第12話 真夏の夜の夢(前編)

ソヨン「まぁそんな訳なんで、晩飯前に稽古をやってしまおう」
ヒョヨン「そうはゆうてもどこで稽古するねん? いくらこの別荘が豪華ゆうても、全員が踊れる程広い部屋はないで」
スヨン「庭でええやろ。芝生も敷いてあるし、足腰の負担になることもない」
ソヒョン「ほなキャンプ用のライト出す?」
ユナ「自分、何でも持ってるなぁ」
ティパニ「ウチは足腰より、灯りに寄ってくる虫が心配や」
ステラ「蛾が口の中に入って来るで、ひっひっひ」
ティパニ「ひー(ゾクゾク)」
ジェシカ「蛾なんぞしょせん元イモムシ。食うたら美味いかも」
ティパニ「き、貴様、まさか普段からイモムシを…(戦慄)」
ジェシカ「アホ、いくら貧乏ゆうても普段から食う訳ないやん。月末の2〜3日だけや」
ヒョヨン「中国行ってみい、虫食材の専門店仰山あるから。ウチのお勧めはクモやけどな」
スヨン「留学先でそんなもんばっかり食うとったんやな」
ヒョヨン「たまには熊も食うたで」
ティパニ「勘弁してやぁ(泣)」
ステラ「虫ぐらいでガタガタと。宮地眞理子を見習いなさい」
ユリ「あの人は前世が恐竜やから特別や」
ソヨン「さぁさ、喋ってばかりおらんと準備しようや」
テヨン「へーい。なぁなぁ、練習曲なんにする? 『南国人魚姫』? それとも『また出会おうた世界』?」
ジェシカ「『また出会おうた世界』でええんやない? 多分それがデビュー曲になるてジョングにいさんゆうとったで」
テヨン「ほなラジカセ準備OK、曲流すから並んで並んで」
ハジン「並び順、どうします?」
スヨン「あーそやなぁ。基本的な振り付けは習うたけど、フォーメーションがどうなるかまでは決まってなかったな」
ソヨン「やっぱリーダーのウチがセンターやないか?」
ハジン「いつからおねえがリーダーになったん?」
ソヨン「年齢的、人格的に」
ティパニ「ウチはアメリカ人やから年功序列ゆう考え方にはなじみまへん」
ジェシカ「同意。新しいグループなんやから旧態依然とした制度に従うのは反対です」
ユナ「百歩譲っておねえがリーダーだとしても、リーダーイコールセンターゆう考え方はいかがなものか?
  ここは実績的にもルックス的にもウチが適任やろ?」
ユリ「自分がセンターなら、自分にそっくりのこの”ニセユナ”ことユリたんがセンターでも問題ないやろう」
ティパニ「自分で”ニセユナ”ゆうなよ、情けない」
スヨン「実績ゆうたらすでにプロデビューの経験があるウチこそセンターでしょう?」
テヨン「あれを実績ゆうんか?」
ジェシカ「失敗の実績やな」
ヒョヨン「やーい、3曲止まり(べろべろ)」
スヨン「なんやとー! それでも3000人ぐらいペンおったんやぞ」
ソヨン「いつまでたっても始まらんやないの(むきー)。もおええからみんな一列に並んで。これなら文句ないやろ」
ユナ「文句はまだいろいろありますが、始まらんのでは仕方ない。1万歩譲って適当に並ぼう」
テヨン「ほないくで(ぽち)」
♪ジャーン
ユナ「(くるくる)はっ、よっ」
ユリ「ささっ(ゴチン!)…いったーい!」
ユナ「痛いのはこっちや。なんで寄ってくるねん」
ジェシカ「(ガチン)もお、ちょっと。前に行きなさいよ、アホ」
ソヒョン「だって前に犬のウン●あったんやもん」
ごちゃごちゃごちゃ
ソヨン「やめー。全然あかんわ。稽古にならへん」
スヨン「この庭も広い思うたけど、さすがに10人並ぶと窮屈やな」
ヒョヨン「(さっ)ほな2班に分けたらどうでしょうか? 1班がダンスの稽古しとる間に、もう1班は歌の練習したらええと思います」
ジェシカ「ナイスアイデアや、さすが中卒は違うな」
ヒョヨン「ウチの留学をなかったことにするんじゃねえ」
テヨン「そんなら班分けのジャンケンするか?」
ユナ「アミダや、アミダくじ作ろう!(うきうき)」
ユリ「くじ作るの面倒や。花いちもんめ方式では?」
ソヨン「そのチーム分けはどうする気やねん?」
テヨン「それこそジャンケンやろう」
ユナ「いやアミダくじやって」
ユリ「花いちもんめのチーム分けのための花いちもんめをやったらどうでしょうか?」
ソヨン「(うきー!)揃いも揃ってアホばっかりか!」
…20分経過。
ソヨン「(はぁはぁ)ほなこういう班分けでやるで」
全員「(ぶつぶつ)納得いかんけど仕方ない」
テヨン「音楽流すで(ぽち)」
♪ジャーン
ユナ「(くるくる)ほっ、よっ」
ジェシカ「さっ、ささっ」
ソヨン「うんうん、これならええ。広々しとる(満足)」
♪伝えたい悲しい時間 すべて散った後から聞こえてくる
 目を閉じて感じてや 揺れる心 ウチの眼差しを ← どへたくそ(笑)
テヨン「(ぶーっ)わはははっ、誰やこの仮歌入れたんは?」
ティパニ「ヨンジョねえさんやないの?」
ソヒョン「これは…酷い」
ティパニ「そやから歌手にならへんかったんやろう」
テヨン「あかん、腹が痛い(笑)。とても歌えんわ(ヒーヒー)」
ソヨン「こらー、真面目にやれや!」


女の子A「あのー、すいまへん」
ソヨン「はい? あれ、あんたは昼間の…」
女の子A「(うわ、またこいつらかよ)隣の別荘のもんですけど、こんな時間に大声で騒いだりライトたいたり音楽流したりするのはご遠慮いただけません?」
テヨン「なんやとこら、チビ。耳から手え突っ込んで…うう(モガモガ)」
スヨン「やめれ、おじいの別荘で揉め事起こすなよ」
テヨン「モガモガ」
ソヨン「どうもすんまへん。ウチらSMエンタの練習生ですねん。デビュー間近なモンやから合宿してまして」
女の子A「(やっぱりSMかよ、最低やな)それなら家の中でやるとか、昼間にやってください。こんな団欒の時間に外で騒ぐのは非常識です」
ソヨン「も、申し訳ない(ぺこぺこ)」


女の子B「連中、なんやて?」
女の子A「デビュー曲の練習してたんやて。やめさせてきたわ」
女の子B「ほなやっぱりチンドン屋やなくてアイドルの卵?」
女の子A「SMエンタやて。まったくおじはんの事務所には碌なタレントがおらんな(けっ)」


全員「(しょぼーん)怒られた」
ソヨン「た、確かに非常識やったな」
ジェシカ「ライトも消せゆうとったし、これじゃ稽古にならんやんか」
ステラ「昼ならええゆうとったで。周りは泳ぎに出とるやろうからな」
ヒョヨン「しゃあない。この続きは明日の昼にするか」
ユナ「ほなこれから花火しよか?」
ステラ「てめえの脳みそは膿んでんのか? 外で騒ぐなゆわれたやろ?」
ユナ「線香花火とか派手な音がせん奴なら大丈夫やって」
ソヒョン「ほたらちょっと待って。浴衣に着替えてくるわ」 ← 火薬大好き
ソヨン「そんなんまで持ってきてたんか…ちゅうかそんな問題ちゃうやろ」
パチパチパチ
ヒョヨン「もお、火つけてるし(呆)」
ユリ「こらえ性のない奴」
ユナ「そやかてせっかく買うて来たんやもん」
パチパチ…
ティパニ「ほわー、でも綺麗やなぁ。ロスで花火ゆうと爆竹かロケット花火みたいなんばっかやったからな」
ユナ「おねえもやる? そこのビニールにまだ仰山入ってるで」
ティパニ「そお? ほなちょっと呼ばれよかな」
ステラ「こらこら」
パチパチ…
ティパニ「うひゃー、チリチリゆうてる。可愛いわぁ」
ソヨン「確かに風情があるな。これくらいなら隣も文句ゆわんやろ」
全員「ならウチもやるー」
ユナ「結局みんなやりたいんやんけ(笑)」
パチパチ…
ソヒョン「あー、火薬の匂いがええわー」
スヨン「綺麗綺麗。キンチョーの夏、日本の夏ゆうてね」
ティパニ「日本ちゃうけどな」
ジェシカ「なんか伊予東高でボート部おったときの合宿を思い出すなぁ」
ヒョヨン「また訳のわからんことを」
ジェシカ「あの頃ウチはリーゆうて呼ばれとったなぁ(しみじみ)」
バヒューッ! ドババババ!
ソヨン「誰やーっ、ドラゴンに火ぃつけたんは?」
テヨン「そやかてもお線香花火のうなったんやもん。まさかこんなに火を噴くとは」
ティパニ「うひゃー、派手やなぁ」
スヨン「これはどんな花火なんかな?(かちっ)」
シュルルルルル、パーン!
ソヨン「ネズミ花火とかやるんじゃねえ!(げし)」
ピュー、パパーン!
ステラ「わーっ! あ、危ねえじゃねーか、ロケットで狙いやがったな」
ユナ「わはははは!」
ステラ「貴様、殺す!(かちっ)ロケット返し!」
ピューン! スパパパパーン!
ユナ「わーい、へたくそ!」
ステラ「ムッキーッ! こうなったら乱れ撃ちじゃ!」
ピューン! ヒューン! パーン! パパパーン!!
わぁわぁわぁ
ヒョヨン「なんかイタリアにこうゆう祭りあったな」
ユリ「ほな2チームに分かれて戦争するか?」
テヨン「チーム分けはどうする? 花いちもんめか?」
ハジン「もうええて、その話は」
女の子A「ええ加減にせんかっ! 貴様らのおつむは鶏以下かっ!!」








※ジョングにいさん…後のクッキーマンのこと。