第43話 邂逅〜Wonder Girls〜
ソネ「なぁなぁ、今日の『Mカ』、SMの新人グループも一緒に出るって聞いてる?」
イェウン「聞いてる、聞いてる。例の”少女時代”やろ?」
ソンミ「なんでも、ルックスも歌もダンスも完璧な人たちらしいですよ」
ソネ「そんな夢のようなグループある訳ないやろ。SMの宣伝文句や」
ソンミ「でもでも、UCCの紹介動画で見たら確かにみんな可愛かったですよ。ひとりだけアップのない子がいましたけど」
イェウン「ほんなら、そいつはふた目と見られん顔をしとるんやろう。『犬神家の一族』の佐清みたいに」
ソンミ「そんな子がアイドルになろうとしますかね?」
ソネ「せめて『悪魔の手鞠唄』の里子みたいてゆえや」
がちゃ、どやどやどや
ソネ/イェウン/ソンミ「わー、なんやなんや?」
ユリ「おー、ここが楽屋か。狭いなぁ」
ソニ「贅沢ゆうな。Mnetと違って屋根があるだけありがたいと思え」
ティパニ「そやそや。ちゃんと椅子もテーブルもあるしな」
テヨン「ウチらだけ座ってもなぁ。スタッフのみなさんが床に座って弁当食べてるの見たら涙が出てきて…」
ヒョヨン「おっ、もうキャラ作りの練習か? やるなぁ」
テヨン「がははは、プロなら当然や」
わいわい、がやがや
ソネ「あのー、みなさん何故この部屋に?」
スヨン「ん? 先客がおる」
ソニ「あ、こいつらワンダーガールズやん。テレビで見たことあるで」
ユリ「なんだよー。ただでさえ狭いってのに、ワンゴルと相部屋かよ(ちっ)」
ソンミ「え、えーと、一体なにをおっしゃってるのか、よく聞き取れないんですけど」
ティパニ「がうーっ!」
ソンミ「ひーっ、怖い」
ソネ「これはあかん。なにが”ルックスも歌もダンスも完璧な人たち”や。話も通じんケダモノやないか」
ジェシカ「ちょっとキム・テヨン。ウチ、ソファでゴロゴロしたいんやけど、ソファはワンゴル側にあって手が出せへんねん。自分、なんとかしてや」
テヨン「はぁ? 何でウチが?」
ヒョヨン「だってリーダーやないか」
テヨン「あーそおゆうたらそうやったな(ちぇっ)。そやけど、奴らを力尽くで排除してもええものかどうか」
ティパニ「そーやなー。ゆうても連中の方が先輩やし」
ソニ「芸能界で先輩に礼儀正しくしとかんとネチズンがうるさいゆう話もあるし」
スヨン「ここはひとつ下手に出て、お願いしてみたらどうやろう」
テヨン「ソファ使わしてくださいてか? ウチのキャラやないわ」
ソヒョン「いや、その前に部屋割りについての話し合いや。その方が重要やって」
スヨン「どうゆうことだよ?」
ソヒョン「つまり、この狭い楽屋を半分ずつ使うのかどうか」
ユナ「そんなんしたら、えらい人口密度に格差が出来るやんけ」
ヒョヨン「こっち9人のあっちは3人やからなぁ」
ソヒョン「そやねん。人数で割るなら3:1で使うのが正解やけど、先輩グループにそう申し込むのはアリなんかナシなんか」
少女時代「うーむ、難しいなぁ…」
ソネ「なんか考え込んでるぞ」
イェウン「芸能生活に場慣れしてへんから、いきなり相部屋になって困惑しとるんやろう」
ソネ「確かに。今まで全部腕力で問題を解決してきたよって文化的な解決法なんか知らん、ゆう顔してるぞ」
ソンミ「なんか人里に連れてこられた猿みたいですね」
ソネ「このままでは楽屋で休むどころか、緊張感で疲弊してしまう。こっちからモノリスを投入しよう。
あのー、とりあえず新人同士挨拶をしませんか? ウチらJYPEのワンダーガールズと申します(ペコリン)」
少女時代「…!(ウピーッ)」
テヨン「ウキャ、ウキャキャキャキャ」
ジェシカ「ウッキー?」
ティパニ「ウキャキョキャキョ」
テヨン「キャポーキャポー!」
ソネ「おお、なんか合議してるで」
イェウン「挨拶するかどうかで揉めとるんやろう」
ソンミ「あの姿見てたらとてもアイドルとは思えませんね」
イェウン「バナナ投げてみようか(ポイ)」
スヨン「ピャーッ! ポポナ、ポポナ、ウキャ(もんぎゅもんぎゅ)」
ソンミ「食った食った(笑)」
ソネ「意外に簡単に餌付けできるかも」
イェウン「食いモンがある内はええけど、それがのうなったらウチらが食われるかも知れんぞ」
ソンミ「確かに肉食の可能性もありますね(ぶるぶる)」
ソネ「SMEめ、恐ろしいモンを世に放ちやがったな」
がちゃ
クッキーマン「あー、ここにおったか。自分ら、楽屋間違えてるで」
少女時代「ウキャキャ?」
ソンミ「おっ、猛獣使いの登場や」
クッキーマン「自分らの楽屋は向かいや。そやからお箸持つ方て何度もゆうたやないか。さ、移動移動。ワンゴルさんに迷惑かけるなや」
少女時代「ウキャキャキャキャ」
ぞろぞろぞろ
クッキーマン「えへへ、えろう驚かせてすいまへん」
ソンミ「い、いえ」
クッキーマン「まだ先週デビューしたばかりで右も左もわからへんよって勘弁してつかぁさい。
ぼちぼち仕込んでいきますから」
イェウン「同情します」
クッキーマン「あはは。でもああ見えて舞台に上がったらそれなりの芸を披露しますんで。
それではお邪魔しました」
ばたん
ソネ「…うーむ、なんだったんだ、今の騒ぎは?」
イェウン「確実なのは少女時代と一切会話が成立しなかったゆうことやな」
ソンミ「少女時代とかゆうて実は野生時代やったゆうシャレでは?」
ソネ「つまんね」
イェウン「せめてこっちに向けてなにか話して欲しかったよなぁ。”Tell me”やでホンマ」
ナレーション:ワンダーガールズの代表曲『Tell me』が社会現象を巻き起こすのは、この2ヶ月後であっった。
※ワンダーガールズ…初期少女時代の最大のライバル”ワンダーガールズ”は2007年2月10日デビューで少女時代より半年ほど先輩に当たる。
ローンチメンバーはソネ、イェウン、ソンミ、ヒョナ、ソヒの5人。
が少女時代がデビューした時期、ソヒはバイク事故で戦線離脱、ヒョナは7月いっぱいを持って健康を理由に脱退しており、3人での活動が続いていた。
ヒョナは2009年にキューブエンターテイメントに移籍し、4Minuteおよびトラブルメイカーで大活躍している。
ちなみにソンミはテヨンの熱烈なファンとして知られている。いずれその話も書かねばなるまい。
※『犬神家の一族』の佐清…横溝正史原作の小説および映画の登場人物で、主人公(と言うか狂言回しの)金田一耕助を除けばおそらくもっとも有名な人物。スケキヨと読む。
白いゴム製のマスクの下に焼けただれた顔がインパクト満点だが、実際にはこの人物は佐清ではない。本物の方は印象が薄い。
※『悪魔の手鞠唄』の里子…青沼里子。こちらも横溝正史の金田一シリーズに登場する。顔自体は美しいがその左半分に真っ赤なアザがある。
※「スタッフのみなさんが床に座って弁当食べてるの見たら涙が出てきて」…デビュー間もない頃の感想を聞かれてテヨンがそう語ったことがある。