第20話 星が墜ちた日

キム・ヨンミン「あわわわわ…」
クッキーマン「あわわわわ…」
トレーナー「あわわわわ…」
スマン「雁首そろえてカニみたいに泡吹いとっても仕方ないやろ」
クッキーマン「ん? カニみたいなアイドル、カニドルゆうのはどうでっしゃろ?」
ヨンミン「却下や。そんなアイドル流行るか」
 ※SME社長のこの予想は2011年に覆されることになる。
ヨンミン「それにしても、先生の姪御さんがウチのオーディションを受けとったとは」
トレーナー「ぶっさいくな娘やなあとは思うたけど、そんな関係とはまったく気づきませんでしたわ」
スマン「SMに入った以上はワシの姪とか関係ないからな。あくまで他の練習生と同じに扱うて欲しい」
クッキーマン「そうはゆうてもなぁ」
トレーナー「なぁ」
スマン「なんやねん、でけへんゆうんか?」
クッキーマン「失礼ながらお嬢さんの正体を知った後では、そう簡単には…」
トレーナー「その気で見たら、顔も確かにぶっさいくなところが面影ありますし」
スマン「ダメな奴らやなぁ。スンギュがデビューするまでまだ2〜3年は必要やろ。その間ずっと特別扱いしとっては、練習生の士気に関わるし、本人のためにもならん」
クッキーマン「いっそスーパーガールズに入れて、すぐデビューさしたらどないでしょ」
トレーナー「それがええ。デビュー組はもともと別枠扱いやし、逆に気い使わんですむ」
スマン「アホか、それこそ身びいきや思われるやんけ。第一実力が…」
コンコン、がちゃ
アユミ「会議中失礼します。スターワールドのアユミと申します」
クッキーマン「わ、Sugerのアユミや」
ヨンミン「おお。先生、彼女がスンギュを推薦した張本人ですわ」
スマン「ええっ、浜崎あゆ●やなかったの?」
ヨンミン「そんなJ−Pop界の大物が韓国人の練習生紹介する訳ないやないですか」
スマン「ぴゃー、AYU違いかよ」
アユミ「まぁ誰と間違えられてもええですけどね、どうせ整形中毒みたいにゆわれてますさかい(ぷんぷん)。
  それはともかく、スンギュの実力はウチが推薦したとおり。実際前の事務所ではデビュー直前までいってたんですから」
ヨンミン「そうなん?」
トレーナー「まぁ一通りは出来てます。そやけど、メインになるほどやおまへんで」
ヨンミン「能力に不足がないんやったらスーパーガールズに入れてもええか」
スマン「スーパーガールズは今のメンボで固定しよ思うてたんやけどな。わかった、ほなもう一回編成試験をやってみるか。
  それでスンギュの実力もわかるやろ」
全員「はーい」
アユミ「がんばれ、スンギュ(もおSugerの解散は決定的やから、次はあんたを足がかりにウチがSMに転がり込まにゃならんのや。死んでも選考に合格せえ!)」


トレーナー「ぱんぱんぱん、と…はーい、今日はここまで」
ソニ「ぜーひーぜーひー。し、しんどい。今までの事務所の倍しんどいわ」
ジェシカ「ふふふ、これがSM虎の穴や。しんどかったら、さっさとやめちまえ」
ユナ「(さっ)はい、スンギュおねえさま、飲み物をどうぞ」
ソヒョン「サツマイモ炊いたん食べます?」
ユリ「山芋すったんもありまっせ。練習後30分以内に栄養補給せんとフィジカルの強化になりまへんからね」
ジェシカ「こ、こいつら、プライドの欠片もありゃしねえ!」
テヨン「アホ、練習してすぐに唐芋やら山芋が喉に入るか。自分らと違うねんど」
ソニ「(はぁはぁ)そ、そやね、芋はちょっと」
テヨン「ちょっと休んで、帰りにバーガーキングでも寄って帰ろうや」
ソニ「そ、そうするわ」
ティパニ「ウチも行こうっと」
ソヒョン「ぴゃー、ハンバーガーなんか食うたら死んでしまいまっせ」
テヨン「今唐芋食う方がよっぽど死ぬわ!」
ジェシカ「なんやなんやテヨンまで。(むかむか)おもんないなぁ」
がちゃ
クッキーマン「あー、全員そのまま聞くように。通達1号、来週末、スーパーガールズの2次選考を行います。場所はこの稽古場で」
全員「ええーっ!?」
ソヨン「また編成変えか?」
ハジン「やっと選考に残った思うてたのに」
クッキーマン「この選考にはスマン先生も審査員としておこしになる。気合いを入れるように」
ユナ「(ひそひそ)やっぱあれやな、スンギュの奴が入ってきたせいやで」
ヒョヨン「そやな。無理矢理スーパーガールズに押し込もうゆう魂胆や」
スヨン「その分誰が落とされるんやろうな」
ユリ「自分や、自分や(笑)」
スヨン「(むきーっ)ウチちゃうわ。ウチ、がんばってるもん」
ヒョヨン「がんばっても出来ひん凡人は消え去るのみや」
スヨン「いややー、もおルート0みたいな経験はしとうない(わーん)」
ステラ「ほな、お先でーす」
ジェシカ「ちょっと、もお帰るんか? 今の通達聞いたら、どう考えても居残り練習やろ」
ステラ「そやけど、シウォン先輩と約束が…」
ジェシカ「逢い引きなら選考が終わってからにせえ。マジでデートどころやないで」
ステラ「ウチにとって一番大事なのは先輩との時間やの。大丈夫やて、選考なんか大したことあらへん。今までかて余裕で通って来たんやし。
  ほな、才能のない皆さん、がんばってや。バイバイキーン!」
ユナ「…なんじゃあの態度」
ソヒョン「そやけどライバルがひとり減ったことは確かやな」
スヨン「んだんだ。さ、今のうちに稽古してステラに差をつけよっと」
ジェシカ「ステラ…」


ムジ鳥「次の週末ーーーーー!」
クッキーマン「では選考を始めます。まずは歌唱力から」
ホ・チャンミ「1番、ホ・チャンミ歌いまーす」
クッキーマン「番号は?」
チャンミ「ん〜と、37番を」
ぽち
♪ジャンジャンジャン…
チャンミ「やた、レミオロメンの『粉雪』や。これなら歌えるで」
ソヨン「がんばれやー、歌詞見んと歌いきれば合格やで」
ソニ「挑戦1000曲か!」
チャンミ「♪こな〜ゆき〜

テヨン「7番、キム・テヨンです。85番をお願いします」
ぽち
♪ぽろんぽろん
クッキーマン「こ、これは『幸福』?」
ヨンミン「スマン先生の往年のヒット曲や。今時の子がこんな曲歌えるんか?」
テヨン「♪サランハゴ ミウォハヌン ク〜モトゥン ゴスル
  モッボンチョ ヌン ガムィミョ ウェ〜ミョナゴ〜
スマン「うん、完璧や(にこにこ)」
トレーナー「あいつ、なんでも歌えるなぁ(驚愕)」

クッキーマン「続いてダンスのテスト。1番ステラ・キム」
ステラ「はーい(ててて)」
仲宗根「音楽スタート!」
♪ドーン! ズドズド!
ステラ「え? え、え?」
仲宗根「どうした? 踊って、踊って!」
ステラ「あ、あ…(おたおた)」
ソヨン「あちゃー、やっちまった」
ジェシカ「ああ…(あのアホ、そやからゆうたのに)」
ぶつっ
スマン「もうええ(怒)。ステラ・キム、どうゆうことや? 今日が大事な日やて判ってるはずやのに練習してこんかったんか?」
ステラ「そやけど、前の選考の時と曲が…」
ヨンミン「課題曲の変更、伝えてなかったんか?」
クッキーマン「何度も言いましたがな。稽古場の壁にも張り出しましたし」
スマン「最近の稽古の態度は?」
仲宗根「そおゆうたら、正直浮かれ気味ゆうか、身が入ってへんような感じでした」
スマン「この年頃の子にはそれがあるんや。そやから余計なことを一切考えられんよう、きつく締めていかなあかんねん。自分ら甘やかしすぎちゃうか?」
仲宗根「す、すんまへん」
スマン「ステラ・キム」
ステラ「は、はい」
スマン「自分には失望したで。下がってよし」
ステラ「そんな…先生…」


ステラ「ぐすんぐすん…(ぽぴぽぴ、ぽぴぽぴ)」
ジェシカ「シウォンなら電話に出れへんよ。今営業中やからな」
ステラ「シカねえ…」
ジェシカ「男のせいで試験落ちたのに、その男に救いを求めるとは、つくづくダメな奴やなぁ(溜息)」
ステラ「シカねえかて、こないだの選考で男から貰うたスリッパで失格になったくせに」
ジェシカ「(ふん)そやからあんな男、きっぱり捨ててやったわ」
ステラ「ウチにはそんなこと出来へんモン。先輩が一番大事なんやモン」
ジェシカ「そうかも知れんけど時期を考えや。
  今まで何年もかかって苦労して来たことの結果が出るゆう瞬間に、他のことにうつつを抜かして全部おじゃんにする気か?」
ステラ「だって、ウチは今まで上手くやってきたし、今回かて仕事も恋も上手くやれると思うたんやもん」
ジェシカ「上手くいかへんかったやないか」
ステラ「今回はたまたまや。次こそ絶対うまく行くわ」
ジェシカ「次があればな(なんも判ってへんわ。この子もここまでか)」


クッキーマン「意外な選考試験でしたねえ」
ヨンミン「チャン・ハジンてもっと上手い気がしたけど」
トレーナー「あの子は今回学校の試験と時期が重なってしもうて。あそこんち、めっちゃ教育にうるさいんです」
クッキーマン「気の毒ですけど、学校と芸能生活は両立しませんわ。それより…」
スマン「まさかステラがヘマするとはなぁ(落ち込み)。新しいグループはルックス的にもパフォーマンス的にも、あの子中心で行こう思うてたのに」
ヨンミン「こうなると同じ90年組のユナをセンターにおいて、歌はジェシカ中心で考えますか?」
スマン「ジェシカだけやとちょっと線が細いなぁ」
クッキーマン「チュヒョンは?」 ← 昔からソヒョンびいき
ヨンミン「それもなぁ」
スマン「テヨンとティパニは今回がんばってたな」
ヨンミン「そうですね。あのふたりは後から入って来たし、外部トレーナーに任せっきりやったんですが、めちゃ実力付けてますね」
スマン「外部トレーナーて?」
クッキーマン「ドワン先生です」
スマン「ほお、奴は歌手活動に専念したいのかと思うたが、なかなか指導力があるな」
トレーナー「あ、あはは…(肩身が狭い内部トレーナー)」
スマン「あとはまぁそれなりの実力やったかな」
クッキーマン「スンギュ…さんも、悪くなかったですね」
スマン「そおかぁ? あれを入れるなら同じような実力のイ・ファニとホ・チャンミも入れにゃならんぞ」
仲宗根「入れたらどうですか?」
ヨンミン「イ・ファニは一回落とされてるし、どうやろう?」
仲宗根「一度失格になった者でも、頑張ればまた復帰できるゆうんは、他の練習生の励みになりますよ」
クッキーマン「それでステラがまたやる気を取り戻してくれればええんですけどね」
スマン「まぁそっから先は本人の問題やな。デビューしたがっとる練習生は、他にも仰山おる。まさに星の数ほどな(にやり)」
全員「あはは、お上手ですね(汗)」
スマン「とにかく、人数はひとり増えたけど、新生スーパーガールズはこの12人に決定や(どん!)」
    
    パク・ソヨン/キム・テヨンジェシカ/イ・スンギュ/ステパニ/キム・ヒョヨン
    クォン・ユリ/チェ・スヨン/イム・ユナ/ソ・ジュヒョン/イ・ファニ/ホ・チャンミ


スマン「さっそく来年のデビューに向けて準備を整えよ!」
全員「ははぁー!」







※作者の知り得たところでは、2006年にイ・スンギュがSMEに加入し、すでに固定したと思われていたスーパーガールズが再編成されることとなった。
 その課程でステラが脱落しているし、チャン・ハジンも抜けた。
 そしてイ・ファニ(再加入)とホ・チャンミが合流、計12名と言う大型グループとなった。
 スンギュがSMEに編入するにあたっては、当時Sugerの一員だったアユミの強力な推薦があったらしい。
 スンギュの姉がSugerのマネージャーだったからこの流れは判る(前回からアユミを浜崎あゆ●とボケていたが、誰も突っ込んでこないので、変な解説をせずにすんで助かった)。
 スンギュ本人はオーディションの時イ・スマンと血縁関係にあることを伏せていたし、誰も気づかなかった(つまり実力で合格した)と言っているが、この推薦が事実なら誰も気づかないとは考えにくい。
 また彼女の編入からさして間を置かずスーパーガールズの再構成が実施されたのもちょっと不自然だ。
 その結果、ステラが脱落したのも勘ぐろうと思えばいくらでも勘ぐれるが、脱落の原因はダンスの失敗と言われている(詳細は不明)。
 当時ステラはスーパーガールズの中心メンバーだったはずで、スンギュの代わりに落とすとなれば他にももっと候補がいたはず。
 また一度落ちたイ・ファニは入れるなどしてるので、実際にステラのパフォーマンスが良くなかった可能性は高い。
 いずれにしろ、SM初の少女グループデビューに向けて、いろいろ迷走していた時期と思われる。


※イ・スマンの『幸福』…
     『幸福(ヘンボク)』
    フォークって言われてるけど、こうして聞くと完全にトロット


※ホ・チャンミ…1992年4月6日生。この選考時グループのマンネであった。
 少女時代としてデビューしていないので、最終選考でカットされたのは間違いない。
 その後事務所を移籍したようで、2010年9月にコアコンテンツから男子6人女子4人の大型混成グループ”男女共学”の”星灯りのチャンミ”としてビューした。
 しかし、運の悪いことに”男女共学”は未成年メンバーの飲酒スキャンダルですぐに活動を休止した(涙)。
     スーパーガールズ時代のホ・チャンミ