第42話 2007年8月5日

午後1時半
AD「(ふらふらふら)か、監督、出来ました」
監督「む、例の『人気歌謡ルーキーズ』のコーナーか?」
AD「ワ、ワシの持てる力すべてを注いで、編集を仕上げました(ぶるぶる)」
監督「うむ、この時間ならまだオンエアに間に合うで。よおやった。早く帰って休めや」
プロデューサー「どないしたんや。こいつ、真っ青でガタガタ震えてるやんけ」
監督「へえ。三日前の収録が終わってから、まるで毒でも飲まされたように体調を崩したんですが、新人の少女時代のコーナーだけは自分で編集するゆうて、今まで泊まり込みで」
プロデューサー「わぁ、あかんがな。早く病院に連れて行かんと。
  …てか、ルーキーズのコーナーなんかスイッチング収録してるんやし、別に編集いらんやろ?」
AD「そ、それではあかんのです!(ぶるぶる)
  あの子たち少女時代は、人数が多い上に、髪型が似すぎて、初めて見る人には誰が誰やらわかりません。
  編集でひとりひとりの名前をつけてあげなくては。そして、一日でも早くあの子らがお茶の間に浸透するように、スタッフのボクらが努力しなくては」
プロデューサー「えらいリキ入っとるなぁ。ポッと出の新人なんかに、なんでそこまで肩入れするねん?」
AD「だ、だって、彼女らは韓国歌謡界の至宝…ですから…(ズルズル、バタン)」
監督「わーっ、おい、しっかりしろ!」
ピーポーピーポー


午後3時20分
スヨン「おーい、『人気歌謡』が始まるぞーい!」
少女時代「わー、待ってました(わらわら)」
MC「さぁ始まりました。8月最初の『人気歌謡』…」
テヨン「挨拶なんかどうでもええんじゃ、さっさとウチらを出せ!(バンバン)」
ソニ「テレビを叩くな」
MC「まずは韓国歌謡界の至宝テ・ジナ先生の歌からお聴きいただきましょう」
ユナ「ひっこめ、ジジィ(ぶーぶー)」
ヒョヨン「このじいちゃん、KARAのペンらしいで。KARAのためならなんでもするて公言しとるらしい」
ティパニ「KARAゆうたら春にデビューした4人組の?」
ジェシカ「あのブスどもか?」
ユリ「あんな奴らのペンなんて、ろくな年寄りやないなぁ。KARAなんてすぐ分裂騒ぎ起こしそうやから、ペンになっても苦労するだけやで」

MC「続いては本日のスペシャルコーナー。あの有名アイドルをゲストにお迎えしてお送りします」
ジェシカ「(ごく)いよいよか?」
ソニ「ウチら有名アイドルやったけ?」
テヨン「狎鴎亭ではな(悪い意味で)」
MC「ゲストはこの方、ユン・ウネさんです!」
少女時代「(がくん)元アイドルやんか」
ティパニ「うーむ。今放送中の『コーヒープリンス1号店』で一躍時の人やからなぁ」
ユリ「だからって、とっくに歌手やめた人をゲストに呼ばんでもええやないか」
ユナ「失礼なことゆうな。ウネさんはウチの目標やぞ」
ユリ「(がく)なんでやねん」
ソヒョン「どうせ、将来アイドル歌手から女優への転身を狙っとるんやろう」
ヒョヨン「(けっ)まだデビューもせんうちから気の早いこった」
ユナ「失礼な。デビューならしたわ…3日前に」
テヨン「アホか。世間的にはまだデビューしてへんぞ。あと何分かはな」
ソニ「ホンマやな。ああ、早くウチら映らへんかな」

MC「それでは『人気歌謡ルーキーズ』のコーナーです」
少女時代「わぁ、待ってました!(拍手)」
MC「これまでS.E.S、MILK、天井智喜を送り出してきたSMエンタテインメントがお届けする大型女子高生グループ、少女時代です!」


    


少女時代「わぁー…」
ジェシカ「こんな風に映るんやなぁ」
スヨン「なかなか上手いこと撮れてるやん」
ユリ「ひとりひとりに名前が載ってる(感動)」
ジェシカ「なんかソロの時にラインで装飾してあるし」
スヨン「ウチ、このあと奥の方でこっそり洟ぬぐったんやけど、バレてないやろな」
ヒョヨン「デビューステージで洟かむなよな」
スヨン「…ああ、よかった、バレてなかったわ」
ティパニ「さすがプロやな。丁寧な仕事ぶりや」
ソニ「あの朝のADの態度からして、ロクな扱いやないと思うたんやけどな」
ソヒョン「うーむ、奴の紙コップに毒混ぜたりして悪いコトしたな。まだ生きてればええけど」
ナレーション「こうしてついに少女時代は世に出たのだった。不幸なADの行方は誰も知らない…」







※2007年8月当時の『人気歌謡』は午後3時20分から始まっていた。
 この回にユン・ウネが出た訳ではないが、時代性を表すためにこうした。
 当時はユン・ウネ主演のドラマ『コーヒープリンス1号店』(MBC)が放送中で、大変なブームになっていたのである。