第30話 ヒョシカ裁判

ソヒョン「(コツコツ)それではジェシカとヒョヨンの大喧嘩事件、第一回公判を始めます。
  まず冒頭手続きとして人定質問を行います」
ティパニ「そこまで本格的にやるん?」
ユリ「どうせふたりとも死刑になるんやから、わかりきったことはさっさとすまそうや」
ジェシカ「どうせ死刑やと(ぴく)」
スヨン「その通り。自分らは『少女、学校へ行く』のカメラが回っとるところで殴り合いの大喧嘩を始め、その一部始終を録画されてしもうた。
  これはデビューを目前に控えたウチらにとって大きなマイナスイメージになりかねん」
ユナ「そこでデビュー前にふたりとも切ってしまうのが妥当やと思う」
ヒョヨン「だからって、なんで死刑やねん?」
ユナ「もおUCCでメンボ発表しちゃってるからな。事故で急死ゆうのが一番筋の通る理由や」
ジェシカ「筋が通ってるか?」
ソヒョン「(コンコン)静粛に。
  まぁええでしょう。被告人ふたりの起訴内容はおおまかにスヨンとユナの検察官がゆうた通りなので、冒頭手続きはあらかた飛ばします。
  次に罪状認否ですが、ふたりは今の起訴内容を認めますか?」
ジェシカ「まぁ喧嘩したのは確かやけど…」
ソヒョン「認めるんですね?」
ジェシカ「そやけど悪いのはウチやない。稽古サボったヒョヨンがあかんねん。ウチはそれを注意しただけや」
ヒョヨン「ほー、えらい毒の籠もった注意やったなぁ。ウチにはあの時、よんどころない事情があったんや」
ソヒョン「(カンカン)静粛に! ふたりとも罪状は認めたと」
ティパニ「はーい(書き書き)」
ソニ「(さっ)裁判長!」
ソヒョン「はい、弁護人」
ソニ「事件の前後、被告人ヒョヨンは精神喪失状態にあり、責任を追求出来る立場にはありませんでした」
テヨン「嘘つけや」
ソニ「嘘てなんやねん? これが証拠や(バーン!)」
テヨン「む? 壊れた便器の写真?」
ソニ「裁判長、この写真を証拠として提出します」
ソヒョン「ではこのまま弁論に移ります。詳しく説明してください」
ソニ「あの日被告人たちは『スクール・オブ・楽』で発表する曲の振り付けを練習していました。
  いっときしてヒョヨンがトイレに行くと言って席を外し、しばらく稽古場に戻って来ませんでした」
ジェシカ「そうやで。ユナたちがえらい探したけど見つからへんかった」
ユナ「事務所中探したけどな」
ジェシカ「そやから、30分以上たってのうのうと戻ってきた時に、怒鳴りつけたんや」
スヨン「それはもお放送コードに引っかかるほどの口汚さでした」
ソニ「ですが、そのときすでにヒョヨンは心神喪失状態にあったのです。
  ヒョヨン、あなたは稽古場を出てから何処に行きましたか?」
ヒョヨン「えーと、めっちゃおなかが痛くなったんでギャラリアデパートのトイレに駆け込んで、速攻でババしました」
ソヒョン「なぜ事務所やなくギャラリアデパートへ?」
ヒョヨン「そのときは4〜5日便意がなく、もしババしたら、事務所ビルが臭いで汚染される思うたんです」
ティパニ「だいたいみんなババの時は、ギャラリア行くよな」
ソニ「で、ババしたんですか?」
テヨン「法廷で弁護士がババとかゆうなよ」
ヒョヨン「へえ。便意が来たのはチャンスやから、長い時間エライいきんでやっと出したんやけど、ケツが裂けたかと思いましたわ」
テヨン「(ケッ)ケツは普通割れとるがな」
ソヒョン「ジェシカ側の弁護人は許可を得て発言するように」
ソニ「その時、とんでもない硬さの物が、とんでもない量、とんでもない勢いで出て、便器を粉々に割ってしまったのは覚えてますか?」
ヒョヨン「いやー、あまりにいきんだのと、ケツの痛みで、よお覚えてまへん」
ソニ「そうでしょう、そうでしょう。あなたはボーっとした状態のまま稽古場へ戻り、ジェシカにいわれないことで罵倒され喧嘩に発展したと」
ヒョヨン「実をゆうと喧嘩したのもよお覚えてまへんのや」
テヨン「裁判長、先ほど被告は”えらい毒の籠もった注意やった”ゆうてます。つまり記憶があったゆうことです」
ヒョヨン「うっ…」
ソヒョン「なるほど」
ソニ「(チッ)そりゃ一部くらい覚えていることはあるでしょう。ですが全体としてみれば心神喪失と言って過言ではありません。
  これをご覧ください(どっこん)」
ソヒョン「それは?」
ソニ「現場から採取してきたヒョヨンのババです」
ユナ「わー、きったねえ」
ソニ「ビニール袋で密閉しとるから大丈夫や。これも証拠として提出します」
ヒョヨン「そんなもん、提出すんなよ。恥ずかしいなぁ」
ティパニ「ヒョヨンのババ、17,4kgと(書き書き)」
テヨン「だいたいそれ、人のババなんか? どうみても象のフンやぞ」
ソニ「科捜研によるDNA鑑定結果もありますよ」
テヨン「裁判長、ババと心神喪失との間に明確なつながりはありません。すべてヒョヨン側弁護人の憶測であります」
ソヒョン「まぁ確かに」
ソニ「裁判長、これだけの量を一度に出した者の心境をお考えください。果たして正常でいられるでしょうか?」
スヨン「ウチは毎回それぐらいやけどな」
ユナ「わはは、さすが食神」
ソニ「(ズル)…宿所のトイレがときどき詰まるのは奴のせいか」
テヨン「やった。敵はヒョヨンのババゆう恥ずかしい証拠出してきても決定打に出来へんかった。勝機は十分あるで」
ジェシカ「そやな。頼んだで」
ソヒョン「続いてジェシカ側弁護人、どうぞ」
テヨン「はい。ジェシカはヒョヨンが長時間振り付け練習をサボったので、文句を言いました。これは当然のことです。
  にもかかわらず、ヒョヨンは反省の色なく挑発的な態度を取り、その結果ジェシカをさらに怒らせました。
  心神喪失どころか、計算された悪意ある行動です」
ソニ「(さっ)意義あり! 挑発的な態度というのはジェシカ側の一方的な解釈です」
テヨン「それではこのVTRを証拠として提出します。Mnetのカメラによる撮影で、事件の瞬間が収録されています」
ティパニ「Mnetの安物カメラによる現場VTRと(書き書き)」
PD「安物カメラは余計やろ」
ソヒョン「(カツカツ)そこ! 傍聴人は私語を慎むように」
PD「…すんまへん(むかむか)」
テヨン「このVTRでは…ヒョヨンがトイレから帰って来て、皆に謝ろうともしなかったため、ジェシカがカチンときています。
  その気配を感じたヒョヨンは、あろうことか部屋の一番右奥に進みます」
    
ソヒョン「なるほど」
テヨン「その結果…ここです。ここをよくご覧ください」
全員「ああっ!」
    
テヨン「そうです。ジェシカはヒョヨンに怒るために、カメラに対して右顔を曝さざるを得なくなったのです!」
全員「ざわざわ…これは悪質や」
テヨン「ご存知の通り、ジェシカの右顔を曝すというのは、Gに対して背後に立つのと同じこと。無条件で攻撃されても仕方ないのです。
  それはメンボ全員が知っています。にもかかわらず、ヒョヨンはあえてそうした行動をとった。
  ジェシカに攻撃させることで、自分が馬鹿でかいババで便器を割った事実をうやむやにしようとしたのです!」  
ソニ「意義あり! 右顔をカメラに撮られた位で他人を攻撃するなんて性格、常軌を逸しています」
テヨン「その通り。一種の病気です。そやからジェシカに社会的責任を追求しても無駄です」
ソニ「…うぅ」
ジェシカ「…え? どゆこと?」
ティパニ「(ひそひそ)自分はガイキチやから無罪やってゆうとるんや」
ジェシカ「なんやてーっ!」
ソヒョン「(ガンガン)静粛に! 判決を申し渡します」
全員「…(しーん)」
ソヒョン「被告人ヒョヨン、およびジェシカ。両人ともその罪は重大で責任能力もあると結論せざるを得ない。
  よって極刑をもって処する。ふたりとも八丈島キョン…あ、ちがった、死刑!」
全員「(ずる)ボケが昭和すぎるがな」


PD「よし、帰ってすぐ編集や」
AD「はーい。なかなか面白かったっすね」
PD「そやな。奴ら自由にやらせといた方がおもろいんやな」
クッキーマン「ちょっとPD、ご相談があるんですけどね」
PD「なんですねん?」
クッキーマン「今の裁判、『学校へ行く』で使うつもりでっか?」
PD「へえ。シカとヒョヨンが殴りあった後のシーンとして撮影したんやけど」
クッキーマン「いくらなんでも、アイドルでっせ。殴り合いの喧嘩はやばいでしょ。カットしてください」
PD「えー? ほんなら裁判は?」
クッキーマン「巨大ババだのガイキチだの使える訳ないっしょ。全部カットでお願いします。
  ふたりは口喧嘩だけにして、それも勘違いやったってことで、すぐ和解する感じで」
AD「せ、せっかく撮ったのに(がっくり)」
PD「あんた、ウチの作品をやらせ番組にするつもりでっか?」
クッキーマン「もともとやらせ100%の番組やんか! ガタガタゆわずにやれや!」
PD「くっそー、SMEなんか大嫌いや」
ナレーション「こうしてますますSMEとMnetの確執は深まっていくのだった」