第10話 夏だ!海だ!合宿だ!…の巻

スマン「自分らをデビューさせることにした」
全員「…は?」
スマン「そやからデビューや。チームを組んでプロ歌手としてステージに立つんや。曲は今ヨンジョが書いとる」
ソヨン「そ、そ、それはウチらがデビュー…チームを組んでプロ歌手としてステージに立つゆうことでっか? KENZIEねえさんの曲で?」
スマン「完全に今そう言いましたけど」
全員「や、やったー!(抱き)。デビューや! うえーーん」
ジェシカ「うーむ、あまりに練習期間が長すぎて、ちっともピンとけえへんな」
スヨン「ウチも」
テヨン「ふっふっふ。今後韓国歌謡界に永遠に刻まれるテヨン史の第一歩ゆうことやけ」
スマン「ただデビューの時期はまだ先や。その間にどのメンボでどうゆう編成にするか決めるわ」
ソヨン「スーパーガールズ全員てことはないんでっか? 男の子チームみたいに」
スマン「それはまだわからんけど、さすがに大所帯過ぎるやろ」
ユリ「先輩らだいたい3〜5人編成やもんな」
ジェシカ「バラバラかぁ。先行チームが転けたら、その後のメンボのデビューが危なくなるゆうことやな」
ティパニ「なんとしても最初のチームに潜り込まなくては」
スマン「とにかく今後はデビューを前提に、よりいっそう厳しく稽古プログラムを組むさかい。
  まぁ宇宙大学への最終試験思うて精進するように」
ユナ「ちゅうことは合格メンボは全部で11人ゆうことか。2〜3人はデビュー出来へんな」
ソヒョン「石頭は大学の職員やったから合格は実質10人やで」
テヨン「また訳のわからん話をしおって…」
全員「(い、いやや。ここまで来て落ちたくはないで)」
スマン「(ほっほっほ、さすがに目の色が変わりよったわ。青春やなぁ)」


ティパニ「(ばっ)提案があります!」
スヨン「はい、パニさん」
ティパニ「学校も夏休みやし、メンボの相互理解と結束を深め、集中的なレッスンでさらなるスキルアップを目指すために、スーパーガールズ全員で合宿などを行ってはいかがでしょう」
ステラ「ええ? これからはお互いがライバルですで」
ティパニ「みんながライバルなのは今までかて同じや。逆に今後チームメイトになる可能性も高い。
  編成が決まらんうちから角突き合わせとってもええことないで」
ハジン「確かに」
ソヨン「うん、気分転換にもなってええんちゃう?」
ジェシカ「無理です。ウチは妹の給食費を稼ぐために昼はドカチン、夜はキャバ嬢のバイトがあります」
ティパニ「スジョンの給食費、どんだけ高いねん」
ステラ「ちゅうか、バイトしとらんでレッスンせえや」
ヒョヨン「ウチもシカと同じです」
ステラ「自分のキャバ嬢は嘘やな」
ソヒョン「ウチも今育てとる大麻ベラドンナの世話があるんで、長期間家を留守に出来まへん」
テヨン「捨てろ、そんな物騒なモンは」
ユナ「そもそも合宿に参加する銭がありまへん」
ユリ「銭なんかいらんがな。スヨンちの別荘借りればええんや」
ステラ「えー? 別荘なんかあるん?」
スヨン「それはまぁおじいが大川に別荘持っとるけど、ウチは海合宿には反対や」
テヨン「なんで?」
スヨン「なんでて…まぁ気分や。山合宿ならええけど」
ティパニ「却下します。読者サービスの都合上、アイドルの合宿は常に海ゆう不文律があります」
スヨン「読者サービス?」
ソヒョン「おそらく水着シーンのことや」
ステラ「確かに山は色気に欠けるな」
ティパニ「じゃぁ、決定ゆうことで」
スヨン「ウチのおじいはんの家やで。勝手に決めるなよ」
ジェシカ「それ以前に、ウチの意見は無視かい?」
ユナ「仕方ない。合宿から戻ってから一緒にSM嬢のバイトしよ」
ジェシカ「ひーん」
スヨン「ひーん」


※大川(テチョン)海水浴場
 忠清南道に位置し、美しい山と海に恵まれた風光明媚な観光都市・保寧(ポリョン)市にある。
 全長3.5キロに渡って美しい白浜が続く西海岸最大級の海水浴場。
 日本における大洗、由比ヶ浜に相当する。
 夏の終わりには外国人観光客も多く参加する保寧マッド・フェスティバルが行われる。


ピッピッピッ、ポーン!
テヨン「ん?」
ソヒョン「6時です!」
どたどたどた!
スヨン「はぁ、間に合うた。セーフやな」
ソヒョン「アウトや、4秒遅刻。はい、罰金1000ウォンね」
スヨン「とほほ。宿まで提供して罰金とられるとは。大体なんでこんな朝早くに集合なんや。気合い入れ過ぎやで」
ソヨン「しゃあないやんか。この時期は臨時バスかてすぐ満員になる。ウチらが全員揃ってバスに乗るには始発直後のこの時間を狙わんと」
ティパニ「ほな、次のバス来たら乗るで」
ユリ「おお、後ろの席占領して盛り上がろうぜ」
ソヨン「あんまり騒いでバス降ろされんように気ぃつけや」
ステラ「大丈夫やて、子どもやないんやし」
ソヒョン「こらー、パニユナ、乗り場で鬼ごっことかすんな!」
ハジン「子どもやな」
ソヨン「(みんな浮かれ過ぎや。大丈夫かなぁ)」


ぶうー!
スヨン「うひゃー、結構満員やねんな」
ソヨン「そやから早朝集合ゆうたんや。昼近くになってみい、インドの列車みたいになるで」
ユリ「嘘つけ」
ユナ「とにかく全員乗れて良かったわ」
スヨン「ほな、早速お弁当食べよっと(ごそごそ)」
ステラ「もおかよ!」
スヨン「そやかて、早すぎてまだ朝ご飯食べてないもん。朝用と昼用、2食分お弁当作って来たんや」
ジェシカ「そんな暇あるなら朝飯食って来いや」
ユナ「かくゆうウチも、朝飯まだやねん(ごそごそ)。一緒に弁当食べよ」
テヨン/ティパニ「ほなウチらも」
ソヨン「あかん、バス中食いモンの匂いだらけになってもうた。みんなジロジロ見とるがな」
ハジン「なぁなぁ、バナナはおやつ? それとも弁当?」
ソヒョン「おやつ袋に入れとったらおやつやけど、弁当箱に入れたら弁当や」
ハジン「おお、長年の疑問を吹き飛ばす簡潔なお答え。目から鱗や(もぐもぐ)」
スヨン「青いバナナは弁当やけど、黄色いバナナはおやつて聞いたけど?(もぐもぐ)」
ティパニ「東南アジア的な発想やな。さすがタイ人」
スヨン「誰がタイ人や!」
ユナ「それにしてもこのバナナ、まだちょっと青くね? ウチ腐りかかったような真っ黒な奴が好きやわ」
ティパニ「男もな、げっへっへ」
ヒョヨン「(げし)やめんか。ユナはまだガキなんやで」
ティパニ「きゅうう」
ソヒョン「(ごそごそ)ウチがバナナ美味しくしてあげるわ(シュー)」
ユナ「わ、なんやそのスプレー?」
ソヒョン「果実の熟成に使うエチレンガスや。このスプレーは特にバナナ専用で『バナナチレン』ゆうんやで」
ユナ「なんでそんなモノを合宿に持って来るんや?」
ソヒョン「備えあれば憂いなしゆうやんか。この先何処で熟しとらんバナナに出会うか判らんからな」
ステラ「そんな万に一つの心配せんでええわ!」
テヨン「♪可愛い魚雷〜と一緒に積んだ〜 青いバナナァも黄色く熟ぅれぇた〜(るんるん)」
ジェシカ「日本の軍歌とか歌ってるんじゃねぇ!」(ローリングソバット!)
テヨン「いててて」
ソヨン「こらー! 車内でソバットすんじゃねえ!」
キキーッ
運転手「後ろのお客さーん、他のお客さんに迷惑だから静かにしてよ!」
全員「す、すんまへん」


ユナ「ごっそさーん!(がさがさ)」
ユリ「お、自分花火持って来たんか(喜)。バッグの中に仰山積め込んどるの、見えたで」
ユナ「そらまぁ海合宿ゆうたら、水着の見せ合い、花火、キャンプファイヤー、肝試しがセットやからな。なけなしの小遣いで買うて来たわ」
ステラ「キャンプファイヤーゆうたら薪とかいるんじゃね?」
スヨン「キャンプ場で売ってるやろ」
ソヒョン「ウチ、薪と着火剤は持ってきたわ」
全員「お前はドラえもんか!」
ユナ「なぁなぁ、ほたらチャッカマンも持ってきた? ウチ、花火は用意したけどチャッカマン忘れてもうて」
ソヒョン「もちろん持ってるで。ほら」
ユナ「さすがや。(かちかち)うん、ちゃんと点くな」
ぼひゅっ!
ユナ「わひゃーっ!」
ソヨン「どないした?」
ソヒョン「わぁ、バナナのエチレンガスに引火した!」
ソヨン「どあほー!!」
ソヒョン「ああ、着火剤にも飛び火した!」
ユリ「わー、花火がっ!」
ユナ「なにー?」
バシュバシュバシュ! ← ドラゴン
ヒューン! ヒューン! ← ロケット花火
シュルシュルシュル! ← ねずみ花火
ドッカーン! パパパパパン! ← 爆竹その他
全員「うぎゃー!」
キキキーッ!
運転手「全員出て行けー、貴様ら!」


とぼとぼ、とぼとぼ
スヨン「腹減ったなぁ」
ティパニ「おじいの別荘まであとどれくらい?」
スヨン「まだたっぷり20キロはあるなぁ」
ユナ「ひえーっ」
ジェシカ「なにが”ひえー”じゃ。自分がバスの中で火をたくからこうゆう目に遭うんやで」
ユナ「そもそもチュヒョンがバナナチレンとか着火剤とか…」
ソヒョン「ウチ、悪くないもん」
ソヨン「やかましい! 今喧嘩したってどうにもならんやろ。とにかく日のあるうちに別荘まで辿り着くことや」
ジェシカ「とほほ。そやから合宿なんてイヤやったんや」
ソヨン「ここまで来てそんなことゆうなや。…こらーっ、テヨン、飼い犬かもしれんからむやみに道ばたの犬を捕獲するな!」
テヨン「そやけどスヨンが腹減ったゆうけえ」
スヨン「犬は食わんわ!」
ソヨン「あーあ。目的地に行き着かんうちからこんなことになるとは…。無事に合宿出来るんやろか?」