第49話 少女と軍隊(中篇)

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ナレーション「兵隊さんにも昼が来る! …あんにょん、中井貴一です。
  今回の『ミリメシ』は京畿道抱川市二東面にある陸軍第8師団捜索大隊にお邪魔していまーす。
  こちらがお便りをくれたノ少尉ですね?」
ノ少尉「ああ、テレビ取材ですか? 今はそれどころではないのであります」
ナレーション「はて、どういうことなんでしょ?」
ノ少尉「国民的アイドルグループの少女時代様が、今我が大隊を訪問されているのであります!」
ナレーション「え? あの少女時代が?」
ノ少尉「様をつけるように」
ナレーション「あ、はいはい。判ります、天上人ですもんね。私も入隊中は松本伊代ちゃんに”様”つけてましたよ。
  それで、少女時代”様”はどちらに?」
ノ少尉「あちらであります!」
ナレーション「どれどれ、ちょいと覗いてみますか」
ノ少尉「現在お食事中でありますので、お邪魔にならないよう、長玉(望遠レンズ)でお願いしたいのであります」
ナレーション「はーい、かしこまりましたよっと。それではFUJINONのレンズを22倍(エクステンダー付き)に交換して、と(ごそごそ)。
  さっそく少女時代様のランチ風景、覗かせていただきましょう」
…もんぎゅ、もんぎゅ、もんぎゅ、もんぎゅ
ナレーション「な、なんじゃ、あれはーーー!」


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ユナ「ポッポ屋〜、ポッポ屋でございます〜」
兵士「あ、あのー」
ユナ「へい、いらっしゃい!」
兵士「さっきから、おっしゃってる刺激的な内容は、本当のことでありますか?」
ユナ「本当ですとも」
ティパニ「ウチら、国防の雄を相手に詐欺働くほど非国民やありませんで」
兵士「ティパニ様とジェシカ様は美国人なのでは?」
ジェシカ「そ、それはそうですが、韓国と美国は同盟国。北方の共産主義を憎む気持ちは一緒ですわ」
ティパニ「納得いかれまして?(ふうっ)」
兵士「ひーっ、耳に息が…!(どきどき)」
ユナ「あら、もう漏らしそうな顔なさって、もったいない。せっかくならウチらポッポ屋のサービスで昇天して欲しいわぁ」
兵士「と、当然であります。少女時代様のサービスを受けれるなら、国境の地雷原にも飛び込むのであります」
ティパニ「それは感心感心。安心して韓国に住んでられます。では、手始めに通帳と印鑑を持って来てくださいね」
兵士「つ、通帳と印鑑でありますか?」
ティパニ「ええ、月給単位でないと支払えませんからね。そしてこちらがサービスのメニューになってます(ぴら)」
兵士「ぴゃーっ! こ、これは…!」


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テヨン「お、また銃を拾うたぞ」
小隊長「それは落とし物ではありません。三脚に立ててあるだけです」
テヨン「これはなん?」
ソヒョン「M60機関銃やね。ベトナム戦争でよお使われたらしい」
テヨン「へー」
小隊長「失礼ながら、テヨン様はあまり人の話を聞くのがお得意じゃないようですな」
テヨン「とりあえず、試射してみよう(カチ)」
小隊長「わ、もう安全装置を…。全員退避ーっ!」
ドドドドドド! ドドドドドド!
兵隊「うひゃーっ!」
兵隊「くわばらくわばら」
テヨン「わははは、さっきのK1とは全然音が違うぞ」
ソヒョン「それはもお。7.62x51mm NATO弾やからな。音だけやなく、威力もダンチや」
ドドドドドド! ドドドドドド!
テヨン「うーん、カ・イ・カ・ン…」


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ナレーション「再び中井貴一でーす。
  ランチを食べる少女時代の周りには大量の食器が。一体何個小隊がここで少女時代と共にミリメシを食べたんでしょ?」
ノ少尉「いえ、少女時代様だけ、正確にはスヨン様だけであります」
ナレーション「ホントですか? 象が食べる量ですよ」
ノ少尉「スヨン様なら象だってひと飲み出来ると思うであります」
ナレーション「ぴゃー」
まんぎゅ、まんぎゅ…ごっくん
スヨン「あー、おいちかった。宮崎料理もええけど、やっぱりご飯にはキムチやね」
炊事兵「恐れいります」
ユリ「だからって甕ごと喰うなよ」
スヨン「このキムチも配給品ですか?」
炊事兵「いえ。我が隊が誇るキムチ名人のユ上士が漬けた自慢の一品であります」
スヨン「へー。最高の手の味、最高のミリメシやわぁ」
炊事兵「ありがたきお言葉であります」
スヨン「そんな訳でご飯とキムチ、おかわりください」
ソニ「(こけっ)まだ食うのかよ」
炊事兵「残念ながら、先ほどお出ししたのが最後になります」
ヒョヨン「うひゃー、部隊中のメシ食いやがったぜ、こいつ」
ユリ「さすが、少女時代のジャイアント白田」
スヨン「仕方ありませんね。ほんなら備蓄してある戦闘糧食でも味見しますか」
全員「はいぃぃ?」


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わいわい、がやがや
ティパニ「さぁ、みなさん、メニューをよくご覧になって。
  安い順から”ユナの見つめてあげる”、”ティパニのアメリカンハグ”、”ジェシカのカニばさみポッポ”となっていま〜す」
兵士「ユ、ユナ様の”見つめてあげる”とは、ど、どんなサービスなんでありますか?(どきどき)」
ユナ「それはね(うふふ)。あなたの恥ずかしいところを、さも汚い物であるかのように見てあげるサービスなんですよ」
ジェシカ「実際きったないしね」
兵士「ぴゃ〜っ! それはたまらんであります」
ティパニ「さぁ、M体質の兵隊さん向きなこのサービスは、新兵さんの給料ひと月分。ウチのアメリカンなハグは給料3ヶ月分。シカの濃厚なカニばさみポッポでさえ半年分の給料ですよ」
ユナ「これはお買い得(笑)」
ジェシカ「ご希望の方は、まずこっちで性病の検査を受けてくださいねー」
兵士「すげー、オレ、全部やって貰おうっと」
兵士「そうやな。全部で給料10ヶ月分なら安いモンや」
わいわい、がやがや…


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ナレーション「またまた中井貴一でーす。
  ROK ARMY Ration…韓国軍個人用戦闘糧食には1型と2型がありまして、前者がレトルト式、後者がフリーズドライ式となっています。
  私も軍隊時代にはよくいただきましたが、けっこう美味しいんですよ、これ。
  やっぱりご飯が美味しくないと戦争には勝てませんからね。
  てな訳で、スヨンさんが食べているのは1型レーションのようです」
スヨン「おお、美味そう。しかも温かい(もみもみ)」
ノ少尉「美国軍のMREを参考に、3年ほど前から発熱剤を入れております」
ソニ「冬は寒いから助かるわねぇ」
ノ少尉「RARのメニューは食べやすいピビンパがメインであります。現在4種類用意されております」
スヨン「これは?」
ノ少尉「それはチャジャン飯であります。兵には人気のメニューであります」
炊事兵「白菜キムチは(パクン)このように缶詰もございます」
スヨン「おお、これは素晴らしい、さすが我が国のソウルフード
ノ少尉「イラク軍のモットーが”我々はナンとカラシニコフがあればいつまででも戦える”であるとすれば、我が軍のモットーは”キムチとK2小銃があればいつまででも戦える”と言うことになるでしょう」
スヨン「なるほど…おかわりください」
ノ少尉「(ずるっ)」
ソニ「もんぎゅもんぎゅのヒマさえなしに完食かい!」
ヒョヨン「せめて少尉の自慢くらい聞いてやれよ(涙)」


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テヨン「この部隊にある武器は、携帯出来るものばっかなんでっか?」
小隊長「(ぎく)そ、そうです、我々は捜索部隊ですから、あまり強力な武器は…」
テヨン「そやけど威力偵察とかもするんやおまへんの?」
ソヒョン「うん。その辺りの訓練はしてそうやな」
テヨン「てことは、戦闘車両とかM72 LAWとか隠してあったりして」
小隊長「ありまへんて、そんなん」
ソヒョン「(くんくん)なんかこっちから大型兵器の匂いがするぞ」
ふらふら〜
小隊長「ちょっとぉ、勝手に歩き回らないでくださいよお」


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ティパニ「うひゃひゃひゃ、だいぶん儲かったなぁ」
ジェシカ「次の方〜」
とことこ
若い兵士「あ、あの〜」
ユナ「はぁい(ニッコリ)、坊やはどのコースがお好みかしら?」
若い兵士「「い、いえ、ボクは先輩に無理矢理連れて来られただけで」
ユナ「うふふ。初めての人はみんなそうゆうのよ。大丈夫、一回経験すれば平気になるから。さ、恥ずかしがらずに言ってみて」
若い兵士「いえ、ホンマにいいんです。ボク、小倉優子の方が好きやから」
ユナ「ちっ、冷やかしかよ(手のひら返し)。それにしても、小倉優子とは世間知らずも甚だしい」
ジェシカ「そやで。あんな女はなぁ、いずれ焼き肉屋の経営でミソつけて、キャラ崩壊して、地味に結婚して子供産むのがオチなんだよ」
若い兵士「そ、そんなことないモン。優子ちゃんは世界一清純やモン」
ユナ「うひゃひゃひゃ。清純な女なんか、この世にひとりもいないんだよ」
ジェシカ「言い切ったで(呆)」
ティパニ「顔、顔。怖すぎや」
ユナ「おっと、こりゃ失礼」
若い兵士「ひゃー(がたがた)、悪魔を見た」
ユナ「それは言い過ぎやろ」
ジェシカ「次の方〜」
若い兵士「あのー、どうせ恥ずかしいところを見てくれるなら、夏目三久みたいな女(ひと)がいいんですけど」
ユナ「帰れ、ボケッ!」
ジェシカ「次の方〜」
つかつかつか
ごつい兵士「ちょっと、あんたら。アタシのシマで、なに商売してんのよ。この部隊の男はみんなアタシのものだからね!」
ティパニ「わーっ、オカマや」
ジェシカ「商売敵や!」
ユナ「逃げろっ!」
しばばばば


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ノ少尉「こちらが2型の糧食であります」
スヨン「野菜ピビンパですね」
ノ少尉「そうであります。乾燥米の袋に粉末スープとかやく(乾燥野菜)を入れ、お湯か水を注ぐだけで出来上がりであります」
じょろろろろ
スヨン「出来上がりまでどのくらい?」
ノ少尉「お湯で10分、水なら40分であります」
ユリ「わぁ、しもた! 水を入れてもうた」
ヒョヨン「アホやな。40分も待てへんぞ」
スヨン「いや、待とう」
全員「(こけっ)待つんかい!」
ソニ「食いモンに対する恐るべき執念やな」
スヨン「待ってる間に、噂の特殊部隊用レーションを味見しようかな」
ノ少尉「ひー、もう勘弁して欲しいであります!」


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案内兵「そ、そっちに行っては危ないであります!」
ソヒョン「うふふふ。確かに、危ない匂いがプンプンするで。この扉の中からな」
テヨン「わ、ここだけ、えらい頑丈な扉やな」
ソヒョン「それだけ危険な物がここに眠っているゆうことや。おねえ、蹴破っておしまいなさい!」
テヨン「はい、ソヒョン様…て、なんでウチが自分の手下やねん」
ソヒョン「細かいことはどおでもええヤン。この中にはおねえがまだ見たこともない最新兵器が眠っているとみた!」
テヨン「おお、それは高まる〜。ほな、開けてみよう(蹴り)」
どっかーーーーーん!
案内兵「うわー、あきまへんてー!」
テヨン「(ごほごほ)もうもうとしたガスが…。って、なんじゃここは!?」
ソヒョン「うふふふ、やっぱりここにあったのね。大量殺戮兵器が!」
案内兵「ひー、見つかったぁ。世の破滅やーーー」


ナレーション「テヨンとソヒョンが基地の奥深くから、大量殺戮兵器を掘り出していた、まさにその頃」
もんぎゅ、もんぎゅ…
ナレーション「スヨンは特殊部隊用レーションのキャンディバーに舌鼓を打っていた。中井貴一です」
ヒョヨン「もうええから」