第6話 スーパーガールズ

ジェシカ「平成18年○月○日…ウチは死んだ」
ユナ「シャレならんわ」
………
ジェシカ「…腹減ったな」
ユナ「はぁぁぁ…誰か来ぃへんかなぁ」
………
がちゃ
ソヨン「あんにょんはせよー。わっ、なんやあんたら、なんで稽古場で寝てるん?」
ジェシカ「行き倒れとるんですわ」
ユナ「ねえさん、なんか食うモン持ってまへんか?」
ソヨン「行き倒れて…あんたら家から通うとるんやろ、自分ちでご飯食べれへんの?」
ユナ「家ではなんとか喰える。それ以外で飯が食えへんのや。朝家を出たら最後、夜中に帰るまでせんべい一枚口に入らへん」
ジェシカ「妹の給食費も払えんくらいやからな」
ユナ「今からハードな稽古やゆうのに、それを支えるエネルギーがゼロなんですわ」
ソヨン「そ、そうか(美人ふたり揃うて、ど貧乏なんやなぁ)。すまんなぁ、あいにく今はサクマ式ドロップスさえ持っとらんのや」
ユナ「ケッ、年上のくせに役立たずやなぁ」
ばたん、どたどたどた
ヒョヨン「♪ドンガードンガラガッタ、ドンガードンガラガッタ」
ティパニ「♪シュパゴル様のおっ通りだい! 床の貧乏人さん、こんにちはーっと」
ジェシカ「おっ、自分らどこ行くねん」
ヒョヨン「小腹が空いたし、雨も降っとることやし、ジョンでも食いに行こかと思て。自分らも来るか?」
ユナ「行きたいけど、ウチら文無しですねん」
テヨン「そんなんこっちかて一緒や。今月仕送り来えへんかったし。そやけどジョンは別に金出して買うモンでもないけーね」
ティパニ「そうそう。LAでもウチが行けば大概タダやったで」
ジェシカ「なるほど、例の手か(ポン)。ならウチも行くわ」
ユナ「ウチも、ウチも」
スヨン「ほな早よ着替えぇ。もたもたしとると置いて行くで」
ジェシカ「へっへっへ。それが腹減って起きられへんねん。誰か手ぇ引っ張ってーな」
ユリ「駄目だこりゃ」
ソヨン「ちょっと自分ら、今からレッスンやで」
テヨン「すぐ戻ってくるけえ。ソヨンねえ、代返頼むわ」
ソヨン「代返て、ウチひとりでみんなの分出来る訳ないやろ…おーい!」
♪ドンガードンガラガッタ、ドンガードンガラガッタ


ばあさん「げ、また自分らか?」
ヒョヨン「嫌な顔するなや。ウチら客やで」
ばあさん「なにが客や、今までまともに金払うたことないくせに」
ティパニ「いややわー、おばあはん、いつもキッチリ払うてるやないの。呆けるにはまだ早いでっせ」
ユナ「ウ、ウチ、ジャガイモね(ハァハァ)」
スヨン「ウチはトウモロコシ!」
ティパニ「ピンデトク!」
ばあさん「しょうがない、今日こそちゃんと払えよ(焼き焼き)」
ジェシカ「(ヒソヒソ)なんでそんなやっすいモン頼むねん。どうせタダなんやし贅沢しようや。ウチは海鮮パジョン、ダブルで」
ユリ「たこ焼き!」
テヨン「犬のジョン」
ばあさん「あるか!」


ジェシ「ピャー、美味い! 生き返るわぁ」
ユナ「やっぱユンジャ婆さんとこのジョンは最高やわぁ」
ヒョヨン「手の味が違う」
スヨン「お代わり、お代わり!」
ばあさん「ええ加減金払えや。お代わりはその後や」
ユナ「…ん? イ、イデデデデ!」
ヒョヨン「ど、どおしたー、ユナー、ユナー!」
ソヒョン「ぴっぴっぴ(ケチャップ発射)」
ユナ「ジョ、ジョンの中に、こんなものが…」
テヨン「こ、これは釣り針?」
ジェシカ「なんやてえええ!?」
スヨン「おうおうおう、ばあさん、ジョンの中にこんなでかい釣り針入っとったやないけ。おかげでツレの口ん中がすっかり血だらけや。
  こんなヒラメ顔でもアイドルの卵やねんど。この先デビューでけへんよおなったらどないしてくれるねん」
ばあさん「毎回毎回下手な芝居しおって。どおやったらカムジャジョンの中にカジキ釣りの針が入るゆうねん。もっと説得力のある嘘つけや」
ユリ「いたいけな少女が、この店の衛生管理の不手際で苦しんどるのに、嘘てなんやねん。
  せめてお代タダにするくらいの誠意見せえや。終いにゃ屋台ぶっ壊すど」
ばあさん「ふん、今日は泣き寝入りせえへんぞ。お客人、頼んますわ」
用心棒「へい!(ズラー)」
ティパニ「わ、ばあさん、用心棒雇いよったわ」
ユリ「結構大勢やなぁ」
ソヒョン「その報酬分おごってくれたらええのに」
用心棒「おめえさん方にはなんの恨みもござんせんが、これも一宿一飯の恩義。大人しく殺られていただきやす」
テヨン「へ、腹ごなしにちょうどええ。5歳の時に全州中の幼稚園を全部シメたこのキム・テヨン、久しぶりに本気を出すけーねー」
用心棒「かかれー!」
どったんばったん!


キム・シギュ「なんや、あっちの角はえらい賑やかやな」
マ・ソクチョル「ああ、またスーパーガールズが暴れとるんですわ」
シギュ「スーパーガールズ?」
ソクチョル「SMエンタの女子練習生たちでっけど、これがとんだ不良娘で。
  奴らのせいでこの上品な狎鴎亭の街も風紀が悪うなったゆう評判ですねん」
シギュ「そんなヤカラ、なんで事務所は放っとくねん?」
ソクチョル「外で暴れさせんと事務所が破壊されるそうで。いっつもひと悶着あった後は、事務所の人間が菓子折り持って謝ってまわっとりますわ」
シギュ「へえ。そんだけ暴れてもクビにせんちゅうのは、逆に大事な卵やってことや。おもろそうやな、ちょっと見学に行こ」
ソクチョル「あんまり近づきすぎんように気ぃつけなはれ」
シギュ「猛獣かよ」


どっかーん!
用心棒「む、無念…(バタ)」
ソヒョン「ほーれ、ホスゲンやで(シューシュー)」
スヨン「街中でそんなもん撒くなよ」
ジェシカ「もお向こうは抵抗力なくしとるし」
テヨン「なんや口ほどでもない(ぱんぱん)」
ばあさん「くっそー、今週も負けた」
スヨン「へっへっへ、並みのヤカラがウチらスーパーガールズに勝てる訳ないやろ。次回はテコンVでも用意しとけや」
ばあさん「自分なんもしとらんやないけ」
スヨン「ウチはクチ担当」
ユリ「威張るようなことか!」


ソクチョル「すげー、女子高生がヤクザを殲滅…」
シギュ「…! これはイケル」
ソクチョル「なにがでっか?」
シギュ「ワシが今ミニドラマ企画しとるの知っとるやろ?」
ソクチョル「へえ、成金のラブ・コメディですやろ」
シギュ「大体煮詰まって来とったんやが、なんかひと味足りんと思とったんや。ここに欠けとったピースがあったで。
  プリンス然とした四男坊は、このヤカラのような女子高生にまとわりつかれることにしよう」
ソクチョル「ええっ、こいつら全員出す気でっか?」
シギュ「あかんか?」
ソクチョル「あかんでしょう。戦争ドラマになりまっせ」
シギュ「ほな、とりあえず誰かひとりかふたりで」
ソクチョル「へえ(しぶしぶ)」
シギュ「(でもいずれ全員出演させちゃるもんね)」


ユリ「(ゾク)な、なんや?」
ヒョヨン「どないした?」
ユリ「誰かがウチを見とる気がした」
ヒョヨン「はぁ?」
ユリ「スカウトか? ウチの美貌を見初めてドラマにでも出ませんか? なんて」
ヒョヨン「なんてことある訳ないやろ。ほれ、食うだけ食ったらサッサと帰るで」
ユリ「はぁ、ウチもジンリみたいにドラマ出たいなぁ」
スヨン「なあに、ウチら真面目にレッスン受けとるもん。いずれ出れるわ」
ユリ「ホンマ?」
スヨン「そんな予感がする。みんなそろってドラマ出演…それもお嬢様役で。うん、絶対や」
全員「わぁ、そら楽しみやなぁ」







スーパーガールズ…2005〜2007年頃、高校生ぐらいの歳の近い少女練習生はスーパーガールズというグループを仮に組まされていた(タイトル画参照)。
 この単位で同じ科目を練習し、事務所内発表会などで成果を披露していたようだ。
 その時には衣装も合わせ、メイクもし、記念写真も撮るなど、練習生が本気を出すように事務所側も演出している。
 スーパーガールズの人数は11〜14人と言われているが、これは練習生の都合でその時々違った可能性もある。
 この中で最終的に絞り込まれた9人がSMエンタ初の少女グループ『少女時代』として2007年8月にデビューした。
 想像だが、同様の教育法が男子練習生にもとられており、それがスーパージュニア(SJ)になったのではないだろうか。
 そのためデビュー後もSJの人数は流動的な様相を見せ、事務所的には必要とあればこれを分割するつもりだったのではないか?
 だが、ファンが早々にSJの13人という構成を受け入れ、分割を許さなくなった。SJファンと事務所の間にはその形態を巡っていろいろともめ事があった。
 少女時代はその経験を活かし、最初からひとつのグループとして企画されたように感じるが、これも盤石ではなく、若干いろんな方向に可能性を持たせていた感はある。
 結局少女時代が大成功を収めたためその他の可能性を切り捨てることが出来たのだが、
 それはわずか数年前のスーパーガールズ時代には虫がいいとしかいいようのない未来像だったはずだ。


※♪ドンガードンガラガッタ、ドンガードンガラガッタ
     ハリスの旋風
    さすがに古すぎる。40代の人ですら判らないのでは(笑)
    それはさておき、このアニメーターは時代を考えるとめちゃくちゃ上手いなぁ。


※ジョン…一般には小麦粉をこねて具を入れて焼いたもの。いわゆるチジミ。
 しかし、知り合いの韓国人のおばちゃんは鶏卵をつけて焼いたものだと言い、そうするとピカタっぽい食い物となる。
 別の知り合いによるとどっちもジョンだという。
 よくわからないがお好み焼きだって関西風、広島風といろいろあるからなぁ。
 韓国では雨が降るとジョンでも焼いて食べようという話になるらしい。
 
    
※キム・シギュ/マ・ソクチョル…KBSのドラマ『止められない結婚』のプロデューサーと主席脚本家。
 『止められない結婚』はデビュー直後のスヨンとユリが出演していたことで有名。
 2008年2月には少女時代全員が出演を果たしている(#64 スヨン、ユリ以外の7人は不良少女の役)。
 ただ、このドラマは2007年5月公開の映画を原作としているため、ここでのやりとりは時期だけでなくその成立まで完全にウソである。