第53話 クローケー

わぁわぁ、がやがや
パシャッ


    


スヨン「(ぶつぶつ)初めてのアルバムのジャケットやからあんまり文句言いたくないけど、この選挙に出たお姫様みたいな衣装は、どおゆうコンセプトなんやろ?」
ソヒョン「ミス・ユニバースとかやないの?よおこんなタスキかけてるやん」
スヨン「あー、なるほど。そんじゃウチら全員ミス・ユニバってことか」
ユリ「うん、きっとそうや。そうですよね、おねえさん?」
スタイリスト「コンセプト? 駅伝に出たコスプレヲタって感じやけど?」
少女時代「ずるっ」
スタイリスト「さぁさぁ、くだらないことゆってないで、次はこの衣装に着替えて。急いで急いで!」
ばさーっ
少女時代「わー、こりゃまたなんじゃー、この衣装は?」


    


ソニ「これは明らかに、何かのスポーツの衣装やね」
テヨン「ゴルフや、ゴルフ。おとんがこんな棒、持ってたわ」
ジェシカ「アホか。ゴルフのクラブはこんなんと全然ちゃうわ」
ユリ「お、なんか詳しそうやん」
ジェシカ「ウチは長いことキャディのバイトやってたからな(えっへん)」
ユリ「ぴゃー。一見お嬢様のチョン・スヨンは、実はそこそこ経験豊富な10代後半の女子高生」
ジェシカ「AVのタイトルみたいにゆうな」
ソニ「ポロちゃうか? 象に乗ってやる奴」


     映画『華麗なる賭け』におけるポロ


ヒョヨン「確かに棒は似てる。が、これは象やなくて馬ですけど」
ソニ「おかしいなぁ。インドでは象に乗ってた気がしたけど」
ユリ「暑さで頭やられたんやろ。馬に乗るとしたら撃球(キョック)かもしれんね。騎馬キョック」
ジェシカ「いやいや、これはそんな時代劇みたいな衣装ちゃうやろ」
スヨン「そうやで。あれは鎧甲つけてやるもんや」


     『太王四神記』より騎馬キョック


テヨン「(ぴーん!)ラクロスや! そうに決まってる!」
ユナ「おお、テレビ朝日の人気女子アナ前田ちゃんが大学時代やっていたという…」


    


ジェシカ「人気女優田中麗奈も大学時代やっていたという…」
ソニ「田中麗奈は大学行ってへんやろ」
ジェシカ「そうなん? でもやってたで」
ジェシカ「まぁとにかく、女子スポーツ界いち男心を刺激するユニフォーム、それがラクロスや」
スヨン「確かに、コスプレで駅伝するよりよっぽど健全かつエロい。1集のジャケにはぴったりかも」
ソヒョン「そやけど、ラクロスのスティックは虫取りみたいに網張ってあるけど、これは明らかに木槌のような」
ティパニ「あー、ゆわれてみれば、そんな気も」
ユリ「ひょっとしてホッケーかな?」
ヒョヨン「ブー! スケート靴履いてない時点で、それはありえまへん!」
ユリ「アイスホッケーちゃうがな。ロッチの中岡もやってたゆう陸上ホッケーや」
ヒョヨン「陸上ホッケー?」
ユナ「つまり水上もしくは水中では正常に先端を露出することが出来るけど、陸(おか)に上がったとたんに仮性もしくは真性の症状を見せる漁師特有の…」
テヨン「そんな病気はねえ!(すかたーん!)」
ユナ「わーっ(ごろごろ、バサーッ)」
ゴール!
ティパニ「おお、さすがや。正体もわからんのに、もうその変な道具を使いこなしている」
ユリ「陸上ホッケーゆうのは、別名フィールドホッケーゆうて古代エジプトを起源とする由緒正しい球技や。
  作者の家近くの高校にもクラブがあるらしい」


    


テヨン「なんか、よお見ると、これも棒の形が違うな」
ソニ「そやね。こっちはこうもり傘の柄みたいな形してる」
ヒョヨン「もおあかん、降参や。ねえさん、この衣装は一体なんなんでっか?」
スタイリスト「これ? これはクローケー(Croquet)ゆうスポーツや」
ヒョヨン「クローケー?(ぱちくり)」
スタイリスト「イギリス発祥の、マレット(槌)で球を打ってフープ(門)をくぐらせたり、相手の球を叩き出しつつゴールとなるボールに自分の球を当てる、ゲートボールの元祖的な球技や。
  『不思議の国のアリス』で赤の女王が主催してたやろ」


    


ティパニ「さ、さっぱり…(ぽりぽり)」
スタイリスト「(ふん)もうちょっと教養身につけた方がええで」
ソニ「そんで、なんでこの衣装が1集のコンセプトなんでっか?」
スタイリスト「スマン先生からの直々の指示や。クローケーの絵付きで指定されたから用意したんや」
ソニ「おじさんの…?」
テヨン「またなに考えてるんだ、あのおっさん」


………
……


    


スマン「な、なんじゃこりゃー?」
クッキーマン「1集のジャケット写真ですが?」
スマン「なんでみんなラクロスの格好しとるねん?」
クッキーマン「クローケーですがな。先生の指示やって聞いてますで」
スマン「ワシが指示したのは、こんなんやない。
  羽織袴にハチマキ姿の武士やったのに」
クッキーマン「はぁ? それはよっぽど画力がないんですな。ハチマキがカンカン帽に、袴のヒラヒラがキュロットにされてまんがな。
  てことは、このマレットは刀やったんですか?」
スマン「ううん。それはハリセン」
クッキーマン「チャンバラトリオかっ!」
スマン「ワンダーガールズに対抗するために、ステージで歌いながらド突き合う斬新なスタイルのアイドルにしたかったのにぃ」
クッキーマン「斬新すぎるわ!」
♪ちゃんちゃん 






※少女時代の初めてのアルバム「GIRLS' GENERATION THE FIRST ALBUM」(通称1集)は2007年11月1日に発売。
 時期から考えて、デビュー前にはすでに制作が始まっていたと見るべきだろうが、活動曲まで決まっていたかは不明。
 というのは、2007年10月に社会現象を巻き起こしたワンダーガールズの『Tell Me』が、少女時代の戦略(売り方)に影響を与えたとする見方が主流だからである。
 この件に関しては、今後のネタで考えてみたい。


※「インドでは象に乗ってた」…それはエレファント・ポロと言う競技で、象使いと競技者が組んで一頭の象に搭乗する。
 馬や象の代わりにカヌーに乗るカヌーポロと言う競技もある。
 ちなみにポロの道具は”棒”ではなく”マレット”と言います。


※おまけ…
     チャンバラトリオ