第40話 デビュー前夜

午前1時半
ごそごそ、むくっ
ジェシカ「ね、眠れん」
ヒョヨン「(もぞもぞ)なんや、自分もかいな」
ジェシカ「うん。羊3000匹くらい数えたんやけどな」
ヒョヨン「そうか。まぁ無理もないな。いよいよ明日やからなぁ」
ジェシカ「次寝て起きたら、ウチらはもおお気楽な練習生やない。結果ですべてが判断されるプロになっとるんやから」
ヒョヨン「ううー、またドキドキしてきた。台所行って水でも飲んで来よ」
ジェシカ「ウ、ウチも行こっと」
ぱたん、キー…
(もんぎゅもんぎゅ)
ヒョヨン「わ、台所で気配が! 誰かおる!」
ジェシカ「ひぃっ、なに? お化け?」
ヒョヨン「ちょ、ちょっと。しがみつかんといてよ。とにかく電気を…」
ぱちっ…ピカ
スヨン「(もんぎゅ)…わぁ、ビックリした!」
ヒョヨン「な、なんやスヨンかいな」
ジェシカ「ほっ…(へなへな)」
スヨン「こんな夜中になにしとるねん?」
ヒョヨン「それはこっちの台詞や。真っ暗な台所でなにしてけつかる?」
スヨン「いやー、眠れへんから夜食でも思うて」
ジェシカ「そんで辛ラーメン鍋いっぱいつくってドカ食いかい? 気が小さいんやか鈍いんやか、さっぱりわからんわ」
スヨン「えー、どう見たって繊細やろう(もんぎゅもんぎゅ)」
ヒョヨン「夜中にそんな食うたら肌が荒れるで」
スヨン「大丈夫やて。毎日のことやもん」
ジェシカ「自分、芸能人ゆう自覚あるんか?」
スヨン「ワイルドだろ〜ぉ?」
ヒョヨン「とにかくこんな夜更かししてたらいずれにしろ肌が荒れる。明日のデビューはハイヴィジョン放送やゆうのに」
ジェシカ「念のためパックでもするか?」
ヒョヨン「グッドアイデアや。パックして寝ようっと」
タントントントン…
ジェシカ「ちょ、ちょっと、自分なにやっとるん?」
ヒョヨン「なにて、パックゆうたらキュウリやろう? 今自分の分もスライスしてやるからな」
ジェシカ「(ひー)そんなパックしたら死んでしまうがな。もっとちゃんとした乳液とかシートとか持ってないんかい?」
ヒョヨン「そんな銭がある訳ないやん。キュウリがあかんのならなんか工夫せい。それが貧乏人の生き方やで」
ジェシカ「うーん…ほんならとりあえずコチュジャンでも当ててみるか。一番クリームっぽいし」
ヒョヨン「どんなパックやねん。顔面腫れ上がるで」
スヨン「ワイルドやなぁ」
がやがやがや
テヨン「なんや、なんや、夜中にうるさいなぁ」
ユナ「ちっとも眠れへんやんか」
スヨン「わ、みんな起きて来た」
ヒョヨン「やっぱり寝てられへんのやなぁ」
ユリ「もお、ドキドキして眼が冴え渡る一方やわ」
ジェシカ「ウチらもやねん。そやからいっそパックしよかゆう話ししててん」
ソニ「パック? はぁそれでキュウリ切ってたんか」
ヒョヨン「自分もいるなら使うてええで」
ソニ「いやー、青臭いのはちょっと遠慮しとくわ。冷蔵庫の中にトマトも入ってたやろ? それでやってみるわ」
ヒョヨン「ウキーッ、トマトかて青臭いやないか。だいたい新入りのくせに古参のウチを拒否するとは生意気な。デビュー後、折に触れていぢめてやるからな」
ソヒョン「やめえ、大人げない」
ティパニ「ウチはキュウリもトマトも嫌やな。冷蔵庫の中、他に何か入ってない?」
ジェシカ「カンジャンケジャンとかあるで」
ティパニ「あらおいしそう…って、どこの世界にカニの醤油漬けで顔面パックするアイドルがおるか!」
スヨン「お、カンジャンケジャンいらんの? ならウチが食うで(涎)」
ティパニ「食いモンの話やないわ!」
ユリ「いや、食いモンの話やろう」
ジェシカ「もう訳わからん」
テヨン「アホばっかりやな」
ユナ「あ、テヨンねえにはピッタリのパッククリームがあったで。ウチが塗ってあげるわ」
テヨン「なんや、その茶色い物体は?」
ユナ「ピーナッツバター」
テヨン「…コロスぞ、貴様(ピキ)」
ソヒョン「おお、眼が攻撃色で真っ赤に…」
テヨン「寝不足で赤いんじゃ、ボケ」
(カチ)ボーンボーン
ヒョヨン「わー、もう2時やんか」
ジェシカ「仕方ない、みんな手につかんだもので適当にパック済ませて寝るんや」
ソニ「なんか闇鍋みたいやなぁ」
ソヒョン「これが後に伝説となる少女時代闇パック事件やった」
ティパニ「そんな伝説出来てたまるか」


午前7時
ごそごそ…
ユナ「う、う〜ん」
テヨン「おう、おはよう。ちっとは眠れたか?」
ユナ「まぁ何時間かは。おねえは一晩中起きてたみたいやな」
テヨン「いや、ウチかて多少は寝たで」
ユナ「うそーん、ずーっと挨拶の練習してたんやん。”あにょはせよ、少女時代で〜す!”ゆうて」
テヨン「…はて、記憶にないけどな」
ユナ「ひえー、寝言やったんかい。そら豪快な」
もぞもぞ
スヨン「んん〜、おはやう。腹減ったな」
ユナ「デビューの朝やってのに、他にゆうことないんかい(呆)」
テヨン「まぁかえって妙な緊張されるよりええ。混む前にさっさと顔洗ってきぃ」
スヨン「うん。…(ぺた)あれ、変やな?」
ユナ「どないした?」
スヨン「顔が腫れてる気がする」
ユナ「はぁ?」
スヨン「イヌ肉パックなんかしたからかな? いつもの倍ぐらい顔がデカなってる(ひえー)」
テヨン「一緒一緒。自分の顔はもともとデカいんや。いまさらオロオロすんなよ」
スヨン「いや、ウチはもっと小顔やったはずや」
ユナ「わはぁ、なんだかんだ、緊張してはるわ(笑)」
テヨン「デビュー後の持ちギャグにしようとしてるだけちゃうか?」
スヨン「あか〜ん、顔がデカなった〜(泣)」