多く住んでた名残で、橋本善吉邸とか豪邸が一般開放されてる」
ヒョヨン「へー、見て行こうや」
ソニ「昔の日本人の家見てなにがおもろいねん。ベルサイユ宮殿ならともかく」
ヒョヨン「ちぇー、風情のない奴」
クッキーマン「おわっ!」
ウキョキョキョキョ!
全員「わーっ」
キキキ、ガッシャーン!
全員「どっしゃーっ(ごろんごろん!)」
ぷしゅー
クッキーマン「(よろよろ)だ、大丈夫か、みんな?」
ティパニ「いててて…どないしたん?」
クッキーマン「ネコを避けようと急ハンドル切ったらタイヤが外れた」
ソニ「はぁ? 安いクルマ借りるからや(怒)」
ユリ「大変や−! シカが意識あらへん」
クッキーマン「なんやてぇ?」
ユリ「シカ、シカ、返事せえや!」
ジェシカ「…スピー」
ソニ「(かくん)寝てるだけや」
ユナ「わーっ!」
テヨン「今度はどおした?」
ユナ「ヒョヨンねえが…ヒョヨンねえがっ(ぶるぶる)」
テヨン「どれどれ…うげー、これは」
ティパニ「きゃーっ!」
ヒョヨン「なんや、気分悪いな。なんでウチ見て悲鳴上げるねん?」
ソヒョン「そ、そやかて、おねえ痛くあらへんの?」
ヒョヨン「そら痛いがな。肘とか擦りむいてもうたし」
テヨン「いや…その、腰から下の方は?」
ヒョヨン「下半身? …いや、とくになにも感じへんけどな。
  ちょっと見てみるか…あれ、身体が動かせん。どないなっとるんや?」
テヨン「あ、あんまり無理せん方がエエで」
ヒョヨン「無理はしてへんけど…なぁ、ウチの身体、どないなってんの? 教えてぇな」
ソヒョン「なんちゅうか、一見デビルマン(コミック版)の最終回みたいになってるで」
ヒョヨン「はぁ?」


続く






※おまけ…『春のワルツ』で象徴的に登場するハート型の入り江は青山島ではなく多島海(タドヘ)海上国立公園に属する飛禽島(ピグムド)にある。