第9話 ピーナッツ・ファイター

※今回も、湖南弁はこの世界の標準語に翻訳しています


    



於:豊南門

    


ジェシカ「そんで、テヨンの奴はどこにおるねん?」
ティパニ「子分がゆうには梧木台ゆう丘の上らしいわ。あっこな(指し)。韓屋村全体が見下ろせる高台で、ウチも前に行ったことある」
ジェシカ「ほなとりあえず村の中を観光しながら、そこを目指すか」
ティパニ「のんきやなぁ。ウチ、殺されかけたんやで」
ジェシカ「そやかて、ウチは韓屋村初めてなんやもん。いろいろ見学したいがな。
  それに、この矢かてよおみたらゴム製やないか。いくらテヨンでも命まで取る真似はせんよ」
ティパニ「(溜息)はぁ、しゃーない。ほな気を付けて行くで。あっちこっちにトラップしかけてありそうやからな」
ジェシカ「わかってるがな。そう簡単に引っかかるほど、ウチどん臭くないで…(カチッ) ………!(ヒーーーー!)」
ティパニ「早よ来いや。置いてくで」
ジェシカ「あ、あかん。地雷踏んだ」
ティパニ「(ガク)なにやっとるん。…あー、あー、ホンマやん。『セーラ服と機関銃』は本ブログ(2011年1月31日付・特別編参照)だけにしときや」
ジェシカ「なんとかしてえな」
ティパニ「わかっとるがな。1ミリも動いたらアカンで。多分BB弾がぎっしりつまっとるはずやからな」
ジェシカ「ひーん(ガタガタ)」
ティパニ「暴れるな。破裂したらウチもアザだらけゆうことわかってるか?」
ジェシカ「す、すんまへん」
ティパニ「この感圧スイッチをなんとか固定して、と(かちゃかちゃ)…よし、これでええやろ。そっと離れるんやで」
ジェシカ「(おそるおそる)…た、助かった〜(ヘナヘナ)」
ティパニ「そやから用心せえゆうたやんか」
ジェシカ「おおきに、ヒョン。今度からヒョンて呼んでもええか?」
ティパニ「ええ訳ないやろ(ゲシ)。『JSA』ごっこしとらんと、サッサと行くで」
ジェシカ「はーい」


於:殿洞聖堂

    


ジェシカ「ここは韓屋村やなかったんか?」
ティパニ「そうやけど」
ジェシカ「韓屋村になんで教会があるねん?」
ティパニ「そんなん知らんがな。あるんやから仕方ないやん。見学ついでに、ちょっとお祈りしてく?」 ← プロテスタント
ジェシカ「ウチは神様より食いモンの方がええなぁ」
ティパニ「ま、確かにそれにもひかれるなぁ。せっかく食の都に来たんやから、名物…(はっ)危ないっ!」
ジェシカ「(どん)わっ!」
チュイーン!
ジェシカ「ひゃー、なんか頭擦った!」
ティパニ「隠れて隠れて! あそこ見てみ、聖堂の尖塔からスナイパーが狙うとるで」
ジェシカ「(ゾー)ほんなら擦ったのはBB弾か?」
ティパニ「そうみたいやな。あっこから届くなんて、手下の奴、めっちゃガス圧上げてるで」
ジェシカ「クソー、ウチばっかり狙いやがって! 卑怯モン! ドアホー! 悔しかったら降りて来い、こらあ!」
チュイーン! チュイーン! チュイーン!
ジェシカ「あわわわわ!(隠れ)」
ティパニ「アホか、刺激するなよ。しかし、市街戦となると地理に疎いこっちには俄然不利やな」
ジェシカ「前来たことあるゆうたやないか」
ティパニ「みんな似たような作りやから、ぼんやりと曖昧にしか憶えてへんわ。とりあえず地図貰お」
ジェシカ「地図?」
ティパニ「この先の案内所で、観光マップ配ってるから」
ジェシカ「へえ、さすが観光地やな」
ティパニ「またスナイパーに狙われたらかなわん。這って行こう(しばばばば)」
ジェシカ「田村信のマンガかっ!」


     太祖路と慶基殿と観光案内所(中央の木の陰の小屋)



於:梧木台

     崖の上が梧木台


テヨン「それで、慶基殿で地図を手にした後は、ちゃんとこっちに向かっとるんやろうな?」
子分「いやぁ、それがすぐ聖心女子校の方に曲がって、トッポギやらジョンやら買い食いを始めまして」
テヨン「はぁ?」
子分「工芸体験館で紙漉き体験した後、今は伝統酒博物館でマッコリ飲んでます」
テヨン「(がくっ)全然方向違うやん。観光気分も大概にせえよ」
子分「途中途中のトラップもなんだかのらりくらりと上手いこと避けてますわ」
テヨン「そらぁ観光客の行動範囲は避けてトラップ仕掛けとる訳やから、それと同じ行動しとったら、引っかかる訳ないな」
子分「どうします? 手の者を差し向けましょうか?」
テヨン「う〜ん…いや、ええわ。伝統酒博物館からやったら、いずれ麒麟大路登ってここに来るやろ。配置はそのまま、動かんように伝えてや」
子分「へえ」
テヨン「それと南部市場に行って買うて来て欲しいモンがあるんや(ヒソヒソ)」
子分「おやすいご用で」
テヨン「見とれ、シカの奴。ウチを軽く見たらどうなるか、教えてやるで(ぐぇへへ)」
子分「うひゃー、悪い顔のおやびんもステキ。ラブ注入!」
テヨン「気色悪いんじゃ(ゲシ)」


於:太祖路
ジェシカ「うひゃ〜、飲んだ飲んだ(ヒック)」
ティパニ「伝統酒博物館は初めてやったな。まさかマッコリの試飲が出来るとは」
ジェシカ「ソウルと比べて物価も安いし、全州はええとこやなぁ」
ティパニ「それより、そろそろ梧木台に行かんと日が暮れてしまうで」
ジェシカ「そやなぁ。テヨンの奴、なかなかウチらが来えへんからいらいらしてるんちゃうか(笑)」
ティパニ「佐々木小次郎みたいな心境やろうな(笑)。えーと、ここ真っ直ぐ行くと麒麟大路か。で、右曲がって歩道橋登るとすぐ梧木台やな」
ジェシカ「げ。こっからずっと坂道になってるやん。飲んだ後に体力使うのいややなぁ」
ティパニ「ソウルかて坂だらけやろ。ここはソウル思うて、ちょっと辛抱せえや。降りて来てからまた飲めばええんやし」
ジェシカ「それもそうやな。ほな頑張って登るか。待っとれよ、キム・テヨン!」
ティパニ「(ぼそ)降りてくる頃にはもお博物館閉まっとるけどな」
ジェシカ「♪ドンガードンガラガッタ、ドンガードンガラガ…!(ぴたっ) …パニヤーぁ(ひーん)」
ティパニ「今度は何や?」
ジェシカ「なんか、路にワイアが張ってあってな、ウチ足でそれを引っ張って切ったみたいや」
ティパニ「切った? そらあかんやん。トラップが発動するで」
ジェシカ「えー? どんなトラップやろ?」
ティパニ「まだ何ともないから、遅発性なのは間違いないな。これがインディジョーンズだったら…」
ゴゴゴゴゴゴゴ…
ティパニ「でかい岩が落ちてきたりする」
ジェシカ「あんな奴が?(指し)」
ゴロゴロゴロゴロ
ティパニ「そうそう、ちょうどこんな感じ…て、マジで? ひゃー、こらあかん、逃げよ」
ジェシカ「はーい!(脱兎) なんか『ブランディッシュ』ゆうゲームを思い出すな」
ティパニ「もっとメジャーに『ドンキーコング』でええやろ(ぴょーんぴょーん)」
ジェシカ「それじゃ『関ソニョ』らしさに欠けるがな(ぴょーんぴょーん)」
ティパニ「どうでもええわ!」
ぴょーんぴょーんぴょーんぴょーん…


於:梧木台
テヨン「見失ったやて?」
子分「へえ。大岩が転がった後の太祖路には、日本から来たらしい観光客が数人倒れてましたけど、ティパニさんとスヨンさんの姿はなく…」
テヨン「麒麟大路からの報告は?」
子分「そっちにも向かった形跡はないそうで」
テヨン「むう。あいつら、ことごとくこっちの予想を裏切りやがるなぁ。パニはともかく、シカもそんなに天然やったっけ?」
子分「ま、どっちもどっちですね」
ズドドドドドッ
遠い声「ィィィィイイイヤヤヤ………」
テヨン「はっ!」
ティパニ「ィィイイヤヤーー!! ク、クモやぁ!!(ぴょーーーーん)」
テヨン「パ、パニ?」
子分「わっ、茂みからいきなり?」
ガサササ、ガサササッ
ジェシカ「待ってやぁ。クモぐらいでそんな”BODY”の椿鬼奴みたいな声で走り出さんでも…あ、あれ? テヨンがおる?」
ティパニ「いーやぁあああああ …ん、ホンマやな? いつの間にか梧木台に着いてるわ」
ジェシカ「(がくっ)ものすごい勢いで茂みの中登って行くから、なんかあてがあるのかと思うたやん」
ティパニ「それでちゃんと着いたんやから、結果オーライやろ」
テヨン「貴様ら、どっから湧いて出よるねん。おかげで途中の路に配した手の者が無駄になってもうたやないけ」
ジェシカ「へっへっへ、テヨン…大した歓迎やったやないか? おかげで3回ばかり死ぬところやったで」
テヨン「ふん。そん時あっさり死なへんかったことを、この後地獄に行って後悔せえ」
ジェシカ「やってみい。出来るモンならな!」
子分「うへえ、おやびんに言い返した。怖いモノ知らずやな」
ティパニ「言葉で負けるようならハナから全州くんだりまで来んわい」
テヨン「やる気みたいやな。おい、ヤオンイ。市場で買ってきた例の奴、よこしぃ」
子分「へえ(ワシ、そんな名前やったんか)」
テヨン「(がささ)この紙袋の中身を見ても、そんな口を利いてられるかな?(バーン!)」
ジェシカ「ううっ、そ、それは…!?」
ティパニ「ひ、卑怯な…」
テヨン「卑怯も女豹もあるか。やるからにはどんな手を使うてでも勝つ。それが湖南・伝説の女番長、キム・テヨンや!」
ジェシカ「ええやろ。ウチかて生半可な覚悟で来た訳やない。そんな物騒なモンを出された以上、貴様をぶちのめしてゆうことをきかすまでや」
子分「物騒て、アレ、ただのキュウリ違うんか?」
ティパニ「シカにとってはあれが世界で一番物騒な代物なんよ。テヨンも本気ゆうことや」
テヨン「てやーっ!」
ジェシカ「はーっ!(ひーっ、両手にキュウリて反則やんか! クッソーッ、レッスンで習うたこと全部思い出すんや。そやないと殺られるで)」
→ドカカカカカッ! ←ズババババババッ!! ドゴーン!!!
子分「す、すごい。攻防がまったく眼で追えへん。地が割れ、天が落ちる!」
ティパニ「ウチらのレッスンがどれほど厳しいか判るやろ? これくらいの動きは子供のソルリでもやりよるで」
子分「恐るべし、SMエンタ」
←びゅーん! びゅーん!→ 
ティパニ「身体が暖まって来たみたいやな。この辺からどっちもギアをあげて来るで」
子分「ま、まだ加速するんでっか? まったく捉えられまへんけど」
ティパニ「見たところ、テヨンは二天一流…野田派の太刀筋やな」
子分「そんなことまで習得するとは!」
ティパニ「曲の途中で誰かがソロで踊ることになったら、そいつの分までマイクを持ってやらなあかんやろ。マイク両手持ちの時の身の捌き方を学ぶためや」
テヨン「(せいっ、せいっ)二テング一流と呼んでや」
ティパニ「一方、シカはヘッドセット着用時に両手が空いている時の身の捌き方や。あれはベネ・ゲセリットの伝統的な体術やね」
ジェシカ「(サッ、サッ)レイディ・ジェシカ流のね」
子分「ダジャレとしては殺人的にひどいですね。で、どっちが優位なんすか?」
ティパニ「シカもよう踏ん張ってるけど、やっぱ喧嘩となるとテヨンの方が場慣れしとるなぁ。キュウリちゅう得物もプレッシャーを与えてるし」
テヨン「だぁーっ!」
ジェシカ「くっ…、あかん、じり貧や。恐れたらあかん。恐怖は心を殺す。恐怖は完全な忘却を持って来るちっこい死ぃやで(ぶつぶつ)」 ← この辺がベネ・ゲセリット流
テヨン「とぉーっ!」
ジェシカ「なんの!(波状攻撃か、さすがやな)」
ズルッ
ジェシカ「(あ、足が)しもた」
テヨン「とったぁー!」
シュポーン
子分「ああっ、キュウリがスヨンさんの口に放り込まれた!」
ジェシカ「お、おえええええええつっ!!!!!」
テヨン「ニヤリ」
ティパニ「シ、シカーッ!」
ジェシカ「げええ!」
テヨン「ふふふ、今日食うたもん全部まき散らして果てるがええ」
ジェシカ「く、くっそー。一瞬お花畑の向こうにご先祖様が見えたで。仕方ない…これだけは使うまいと思うとったが(ごそごそ)」
テヨン「わっ、そのまがまがしい袋は…!?(がーん)」
ティパニ「ピーナッツ…!」
ジェシカ「ウチが亭安のサービスエリアで名物のくるみ菓子だけ買うた思うたら大違いや。旅のお供バタピーもちゃんと買うておったんや」
テヨン「ひ、ひ、卑怯やど!」
ジェシカ「両手にキュウリ持って襲ってきたくせになにゆうとるんや。それ(ぴゅん)!」
テヨン「ひゃっ、危ないやんか!」
ジェシカ「何とでも言え(ぴゅん、ぴゅん、ぴゅん)」
テヨン「わっ、わっ、わーっ!(右往左往)」
子分「すごい、スヨンさんの指先からバタピーが次々とおやびん目掛けて」
ティパニ「あれは陸奥圓明流の雹やな。ワイアット・アープやシェーンほどの早撃ちさえかなわんで」
子分「そんな技を使えるスヨンさん、それを避けてるおやびん、まさに超人や。SMエンタて一体なんの会社なんでっか?」
ティパニ「ただアイドルと言う人種を育ててるだけや。そやけど、人々に夢を与えるゆうことは、一般人の想像以上に苛酷なんや。時にワシらの人間性も奪うほどに」
子分「スゲー、超人野球養成所みたいやな」
ジェシカ「貴様、これほどの身体能力を持っていながら、何故逃げ出したんや?」
テヨン「どんだけ身体が動こうと、ウチの短い手足じゃダンスがさまにならへんのや。梨乃先生かて、そんなんわかってるはずなのに、関節外せとかゆわれたら…」
ジェシカ「アホッ、才能のない奴を叱る教師がどこにおる。先生は、自分を合格させるために、プライベートの時間を削っても補習してたんやで」
ティパニ「シカのゆうとおりや。自分の小心を、体格のせいにするなや。
  ウチかてスヨンかて、アイドルに不似合いなほど顔でかいのに小さいふりして生きてるんやど。
  シカかてどうすれば右顔見せんで活動出来るか、めっちゃ悩んでるんやど」
ジェシカ「ウチのことはゆわんでええ!(ぴゅんぴゅん)」
テヨン「(はぁはぁ)さすがに鋭い弾道や。弾が尽きるまで避け続けるのは無理やな。こうなったら死ぬ覚悟で懐に飛び込む!
  (ザッ)勝負や、シカ!」
ジェシカ「へへへ。大詰めだなぁ、伯爵」
ガッキーン!
子分「今回いろんな作品が混ざりすぎて、脚注が大変ですね」
ティパニ「それはウチの仕事とちゃうからな」
ジェシカ「でやーっ(ドバーッ)!」
テヨン「うわっ、バタピーを袋ごと…」
ジェシカ「どうや、ピーナッツ爆散華! この無数の豆の弾幕、避けられまい!」
テヨン「なんのぉ(さささささっ)」
子分「ああ、おやびんの姿が幾つにも分かれた」
ティパニ「奴め、ついに人間の速度を超えたか」
テヨン「(はぁはぁ)どうや、全部避けたで。これでもお自分には手がないやろ」
ジェシカ「甘い!(ぴゅん)」
パクン
テヨン「ぐええっ! ひと粒手許に残しておくとは…」
ジェシカ「切り札は最後までとっておくもんや」
テヨン「くそ…ウチの負けや(ゲロゲロゲロゲローーーー!!)」
ばったり
子分「あ、おやびーん! しっかりー!」
ジェシカ「(はぁはぁ)無駄や。ウチはただキュウリが嫌いなだけやが、テヨンのピーナッツはアレルギー。自分の意志ではどおにもならん。
  今ごろ全身の細胞がのたうち回っているはずや」
ティパニ「自分、チャンスやで。テヨンの毒を吸い出してやったらええ」
子分「えっ? 口からでっか? ぶちゅーって? そんな、滅相もない…え、そうでっか? そうですね、苦しんでるおやびんを見てるのは忍びないですね。
  ほな…(そろそろ)ああ、憧れのおやびんとぶちゅーが出来るなんて…」
テヨン「エロエロエロエロエロー!!(ダバーッ!)」
子分「わー!」
ティパニ「あははは!」
ジェシカ「趣味ワル」
テヨン「(ヨロヨロ)ち、畜生、全身に発疹が出来たやないか。無茶しやがって
ジェシカ「そうでもせな、人の話、聞きゃせんやろ」
テヨン「話てなんや? ウチを抹殺しに来たんやろ? 今さらジタバタはせん、サッサと殺れや(大の字)」
ジェシカ「自分を抹殺する気なら放って置けばええだけや。自分から歌取ったら、この田舎で人知れずおばはんになるだけの人生やからな」
ティパニ「ウチら、あんたを迎えに来たんやで」
テヨン「連れ帰ってどうする。ウチはもお見栄えの悪いダンスするのイヤなんや!」
ジェシカ「自分の見栄えの悪さなんか、ウチら全員でカバーしたる!」
テヨン「おっ?」
ジェシカ「そやから自分も、その歌でウチらみんなを支えて欲しいんや。このとおりや!(ガバ)」
ティパニ「ええーっ! シカが土下座…?」
ジェシカ「ウチらがコーラスの稽古しとる時に、自分の声が入るとピシッと決まる。アンサンブルに一本筋が通る。
  ユンユルの音程がフラフラしとっても、自分の歌につられるように安定する。そんなこと、自分が練習生になるまでなかったことや」
テヨン「…」
ジェシカ「ウチかて歌には自信がある。そやけどハーモニーを生み出す力があるのは、悔しいけど自分だけや。
  ウチらもお、練習生としてはええ歳や。喧嘩したり、個人で悩んどる場合やない。全員で力を合わせてデビューを目指さにゃアカン時期に来とるんや。
  そんな時期に、自分に抜けられたらウチらみんな駄目になる。テヨン、自分を引き留めるためなら、ウチは土下座でもなんでもするで!」
テヨン「シカ…」
ティパニ「そおやで、テヨン。先生たちもみんな心配しとる。ソウルに帰ろうや」
テヨン「そ、そやかて、ウチ、今さらどんな顔して戻ったらええねん? 合わす顔がないわ」
ティパニ「大丈夫、みんなで自分が脱走したこと、事務所には隠してるんや。今から帰ったら、誰にも気付かれへん」
ジェシカ「もお自分だけ補習受けさせたりせん。ウチらも、みんなで補習するわ。これから稽古は全員で受けよう」
テヨン「う、うん…うん(泣)。ごめん、ごめんな(えーん)」
全員「(抱き)わーん!」
子分「ええ話やなぁ(うるうる)」


於:ソウル・SMエンターテインメント
♪思いなおしたように彼は
 まあ今度だけは許してやる などと言ったので
 そこで僕も
 今度だけは許してやると言ってやった(ジャン)
ドワン「よし、今日はここまで」
全員「どへー(ヘナヘナ)」
バタン
仲宗根「キム・テヨン! 自分はこれから補習や。5分以内にダンス室に集合!」
テヨン「はい! ほなみんな、ウチ先行ってるから(ダダダダダ)」
ジェシカ「なぁなぁ、これからダンキン・ドーナツ行かへん?」
スヨン「ええけど、自分から誘うなんて珍しいなぁ」
ジェシカ「ちょっと臨時収入があってな。妹の給食費払うてもまだちょっと余裕あるねん。ウチ、使える金がある時はパーッと使うタイプやから」
スヨン「臨時収入て、どないしたん?」
ユナ「ウチやウチ、今月の小遣い、ケツの毛ぇまで毟られたわ」
スヨン「?」
ユナ「シカねえがテヨンねえを連れて帰って来れへん方に賭けとったんや」
ティパニ「あー、それであん時キュウリにもびびらへんかったんか?」
ジェシカ「そらそうやろ。負けたって1ウォンも払えへんのやもん。腎臓売ってでも負けられへん戦いやったんやで。キュウリごときにびびってられるか」
ステラ「(にやにや)なんやら、土下座までしたらしいで」
ソルリ「わー、サイテー」
ジェシカ「掛け率5対1やったからな、つい夢中で(でへへ)」
ソヨン「それにしても、ユナの小遣いだけでよおスジョンの給食費払えたな」
ジェシカ「それがテヨンのおとんにも謝礼金貰たんですわ。『あのバカ娘を、よお翻意さしてくれた』ゆうて」
ティパニ「はぁ? それは知らんど。そんならウチにも半分よこせや」
ジェシカ「交渉したんはウチやど。自分はお金持ちなんやから別にええやん。今回は貧乏人に遠慮せえ」
ティパニ「なにゆうとる。同じ苦労したんや、当然の権利やろ。よこせっちゅうねん!(シャー)」
ジェシカ「誰が渡すか!(ガオー)」
ヒョヨン「お、喧嘩や喧嘩(ひゃっほーい)」
ユナ「どっちが勝つか、誰か賭けへんか?」
スヨン「ちょっと、こっちは腹減ってんねんけど。ダンキン・ドーナツ、行くの行かんの?」
どったんばったん


仲宗根「ちがーう!(バシッ!) もっと指の先まで意識せえ、このチビデブ! やる気あんのか」
テヨン「す、すんまへん(な、なんで誰も来ぃへんのや? 今度から稽古は全員一緒てゆうたやないか?)」
仲宗根「泣いてる暇あったら、足を動かせ!(バシッ)」
テヨン「へ、へえ(ひーん!)」





※テヨン脱走話もこれで一段落。当初考えていた内容と全然違っちゃいました(笑)。ランボー、どっか行っちゃったし(爆)。
 でも全州の勉強が出来てよかった。あとは実際に行くだけです。
 それとトンアジョシさんが連動企画でご自分のブログ(SNSDelight)に該当地の写真を掲載されてます。
 興味のある方は右のリンク集からどうぞ。
 トンアジョシ・トラベル・エージェンシーさん、いつもありがとうございます。


※全州韓屋村…地図や写真はいろんなところからお借りしています。特にお断りがなかったものを使わせてもらっていますが、
 差し障りがあるようなら削除しますので、ご一報ください。


 全州韓屋村は日本でも放送が始まったばかりのドラマ『成均館スキャンダル』(李朝時代の”花より男子”と言われ、元東方神起のユチョンが主演している)
 のロケ地になっているらしく、すでに日本からさまざまなツアーが組まれているようだ。
 ソウルから日帰りだと6000円弱、1泊だと16000円弱くらい。ただ、ロケに関係ないのか梧木台は紹介されてない。
 このツアーにオバハンに混じって行くのも手かも。ただし、ソドプラザに行く時間を捻出しなければならないので、日帰りプランはキツイと思う。
 ちゅうか、そろそろ業者もK-Pop女子アイドルツアー企画しろよ。おじさんが大挙して申し込むぞ。


※ピーナッツ・ファイター…オリジナルは2008年のタイ映画『チョコレート・ファイター』。
 プラッチャヤー・ピンゲーオ監督、ジージャー・ヤーニン、阿部寛主演。日本では2009年に公開されている。
 あどけない顔をしたジージャーがサヴァン症の天才格闘少女を演じているが、その純粋なファイターぶりが理屈抜きに観客を感動させる。
 アクション映画史に刻まれて当然の傑作。
    
    ちなみに日米の映画と違って、本編の方が予告の100倍凄い。


※『セーラ服と機関銃』…赤川次郎原作の角川映画(1981年)。相米慎二監督、薬師丸ひろ子主演。
 本ブログの2011年1月31日付特別編でも触れているが、機関銃(M3)を乱射した後の「カイカン」と言う台詞が、当時大流行した。
 この映画の後半、対立組織に誘拐された主人公の少女が地雷の上に立たされ、動くと爆発するぞ、と脅かされるシーンがある。
     
    当時、新宿のこのロケ地のすぐ近くに住んでいたので、映画を観た時はビックリした。


※『JSA』…2000年に韓国で公開され、社会現象を巻き起こした韓国映画。日本でも2001年に公開、ヒットした。
 パク・チャヌク監督、イ・ビョンホンソン・ガンホ主演。
 板門店を境に本来反目しあうべき南北の兵士の交流を描いた作品で、平和ボケした日本人に共感が得られたとは思いがたいが、ヒットしたのは前作の『シュリ』のおかげだろう。
 ただし、韓国人にとってはかなり衝撃的な内容だったようだ。
 映画の冒頭、主人公である国境警備の韓国兵が地雷原で不用意に地雷を踏んでしまい、何時間も身体が動かせない(重心すら移動出来ない)事態に陥ると言う描写がある。
    
    みんな若いなぁ(笑)


 このように、映画の世界では地雷は踏んでも即座に爆発せず、足を離したことによって起爆するのが常識となっている。
 が、どうやらこれは緊張感を演出するための方便であって(テロリストなどが使うデッドマンスイッチなどがヒントか?)、実際の感圧式地雷は踏んだ瞬間に起爆するようだ。
 地雷原を歩く時は、そこいらへん忘れないようにしましょう。


田村信…日本のギャグマンガ家。上手い下手で言えば下手だが、擬態語に才があり、高橋留美子がよく使う爆発音”ちゅどーん”も彼の発案らしい。
 マンガの中で特にオチを思いつかなかった場合、よく登場人物が「這って逃げるぞ!」と言い、シババババと言う擬音と共に逃げてお茶を濁していた。


※地図…観光案内所で地図が貰えるのは確かで、日本語の判る案内人もいる。が、タイトル下に挙げた日本語地図が貰える訳ではないと思う。


※「トッポギやらジョンやら」…全州と言えば全州ピビンパやもやしクッパなどが有名だが、それらを提供する店はだいぶん北に行くか後戻りするかしないといけないようなので、
 ここでは女子校の正門前にあるトッポギ屋や粉物屋で買い食いさせることにした。
 勿論テヨンが梧木台に築いた要塞が堅固で、パニシカが泊まるハメになり、そこで上記の名物や韓定食やマッコリ(酒を頼んだだけで山のように肴が出て来る)、
 さらには韓宿所を紹介することも考えたが、そこまで長くしてもオチがツクツクなのであっさりな方を選択した。


※”BODY”の椿鬼奴
    
    アスペクトはめちゃくちゃだが、他にまともな物がなかったので。


※「曲の途中で誰かがソロで踊ることになったら、そいつの分までマイクを持ってやらなあかんやろ」…
     『다시 만난 세계』
    1分43秒ごろマイクの受け渡しが行われている。


二天一流宮本武蔵が『五輪の書』に記した二刀を用いた兵法の流派。自身が興したが、実践的ではないとも記している。
 と言いながらも、自画像にあるとおり、武蔵が実際に二刀を用いて鍛錬を行っていたのは間違いないようだ。
    

 武蔵の没後、五系譜が伝えられたと言われているが、現在残っているのは野田系と山東系の二派のみである。
 どちらも型主体の教え方で、実践的な剣法とはしていない。
 勿論二テング一流などと言うふざけた流派はない。


※ベネ・ゲセリット…本ブログ第113話でも言及している『デューン砂の惑星』(フランク・ハーバート著)に登場する女性だけの秘密結社。
 もともと女子学生のための肉体と精神を訓練する学校だが、その目的は男性のベネ・ゲセリット(クイサッツ・ハデラッハ)を生み出すことにある。
 ベネ・ゲセリットの教母クラスになると、自身の肉体を細胞レベルまで意志の力でコントロール出来るだけでなく、体内に入った毒を無毒に化学変化させることが出来る。
 さまざまな肉体洞察、肉体制御、呼吸法、自己暗示、発声制御など、一見して他人に判らないような技術を突き詰めている。
 その能力を戦闘に振り分けた場合、最強と謳われる皇帝の私兵サルダウカーを凌駕する実力を持つ。
 レイディ・ジェシカはベネ・ゲセリットの修道女にして、主人公ポウルの母親。ポウルにベネ・ゲセリット流の秘術を教え込んだ。


※超人野球…
     ゆうきまさみ著『究極超人あ〜る』第4巻より(小学館
    勿論子分は『ストライク・ラブ』(本ブログ第21話脚注参照)のようなイメージで言っているのだろうが(笑)


※「大詰めだなぁ、伯爵」…『ルパン三世カリオストロの城』におけるルパン三世の台詞。


※「ウチはただキュウリが嫌いなだけ」…と思っていたら、2012年6月4日のエンタメニュースでジェシカはキュウリアレルギーであることが明らかになった。
 これはファンが差し入れのための弁当を発注している業者の証言で、”ジェシカはキュウリに、テヨンはナッツ類にアレルギーがあるので、材料にしない。
 またティファニーはうなぎマニアである。ダイエット的な低カロリーメニューは必要ない”。韓国のファンが少女時代全員の体質と好みを熟知していることがよくわかるインタビューである。


※♪思いなおしたように彼は まあ今度だけは許してやる などと言ったので…
    
    特に意味はないが、なんとなく今回の話に近い歌詞の様な気がしたので


ダンキン・ドーナツ…2010年にジェシカが歌った『Sweet Delight』は製菓企業SPCのイメージソングだが、
 韓国ではSPCグループがダンキン・ドーナツを展開している。